子どもにやさしいまちづくりの展開~大震災を経験したネパールと日本の取り組み~

2017年7月13日 00時41分 | カテゴリー: まちづくり, 人権, 子ども・教育, 市民自治, 活動報告, 福祉・医療, 総合計画,

報告者・主催者・通訳のみなさん

今回のシンポジウムでは、アジア子どもの権利フォーラムと子どもの権利条約総合研究所の協力により、ネパール地震からの復興も含め、子どもの権利について積極的な取り組みをするネパールから学びつつ、東日本大震災からの復興支援の取り組みを展開する自治体からの報告を受け、日本には子どもの最終的な保護のしくみはあるが、地域の中で暮らし続けるための予防的なしくみが少ない点など、日本の課題を検討することを目的として開催された。

休憩中会場にて。学生さんも多かったです

 

 

 

ネパールにおける子どもにやさしい地方行政と震災からの復興

ネパール連邦問題・地方開発省地方公共団体対策課長 Mr.Bishnu Datta Gautam氏

ネパールでは民主化された1990年に国連子どもの権利条約を批准し、憲法には10項目の子どもの権利が保障されている。2011年には国として「子どもにやさしい地方行政(CFLG)」を掲げ、国レベル・地方レベルで促進・調整する戦略的なしくみをつくっている。子どものための政策・計画、子どもの意見の反映、子どものための予算に重点をおいている。

CFLGの指標として、現在でも高い死産率や1歳未満死亡率、衛生上の課題や、基礎教育終了率の低さや児童労働や児童婚などの課題を受けた子どもの生存、子どもの保護、子どもの発達に関する指標に加え、子ども参加について設定している点が特徴だ。

ネパール政府の方からの報告

子ども参加における指標は以下のとおりである。

・地方公共団体の意思決定プロセスへの子ども参加(12歳から18歳)のしくみが設けられている

・地方公共団体の計画に子ども計画がある

・学校運営委員会に各学年の代表が参加する「子どもクラブ」の参加の枠組みが設けられている

・地方保健運営委員会に「子どもクラブ」の代表が参加している

・各地区で「子どもクラブ」が、村落開発委員会レベルで「子どもネットワーク」が結成され、機能している

・「子どもクラブ」のネットワークが県・市レベルで形成されている

 

震災後の復興についても、子ども参加の復興会議を開催し、14の県で「子どもクラブ」の子どもたちに質問をおこなった。地震の影響、問題解決の方法、今後また地震が発生した場合どう対処するかなど。これに対し、喪失感や悲しみの存在、家事や仕事の負担が増えた、食べ物が不十分、虐待や搾取の危険が高まったなどの影響が報告された。復興も、元に戻すのではなく、子どもたちの視点で新たに作ることが必要だ。

 

ネパールにおける子どもにやさしいまちの行政と市民社会の連携・協働、子ども参加の取り組み

ネパールのNGOの方からの報告

Child Workers in Nepal創設者/後発開発途上国ウォッチ国際コーディネーター Mr.Gauri Pradhan氏

 

子ども自身を大人と同じ「主体」として、子どもの活動を子どもの権利の1つとして位置付けている。

「子どもクラブ」は2万以上あり、学年単位で男女の代表を決め、主に金曜日の放課後集まり、壁新聞の作成や、地域の課題に取り組み、政策提言も行っている。ネパールは123種類の多言語国家のため、いっしょに過ごすことで多文化共生について理解する機会となっている。今後、障がいのある子も参加できるようにしていくことが課題。

NGOは政策提言、団体間のネットワークの構築、サービスの提供、子ども参加の推進、地域でのつながりづくりなど行っている。かつて「子どもクラブ」に参加していた若者が全国の「子どもフォーラム」にかかわっていることも特徴だ。

ネパールでは20年間民主的な選挙が行われてこなかったが、2017年の各地域での選挙には子どもにやさしいまちづくりが進められるようにと子どもも積極的に参加した。

また、国連のSDG’s(持続可能な開発目標)も子どもにやさしいまちづくりを進めるための20の省庁間連携を初め、よいチャンスとしてとらえている。

 

震災復興における宮城県の子ども支援

宮城県保健福祉部子育て支援課長 志賀慎治氏

東日本大震災後、7年目となる現在も15,000人が仮設住宅で暮らしている。宮城県では震災復興計画を策定したが、子どもの主体性に着目した計画とはなっていない。守るべき存在という意識が強すぎるのかもしれない。

県内の震災孤児139人の里親となっている親族の高齢化が課題であるが、進学の際の支援金の支給や虐待防止体制の強化、里親支援センター事業、子どもの心のケアハウスの充実、アウトリーチによる子どもの心のケア、また、子どもだけでなく家族全体の心のケア、NPOなどと連携した居場所づくりなど行っている。2016年3月には、子どもの貧困対策計画を策定し、実態調査、子ども食堂、居場所づくり、学習支援、フードバンク支援を進めている。

