子どもの地域ケア会議~子どもの権利の視点で~

先進国の中でも高い状態が続いてきた日本における子どもの貧困率だが、昨年やっと「子どもの貧困対策推進法」が制定された。そうした中、すでに取り組みを進めてきた大阪市西成区に注目が集まっている。

西成区は、市内でも高齢化率、生活保護率が高く、結核の発生率は全国一という地域だ。当市も高齢化率、生活保護率については多摩地域一となっており、当然に子どもの貧困率も高いという点においては積極的な対応が必要とされている。

「子どもの権利」の視点にたった地域の支え合い

西成区には戦後、引き揚げ者が多く住み、厳しい生活状況にある子どもたちがいた。食事が十分でなく、入浴もできない子どもたちに、教諭がその地域の学校で世話をしてきたという時期もあったそうだ。日本が子どもの権利条約を批准した翌年の1995年、支援の中心的な役割を果たしてきた「わかくさ保育園」の小椋園長が子どもたちの生活を少しでも条約の理念に近づけたいと「あいりん子ども連絡会」を立ち上げた。子どものための情報交換や相互支援のためのネットワークづくりを進め、子どもにかかわる地域の人々が知識や技能、資源、特性などを活用し合うことを目的としている。

西成区では、すでにあるこの連絡会を児童虐待防止法の「西成区要保護児童対策地域協議会」と位置づけた。この協議会には、行政の子ども担当課の職員をはじめ、医療ソーシャルワーカー、保健師、相談員、児童福祉士、小中学校の校長や教頭、教諭、保育士、家庭支援員、児童委員など、子どもに関係するあらゆるメンバーがかかわっている。

まず、孤立した人を発見することが大切だと位置づけている。そして家庭訪問によりどのような支援が必要かをつかむ。地域別ケア会議やさらに困難なケースには個別ケース会議で家庭への支援を組み立てる。一方で、自助グループや立ち寄れる場や語れる場を用意する。さらに支え手には、障がいや依存症、子育ての困難さを理解するための学習会・研修を実施する。

地域で必要とされる取り組みをしてきた「子どもの里」

こうした取り組みの中で、緊急的な状況に以前から対応しているのが、その地域にある「子どもの里」だ。1階は児童館、2階は厨房と食堂、宿題もできる図書室、3階は小規模住居型児童養育事業のファミリーホームになっている。ファミリーホームは児童相談所に保護された子どもたちだけでなく、「親と喧嘩してしまって」という子どもはもちろん、「子どもに暴力を振るってしまいそうで」という親からの依頼も含め、家庭に帰ることができない子どもを預かっている。

今夜帰れないという、緊急の受け入れもしている。家に帰れない子どもたちは結局繁華街に出て、危険にさらされることになりかねないからだ。

「子どもの権利」の視点にたった子ども支援を広げるために

子どもの里施設長の荘保さんは、「子どもたちは児童相談所に保護されると、外出できず学校に通うこともできない。なぜ、被害者ともいえる子どもたちが拘束されることになるのか、中学校区に1つ緊急一時保護を行える宿泊施設があれば、学校に通い続けることができる。それをぜひ他の地域にも広げていきたい」と。

子どもの里のような、遊び場であり、相談の場であり、学校や家庭からの逃げ場であり、さらに緊急一時避難・保護の場が身近な地域で必要だ。日頃直接かかわらない第三者の大人が、おやつを出してくれたり、愚痴を聞いてくれたり、「家に帰りたくなければ泊って行っていいよ」と言ってくれて、近所の子どもも来ていたり、親も「またおばちゃんとこで世話になっているんだろう」と安心していられる、そんな“近所のおばちゃん家”がたくさんあったらいいということだ。

自分の子どもの頃を振り返ると、祖母と母の折り合いが悪かったため、険悪な雰囲気の時など、隣の一人暮らしをしていたおばちゃん家に行っていたことを思い出す。普段口にできないような高級なおやつの味や、そのおばちゃんの雰囲気も記憶に残っている。改めて「支えてもらっていた」ということなのかと気づく。