HPV(子宮頸がん)ワクチン積極勧奨の再開は見送られたが・・・
このワクチンについては、2013年6月14日に開催された専門家会議において、報告されている副反応が「これまでに収集された医学的情報をもとに分析・評価され、ワクチン接種の有効性と比較した上で、定期接種を中止するほどリスクが高いとは評価されなかったものの、接種部位以外の体の広い範囲で持続する疼痛の副反応症例等について十分に情報提供できない状況にあることから、接種希望者の接種機会は確保しつつ、適切な情報提供ができるまでの間は、積極的な接種勧奨を一時的に差し控える」こととされ、現在でも続いている。こうした状況にもかかわらず、全国でまだ毎月2000名程度が接種しており、清瀬市においても0にはなっていない。
7月4日の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会を傍聴した。
今回の最大の関心事は、上記の勧奨の再開が決定されるかである。
再開については、「副反応について可能な限り調査を実施し、速やかに専門家の会議による分析・評価を行った上で、改めて判断する」ため、これまでとなんらかの状況の変化がなければ再開の決定をする根拠がないと考えられるが、変化は見られないことからこれまでの取り扱いの変更はしないという結論だった。厚労省から資料として提出されているものには、25年10月から26年3月に報告を受けた新たな重篤な副反応も含まれているにも関わらず、状況の変化(悪化)は見られないと結論付けている。
また、これまで副反応とされたものの多くが『心身の反応』とされているが、この用語が一般にはもちろんのこと、専門家である医療者にも正しく理解されていないと検討部会では考えている。明らかな病理所見がみられるものは病名がつくが、病理所見を呈しない場合には、原因や経過に心理・社会的要因が影響しているものとして、『心身の反応』とされているにすぎないと理解すべきということであった。
相変わらず、痛みセンターによるカウンセリングとリハビリに偏っており、原因究明による治療法の研究に進まないという現状を変えることにつながってほしいものである。
また、今回、この部会での承認を受け、厚労省は保護者向けと接種者向けの新しいリーフレットを公開、都道府県を通して各自治体へ配布している。
今回のリーフレットは、「1回目の接種後に気になる症状が現れた場合は、2回目以降の接種を控えることができます」と、これまでは3回受けないと効果がないことが強調されていたことに比べれば、一歩踏み込んだものとなっている。その一方で、重篤な副反応の発生率が紹介されているものの、他のワクチンとの比較などなく、例外的であることを強調していると受け止めざるを得ない。しかもこの率の計算は、分子が報告数で分母が製薬会社からの出荷数であるため、もともと現状より小さい数値にしかなりようがない。
現在の日本における積極的勧奨の差し控えに対し、WHOが、このワクチンの安全性を強調する声明を度々出していることについては、対象ウイルスが他のウイルスのように空気感染しないことを考えると、なