自然エネルギー&市民電力 ドイツ・デンマーク視察(ドイツ編その1)

2013年2月26日 00時01分 | カテゴリー: エネルギー, まちづくり, 市民自治

2月3日から10日にかけ、生活クラブ生協首都圏4単協主催のスタディーツアーに参加しました。

伝統的なベルリンの街並み

生活クラブ生協では、2012年5月、秋田県にかほ市に風車を建設し、風車で発電した分の電力と環境価値をPPS(特定規模電気事業者)から電力とセットして「グリーン電力」というかたちで買い、首都圏にある生活クラブ4単協の41事業所で使っている電気(年間670万キロワットを自然エネルギーで賄っていくという、共同事業方式による新たなエネルギーシフトに挑戦しています。

これまで生活クラブ生協は、生産者と共に、共同購入を通じて国内自給率の向上や遺伝子組み換え食品への反対運動、都市近郊の酪農や農業を進める運動など、自分たちの手で食を自主管理すること=「食」の自治をすすめてきました。

エネルギーの問題も食と同じ、自治の問題です。市民ひとり一人が、知識をもって自ら使うエネルギーを判断し、自ら選択することが重要です。私たちひとりひとりの暮らし方が、未来を変える力を持つこと、そのことを市民の側からすすめていくことです。 

今回のツアーには、環境エネルギー政策研究所の山下主任研究員をはじめ、エネルギーに詳しい研究者の方々が通訳を兼ねて同行して下さるという、贅沢な内容でした。 

まず、ドイツでは山下さんの師事するベルリン自由大学のミランダ・シュラーズ教授にお話を伺いました。

ドイツにおける再生可能エネルギー政策への流れ

ドイツ国内では1970年代から原発反対運動が起きており、酸性雨問題などもあり、国民の環境への関心が高い国といえる。また、チェルノブイリから700Kmのため、原発事故後は牛乳が販売されないなど、生活への直接的影響を国民が実感した。事故後、農業者を中心に核燃料サイクルや原子力廃棄物への反対運動が起き、1991年からは固定価格買い取り制度が導入された。

ただ、京都議定書によるCO2削減目標を達成するためには、原発がないと無理という世論もあり、この20年の間に、原発容認と反対の間で政権が揺れ動いた。2010年10月には、2020年までにCO2 -40%、2050年までには-80%の実現を目標とし、そのための段階的、分野別(電力、生産、運輸)の具体的目標を設定。その前提として原発の稼働を8~14年の延長を決定した。

しかし、2011年3月フクシマの事故を受け、物理学者でもあるメルケル首相により「安全なエネルギー供給 に関する倫理委員会」が招集され、ミランダ教授は委員として参加。倫理的には原発は即時停止であると誰もが思うが、現実的に原発の稼働停止をいつにするかを決めるため議論し、10時間の公開討論会を経て、2週間後にはレポートを提出。「ドイツの将来のエネルギー転換のための共同プロジェクト」も立ち上げられた。委員会では、原発自体の安全性、廃棄物の問題を中心に議論し、事故は不可避ではないが、他のエネルギーより危険であり、より安全なエネルギーがあること、ただし、温暖化への対応もすべきであることから化石燃料を使うことは避けなければならないこと、次世代へ廃棄物を残すという問題について十分な議論がされた。その結果、将来の新しい産業になるということからも、再生可能エネルギー普及政策とエネルギー効率性政策を同時に進めること、原発は古いものから撤退し、2022年までに全廃することを決めた。

ドイツは、民主主義の深い国

ドイツ人は上からの押しつけに従わないという、気質がある。国内にはたくさんのNGOがあり、地域のネットワークを作り、政治的な対応を行っている。風力はサイズの大きい(80m)ものを市民が協同組合をつくりネットワーク化し、効率性を高めている。20年前から、野鳥などへの影響、風、景観の調査が行われ、風力発電に適する地域が研究されてきた。そして地域を決定する際には、様々な団体を招いて議論をし、進めてきた。また、学者も1970年代から市民の意見を取り入れるようになっている。

各州でも独自のエネルギー政策

ヨーロッパ27か国での再生可能エネルギー比率は、2012年で12.5%となっており、ポルトガル、デンマークは輸出国となっている。EUができたことにより、送電網が自由化され、国内4地域で市民が電力会社を作っている。16州からなる国内では州単位でエネルギー政策をもち、南部の州は太陽光、バイオマスなどを組み合わせて、供給の安定性を図り、北部から電力を購入しなくて済むことを目指している。そのため高圧の送電網は不要になっている。

雇用の創出

ドイツでは、再生可能エネルギービジネスに38万人の雇用が生まれるとみている。そして、国内の面積比25%の地域で、100%再生可能エネルギーが達成できると試算されている。これは、高齢化対策、低賃金対策にもなり、資源の効率性、輸入コストの削減にもつながる。

今後の課題

効率性の中では、エネルギーの貯蔵も検討課題であり、メタンガス、揚水、圧縮空気、水素、家庭にある自動車、冷蔵庫、洗濯機なども対象となっている。 

最近では、太陽光5%、風力11%原発8炉分、750万キロワット(100万世帯分)の供給ができているが、これに伴い電力価格は2005年と比較するとキロワット当たり5倍以上2011年で5.4セントとなっており、これも再生可能エネルギーへの反対派の理由となっている。

市民が消費者の立場では「電気は選んで買うもの」となっていること、一方で供給者の立場にもなっていること、議論を重ね、自給自足=市民自治を目指していることなど、この先の視察に先立ってドイツ国内の現状を理解するための貴重な講義となりました。

ベルリン自由大学でミランダ教授の講義