どうなってるの?どうなるの?遺伝子組み換え食品の表示

 

197,879筆の署名と遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーンの天笠啓祐氏

197,879筆の署名と遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーンの天笠啓祐氏

「全ての遺伝子組み換え食品に表示を求める署名提出院内学習会」に参加した。

遺伝子組み換え技術といえば、最近では花粉症に効果のある米や予防接種に使われるワクチンなどが浮かぶ。また、この技術を持つ米国企業が開発した「ラウンドアップ」というほとんどの植物を死滅させる農薬が、日本国内においても農協では業務用の主たる商品として、家庭用もホームセンターなどで販売されている。この企業ではこの農薬に耐性を持つ遺伝子組み換え作物も開発しており、米国やカナダをはじめ、セット販売されている。

遺伝子組み換え食品表示については、世界的には厳密化、正確化の流れが進んでいる。昨年7月には台湾でも表示の厳格化が図られた。最も食べているといわれる米国でも今年7月、バーモント州で表示制度がスタートした。その後、連邦議会でこの制度を無効にする法律改正が行われたが、全米での消費者の取り組みは活発化している。また、EUはもっとも厳格な表示制度を持続させており、ロシアや旧東欧諸国でも栽培や輸入を禁止している。

消費者庁では、今年度から表示対象品目に関する調査や大豆やトウモロコシについての米国やカナダでの遺伝子組み換え作物の流通実態調査、消費者の意識調査を実施するとのことだが、「流通実態を踏まえ、実行可能性に配慮して検討する」とあくまで業界寄りの考え方であることは、これまでと変わっていない。

 

表示の義務化によってどうなったのか

EUでは、トレサビリティ法があり、食品の流通経路を調査できるようになっている。遺伝子組み換え作物の使用については全ての食品、飼料が表示の対象となっており、意図しない混入の許容率は0.9%となっている。

日本でも2001年から始まった表示制度だが、表示が義務付けられているのは豆腐、納豆、おから、みそ、豆乳などのごく限られた食品だ。検査しても確認できないと想定されるものや、原材料の上位3位以内で全重量の5%以上でないもの、意図しない混入であれば5%以上でも表示義務の対象から外されている。また、遺伝子組み換え作物の最大の用途である家畜飼料についても、表示義務の対象からはずされている。

 

遺伝子組み換え食品の検査は、これまでは「含まれているかどうか」という定性的な検査しかできなかったが、このたび「どれくらい含まれているのか」までわかる定量検査ができる機器が検査機関に導入された。今回はそれを活用し、今回の主催団体である「遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン」と「家庭栄養研究会」が、それぞれ農民連食品分析センターにおいて検査を実施した結果が報告された。

結果は、遺伝子組み換えでないと表示された大豆食品については、加熱や納豆など菌の影響で検出できないものを除いて、最大でも0.04%の検出であり、原産国表示のないものから検出される傾向があることを示している。

この結果は、EU並みの0.9%という水準まで基準値を下げることが可能な状態になっているということも示している。また、業界では、表示義務化により、流通のしくみがかなり厳格化され、遺伝子組み換え大豆と非遺伝子組み換え大豆の区分流通が確立できるようになっていることも報告された。

 

TPPによりどうなるのか

TPP協定から、以下のようなことが読み取れる。

2章の「モダンバイオテクノロジーによる生産品の貿易」という条項において、

・GM農作物貿易の中断を回避し、新規承認を促進する

・違法GMの微量混入の容認

が規定されている。

また、7章「衛生植物検疫措置」の条項においては、

・国内の食品安全規制が「貿易への障害にならないようにする」

・規制は科学的根拠に基づいていると認められなければならない

・利害関係者、他の締結国に意見を述べる機会を与えることを義務付ける

ことが規定されている。この条項からは、「予防原則」は認めず、リスクの立証は規制しようとする輸入国に課せられ、投資家や企業利益を守ることが優先されるものとなっていることがわかる。

8章の「貿易の技術的障害」においては、

・基準の設定に当たり、利害関係者に意見を提出する機会を与え、その作成に参加することを認める

・基準が相違していても同等と認められる場合においては受け入れること

が規定されている。この条項からは国内法を上回る権限をもつ、この基準を決める委員会が国内の基準に関与し、利害関係企業に配慮した基準にならざるを得なくなることがわかる。

9章の「投資」においては、ISDS条項と言われる「企業対国家紛争処理」条項があり、

・米国の原則に基づく投資家を保護する義務を定める

・企業は規制などにより損害を被る場合は仲裁申し立ての対象になる

とし、企業からの提訴を避けるために、日本政府に政策の委縮効果をもたらすことがわかる。

このように、TPPの批准は、国内において厳しい食品基準を定めることはできず、国民の利益よりも、現政権の掲げる「企業が一番活躍しやすい国」をめざすものであることが明確だ。

 

そもそも、食品表示だけでなく、放射能などの化学物質をはじめとする日本における規制値は、企業などが「守ることが可能な数値」になっているものが多いと感じる。なんのための規制値なのか。しかし、こんな基準でさえ、なきものにさせるTPPとは、結局だれも幸せにしないのではないか。