 

東日本大震災の復興における宮城県の子育て支援の取り組み

東北学園大学医療福祉学部 宮城学院女子大学発達科学研究所 平野幹雄氏

自身が被災者であり、津波で弟を亡くす。余震の中、弟を探すために数百の遺体と対面。1年目は喪失感に襲われ、2年目はフラッシュバック、最終的には死への恐怖が残る。2年を過ぎたころから暖かい感覚、これ以上自分は落ちないという確信を持つ。他者に自分の経験を自分のペースで話してきたことがこのPTSD後の成長につながったのではないかと分析している。自分の過去との向き合い方が変化した。過去の自分に生じた元に戻れない現実を受け入れ、回復ではなく再興する。事実の記憶は変わらないが、解釈が変わった。生と死は対象であること、意図的に過去の記憶にアクセスしても怖くなくなった。

復興心理・教育臨床センターの機能は震災後変化してきた。個別相談、安全に語る場の提供、心理教育、心理療法、共に学び、生きるスタッフの育成、専門家に対するスーパービジョン⇒虐待プログラム、遊戯療法に

震災後の第1期ではPTSD、第2期では家族機能の低下による虐待や不登校、第3期では環境の悪化と地域力の低下による発達障害や暴力的行動が多くなる。これには貧困化やストレスの多い住環境、親のメンタルヘルス、育児機能の低下など持続的な負荷状況が関係していると考えられる。

子どもにとって安全基地であるはずの親が心理的不安定に陥っていることによる、子どもへの影響が考えられる。二次的な大人である教師や保育士が安全基地でいることで、支援になるのではないか。

支援者も被災者であり、今後支援者へのケアが必要ではないか。また、支援者が有期雇用では、継続的な支援は難しい。

中高生支援が少ない。大人の都合で、ある時は大人扱い、ある時は子ども扱いされる。自分で決めさせ、実行させることが大切だが、支援者に余裕がないと待てない。参加したくないという意思も尊重する教員への教育も必要だ。

 

川崎市の子どもにやさしいまちづくりにおける市民社会との連携・協働

川崎市子ども夢パーク所長 西野博之氏

 

川崎市では2000年に子どもも参加し、子どもの権利条例を策定。策定過程で、さまざまな課題が浮かび上がる。当時の不登校児童1300人に対し、適応指導教室と相談指導学級のみで対応。しかも、障害の診断名がついたり、非行傾向の子は受け入れてもらえない。義務教育を過ぎた年齢の子どもの支援がない。

子ども夢パークを子どもの権利条例の具現化として子どもと一緒につくった。

冒険遊び場と不登校児童・生徒の居場所。守られる受け身の存在ではなく、自ら遊びと暮らしをする主体者に。遊具は自分たちの手で作り、禁止事項なしで自分たちの責任で自由に遊ぶ。けがや失敗をできる場所。五感を使って遊ぶ。火と道具を使って作り食べる屋外型の子ども食堂。虐待やいじめを発見する場。高校進学後も利用できる。自己肯定感を育む居場所づくり。「一人じゃない」を実感できる場所。毎日、昼食を作り、みんなで食べる。カリキュラムに縛られず、なにもしないことを保障する。個別の学習支援。子ども同志も教え合う。自分たちのことは自分たちで決める。子どもの「やってみたい」をイベントの企画・運営・実施を中心に子ども参加のあり方を模索。子どもゆめ横丁で手作りの食べ物やアクセサリーを売る。

 

★子ども参加のために考えていること、していること

子どもの居場所になっているか。子どもが安心して話せる場所になっているか。意見を聴いたら応答。失敗していい。試行錯誤できる。大人は面倒くさいことから逃げない覚悟を決める。効率性に縛られず、子どものペースを保障する。

 

★子どもの権利保障のための大人の意識改革

市民社会を構成するパートナーとして意識できているか。子どもとのかかわりで大人も成長していく。子どもにとっての最善の利益とはなにかを考え続ける。子どもを制度やしくみに合わせるのではなく、子どもにあわせる。子どもの力を信じ、子どもが伸びていくことを邪魔しない。

 

★地域の力をかりていっしょに運営する

2011年の夏から、「福島の子どもたちとともに川崎市民の会」による思い切り外遊び

生きているただそれだけで祝福される。「生まれてきてくれてありがとう」を届ける。

 

条例ができたことで核となる部分は、首長が変わっても守られている。条例を現場で教えるための取り組みも始める。人権意識を持った教員を育てる。生涯学習としての不登校対策を行っており、学校以外の学びを保障していく。

 

ネパールの子ども参加の報告を受け、「私たちは子どもを主体として位置付けきれていないのではないか。」という日本における子ども参加を体現している西野さんからの問題提起に、なぜ日本においてはこんなにハードルが高いのかと改めて感じた。

子ども参加のあり方は、大人の課題。子どもは守られるだけの存在ではない。子どもを一人の主体として大人が認めなければ始まらない。