「私は認知症をどう生きたいかー本人と家族に地域が寄り添う」~No!寝たきりデー2014~その2

 

公園での花壇づくり (株)あおいけあHPより

認知症プロアクティブケアの実践―じいちゃんばあちゃんは地域の社会資源―

藤沢市の(株)あおいけあ代表取締役 加藤忠相氏

 

福祉大学を卒業後、特別養護老人ホームに就職。きれいな介護現場で、座っていられなくなって歩き出せば「徘徊」というような「支援」とはちがう「支配」が行われている現実にショックを受け、3年後に退職、2001年に株式会社を設立、グループホーム、デイサービスを開始。2007年より小規模多機能型居宅介護、2013年よりデイサービスを小規模サテライト事業に切り替え。

これまで介護現場で仕事をしている方の話はたくさんお聞きしてきたが、特別養護老人ホームの在り方をはっきりと批判された方は初めてだと思う。

小規模多機能型居宅介護とは?

小規模多機能型居宅介護は、介護度に応じた1か月あたりの包括報酬で、通いを中心に宿泊や訪問などの機能を柔軟で継続したサービス体制とケアで提供する。

つまり、自宅に暮らし続けることができ、地域のさまざまな資源や関係を活かしながら、個別的で自分らしい暮らしができるしくみだ。これを支えるためには、24時間365日の安心や、家族や周囲の介護負担の軽減、介護・医療・生活支援が一体的にされることが必要だ。

本当のケアとは?

「寄り添う」、「その人らしさ」、「存在意味」、「安心」、「自立支援」をキーワードにおこなうのがプロアクティブケアであり、本来できることをできる環境をつくることだ。そのためには、障害されにくい「手続き記憶」や「呼び水記憶」に働きかけ、その人らしさを引き出していく。ないところをどうしようではなく、あるところをもっと拡大していくことが必要だ。プロならばマニュアルではなく、得意な好きなことをきっかけにそれぞれの自立支援を目指していくべきだ。利用者のお年寄りを「介護される人」にするのではなく、「地域を支える社会資源」と考え、公園の清掃や花壇作り、忘年会やラウンドゴルフにも参加。ボランティアセンターでの活動も担っている。

スタッフは、「じじばば」と一緒に地域に働きかける「キャスト」と考え、あえて無資格・未経験者を採用している。専門職にはない、ためらいのある介護ができるからだ。「看る」と「看られる」の関係から脱却し、誇りを持ってお年寄りのために働ける職場であるからこそ、生きがいをもって働き続けられる。ケアのあるべき姿、自立支援を促すことができるからだ。

藤沢市では藤沢型として小規模多機能にグループホーム、訪問看護の機能、暮らしの保健室、コミュニティレストラン(予防機能)、地域の縁側(相談機能)を独自予算でつけ、市内にできるだけ多く設置することを進めている。

今後のめざすべき地域

加藤さんは、当事者には「自分を見てくれる人がほしいと自ら発信して行く必要がある」と提言するとともに、「私自身がどう生きたいのか」や、「助けて」といえる地域をつくること、小規模多機能を使ってどれだけ子どもたちを育てられるか、どれだけお金を使わずに若い世代に還元できるかを目指している。

以前、他の小規模多機能を視察した際にも、このしくみはスタッフにとっては大変だが、当事者や家族にとっては求められるものだと感じた。さらにこの藤沢型は、ケアのあるべき姿を明確にし、今後の目指すべき方向性ではないだろうか。