認知症になっても安心して暮らせるまちづくり~東近江市~

人口11万人、高齢化率23%、認知症の認定者が4400人の東近江市では、年間20件ほどの認知症によるいわゆる「徘徊」が起こっていることもあり、認知症の人やその家族を地域で支える取り組みが進んでいる。

認知症高齢者見守りネットワーク事業

地域密着型介護サービス事業者が、認知症支援の専門性と特性を活かし、認知症の人とその家族を支える地域づくりのために、見守りネットワーク体制を構築することを目的とした事業で、その事業を介護サービス事業者に委託している。2014年度時点で25事業所のうち14事業所が取り組んでいる。今後は認知症カフェなども事業に組み入れることが検討されている。

事業内容(①~③は必須)

①認知症理解のための研修会、家族会、相談会・・・きっかけづくり

②地域住民、地域組織、事業所等によるネットワークづくり・・・主目的

SOSネットワーク体制の整備・・・緊急時の対応

④徘徊模擬訓練

⑤地域交流事業等の必要と認める事業(お祭りや見学会など)

 

①については、認知症学習会やベッド移動やオムツの選び方などの介護教室、誤嚥のしくみや食生活の提案や口腔体操など実践的な学習会を通して、地域住民に事業所へ足を運んでもらうきっかけをつくることを目的としている。

②については、上記以外にもコンビニや学校、商店街、銀行、郵便局、交番、警察、こども110番を受けてくれている家庭など、その地域ごとにつながりを拡げている。

③については、②のネットワーク会議を通して緊急対応できる体制を整備するというものだ。

④については、認知症高齢者の早期発見・保護訓練を目的とし、認知症の行方不明者を想定した情報伝達、声かけ訓練を実施。2013年度時点で上記のうち、5事業所で実施。

なお、この事業以外にも、地域住民が主催して実施している地域もある。もともと建部地区で地域住民が実施したのがこの事業のきっかけである。

事前に認知症への認識や、対応のしかたについての学習会を実施、現地調査、連絡網、FAXで連絡。21組で探し、講評担当者が見回りし、厳しく評価し、反省会を実施している事業所もある。

⑤については、夜間の防災訓練をする地域もある。車いすの人が多いため、その対応も人手が必要なことがわかった。また、地元消防団員も施設見学に招待し、避難時の想定をしておいてもらうことをしている事業所もある。

実施した事業所からは、以下の意見があげられている。 

・高齢者の見守りが目的だったが、子どもの見守りにもつながっている。

・すでにある地域のネットワークをつなげることが必要。

・事業所の職員と地域住民との顔の見えるつながりがないと、見守りはできない。

 

認知症サポーター養成講座(市主催、キャラバンメイト主催)

・市主催

基礎編+スキルアップ編→4回の連続講座(うち1回は、講師を務める職員の事業所で実施。最終回は参加者との意見交換も。) 

他の介護事業所職員やキャラバンメイトも受講している。 

・キャラバンメイト主催

出前講座などで実施

子ども向けに学校や、若年世代向けに企業への出前講座を検討 

・キャラバンメイトの養成と研修

近隣市町と合同で養成講座、情報交換会を実施。

介護保険事業所職員をキャラバンメイトに 

 

認知症に詳しい専門家が中心になることで、的確な対応を地域に伝えることができるだけでなく、事業所にとっても地域とのつながりを作るきっかけになるという点でも有効ではないか。さらに専門家により、具体的な学習会を実施することができ、地域住民の介護予防や家族の介護の負担軽減、心構えにつながるという効果も期待できる。また子どもの見守りにもつながるなど、地域づくりに結び付いている。

ただ、事業者やそこで働く側にとっての負担は大きいのではないかと感じる。委託料に人件費が含まれていないことも、すべての事業所が取り組めるということにはならない一因と思われる。

徘徊模擬訓練についても、事前学習や訓練を厳しく評価し、反省会も実施することで、すぐ実践に活かすことができるだけでなく、参加者も真剣に取り組むことにつながると考える。

認知症サポーター養成講座については、講座は聞いて終わりということが多い中、参加者との意見交換の場を設けることで、理解が深まり有効な取り組みと考える。

認知症を「だれもが年齢とともにそうなる」と肯定的にとらえていることが、市民の意識改革につながるだけでなく、みんなで支えようという意識にまでつながっているのではないか。いわゆる「徘徊」も本人にとっては目的があってどこかに行きたいが行けなかったり、一人で散歩をしているつもりが迷ってしまったりということであり、どこに行っても安心な社会になっていれば、何の問題もないはずだ。

東近江市のこうした総合的な取り組みを行うことで、認知症でも安心して暮らせるまちを自治体としてめざすことは、世代を超えて市民にとっての安心感につながる。

 

参考:東近江市における認知症に関する上記以外の取り組み

「地域回想法」による認知症予防

「回想法」は昔のことを思い出すことで、障害されにくい「手続き記憶」や「呼び水記憶」に働きかけ、脳をフル回転させる手法で、日本でも少しずつ広まっている。

昔の記憶を思い出すきっかけとして、市の博物館が所蔵する民具を利用している。昔の道具を見ることで、思いだし、話し、使うことにより、道具そのもののことだけでなく、その当時のさまざまな詳細な記憶がよみがえってくる。これは、道具の使い方を教えるなど多世代との交流の場に活用できるだけでなく、同世代の参加者と共通の話題が見つかり、積極的に参加できるといったことにもつながる。地域のサロンなどで住民のネットワークづくりに活用する「地域回想法」を拡げていくことを目指している。