新総合事業でまちづくり

2015年11月19日 00時01分 | カテゴリー: まちづくり, 人権, 市民自治, 活動報告, 福祉・医療

 

「御用聞き学者です」と冗談も交えながら説明くださった藤井氏

「新総合事業とは何か」と題し、上智大学総合人間科学部の藤井教授からお話を聴いた。藤井氏は、医師でもあり、民間シンクタンクでの勤務ののち、大学で教鞭をとられ、国の社会保障制度審議会の介護保険制度の構築に関わってこられた方だ。

 

なぜ制度の見直しが必要なのか

2006年の介護予防に特化した改定では、軽度者への給付は介護保険になじみにくいが、様々な事情で制度に含められた。予防効果があるのではないかと期待されたものの、地域の力を失わせるケースが見られた。

地域包括ケアでは、在宅サービスを増やせば施設入所は減ると考えられていたが、あくまで家族介護は暗黙の裡に前提とされていた。しかし、施設入所は増え、家族は介護をしない権利を手に入れ、独居・老老介護・認認世帯が急増した。

 

寄り添える支援が行われてきたのか

海外を見ると、ひとり暮らしが当たり前で、デイサービスはほとんどなく、家族介護は「公助」という位置づけとなっている。

それに対し日本では、デイサービスが主流をしめ、お風呂や社交の場としてのあり方がメインとなっている。また、施設入所については、なんとか地域で一人で暮らせるにもかかわらず、自分の意思ではなく施設にはいることになったり、家族と同居していても家族に迷惑を掛けたくないからという理由で自ら施設を選んだりしている人が多い。

家族が介護にどう客観的にかかわるかを考えないといつまでもこの状況は変わらないが、世代により考え方が変わるため、今後変化していく可能性がある。

さらに今後、ワーキングプア世代には保育園だけでなく、中高年になると雇用、住居という社会保障も必要となる。

制度のしくみから見逃されてしまう人こそ、本当に支援が必要な人であり、近所にいる人が上手に入っていくしくみを作る必要があり、民間のアプローチでないと救えない。

 

新総合事業が目指すべき方向性

家族を介護から解放するためのサービスという視点ではなく、「本人の意思で選ぶ」本人のためのサービスと家族にとってのレスパイトを目指すべきだ。

 

これまでの予防給付とは

訪問介護、通所介護が新しい介護保険制度では新総合支援事業に移行される。

これまでの予防給付は、130時間以上の研修を受けた事業所のみ指定を受けられるが、介護度の重い人を想定しているため高コストになりがちで、全国一律の定型的・硬直的サービスになりがちだ。一方で、基準さえ満たせば指定されるため、質の低いサービスや制度の趣旨をゆがめたサービスが生まれがちということも起こりうる。

専門性の必要な部分もあるが、そうでない部分もある。全国一律で介護度が軽い人にも介護保険が適用されている国はない。

 

新総合事業とは

新総合事業は地域の実態に応じた多様なサービス、効率的なコストのかからないしくみを設計できる。

市町村は責任を持って対応しやすい。ただし、サービス提供者と行政との関係性を作る必要がある。

訪問介護や通所介護は専門的なサービスを必要とする人には専門的サービスをふさわしい単価で提供し、ごみ出しや清掃、調理、コミュニティーサロンや体操など多様な担い手による多様なサービスに寄った方が良いものは低い単価で提供すれば、利用料も低減させることができる。

 

心配されている新総合事業だが、少し前向きにとらえることができた。自身のために本人が選び取ることがあたりまえとなっていくことが、本人にとって必要なサービスを生み出すことにもつながっていくはずだ。まずは各地域でたくさんのおせっかいを作っていくことが大きな課題だ。