自然エネルギー&市民電力 ドイツ・デンマーク視察(デンマーク編その2)

2013年12月10日 01時08分 | カテゴリー: エネルギー, まちづくり, 市民自治, 活動報告, 環境, 視察

 

サムソ島沖の洋上風車

 

コペンハーゲン市庁舎からほど近くにあるデンマークエネルギー環境事務所を訪ね、風車立ち上げ時のアドバイザーであるハンス氏から、風車協同組合について伺った。

1.コペンハーゲンの風車協同組合

・デンマークでは、風力発電は元が取れるということが一般的になっているので、銀行も風車株を購入する資金(市民風車に出資するための資金)を容易に貸してくれる。そのため、手持ちに資金が少ない学生やお年寄りでも風車株を購入し、風車のオーナーとなることができる。

・風車株を購入して出資する。何株持っていても、ひとり1票の議決権。

・組合員が風車株を購入(出資)する時に借金をするのは構わないが、風車協同組合としてお金を借人することはしない。

・出資一口はおよそ1,000kWh/年の電力代。 

風車協同組合の組織運営について

・5~7人の理事を選挙で選出(2年任期)。理事は無償。

・運営管理は基本的に理事がボランティアで行っている。組合員数2000人以上の場合は、管理を外注することが多い。事業規模により払える金額に見合った運営をしている。

・故障やトラブル対応を迅速に行うために、風車の点検メンテナンスをする人を必ず1人雇う。

・HPで情報を公開し、また、質問のある人にはeメール応えるなど丁寧な情報開示を行う。

・年1回、総会を開催。その他にも、市民風車に興味のある人に来てもらうオープンハウスなどを開催している。 

2.ミドルグロン風力発電協同組合

・1995年、コペンハーゲンの海岸から3.5Kmの沖合に2000KWの風車を27基3列に並べて立てる計画が電力会社から提案されたが、漁民や市民たちの反対運動が起きた。市民や環境団体から洋上風力発電建設についての情報公開や住民参加を求める声が上がり、ミドルグロン風力発電協同組合が生まれた。1997年から3年間、市民のための公聴会、さらには政治家も加わった協議会が行われた。市民との話し合いを重ねた結果、景観などに配慮して当初計画を変更し、20基1列に改められた。そして、20基のうち、10基を電力会社、残り10基を8,542人もの市民出資で協同組合が所有する。

・実際の発電量の公開など市民への徹底した情報開示や、反対する人達にはすでに稼働している風力発電所を見学し実感してもらい、騒音の専門家を呼んで疑問に答えることや、子ども向けのイベントなども行い、市民の理解を得るための活動を丁寧に行った。その結果、建設現場には年間18,000人もの市民が見学に訪れた。風車を知れば知るほど理解は深まり、反対の声はきかれなくなったという。

・ハンスさんは、この経験から、風車を遠くに追いやるのではなく、生活の傍で電気を作り続けてくれるものとして認識することが大事であると感じている。 

3.デンマークにおける市民風車のはじまり

・古くからチーズなど酪農製品の共同生産が盛んだったデンマークでは、協同組合というのは伝統的な身近な組織である。

・市民風車は、学校の先生や牧師など、その地域をよくしたいと考えるアクティブな人たちによる発案で集まり、興味のある人たちが協同組合を作り、風車建設をすすめたのが始まりだ。

集会を開き、「風況がいいのは西の土地だが、夕日を見ながら食事の邪魔になる。」「では、北の土地に建設しようか」などという、ざっくばらんに緩やかなコンセンサスを地域の人々でつくり、すすめられた。

・1996年頃から、豊作で得た利益の投資先として、大農園の農民が自分の土地へ風車を建設しはじめる。

・1997年、再生可能エネルギー法により優先買い取り制度が導入され、さらに、2000年には発送電分離が実施される。 

4.協同組合による民主的なオーナーシップを進める

・デンマークの風力発電は、農民、市民参加によって普及がすすんできた。しかし、風車が大型化するにしたがって多額な投資資金が必要となり、市民参加のハードルが高くなっていた。

 また、2001年、保守党政権(自由党)に交代し、風力発電に対する補助金がなくなる。

・2008年、このままでは、市民の風車への関心がなくなるという危機感から、お金持ちだけでなく市民が自然エネルギーに係れる仕組みをと、25m以上の風車を建てるときには、20%は近隣地域(4.5km以内)のオーナーシップを入れなければならない法律を制定した。

また、環境負荷などの事前調査に係る資金は国から無利子で借りられる、1Mwあたり11,800ユーロの補助金が国から自治体に交付される。

これは、単に出資してお金を儲けるということではなく、市民がオーナーシップを持ち風力発電事業に参加することで、再生可能エネルギーへの関心が高まり、エネルギーや環境に対する意識の高まりにつなげようというというものだ。

オーナーシップを持つことは、ただ単に風車を建てるのではなく、地域のひとりひとりが環境に優しい持続可能なエネルギーの開発への参加のツールとなっている。 

5.今後

デンマークは、2020年には風力発電で電力消費の50%、2030年には全体の2/3に引き上げようとしている。今後、洋上に1,000MW、陸上に6つの小さな風車パークで500MW、古い風車パークの建て替えで500MWを増やす計画だという。

 さらに、2050年までに化石燃料をゼロにするという目標を掲げており、その実現に向けて今年で2か所の石炭火力発電所を閉鎖した。

・協同組合による市民風車は、地域の人が早い時期からかかわることができ、利益を安定的に還元できるというメリットと、相応の金額を負担しなければならないデメリットがある。風車協同組合の成功の鍵は、丁寧な情報開示と説明、そして何よりも人々と情熱をシェアすることだと、熱く楽しそうに語ってくれた。 

補足:洋上風車はコストの半分は基礎代で、デンマークは遠浅のため比較的造りやすいがメンテナンスも陸の風車に比べ、コスト高。

漁獲量など、漁業への影響調査も実施し、運転中の現在も調査は定期的に継続して実施している。

ただし、常に風が吹いているため、発電量は陸の風車の25%に比べ、40%~60%と高い。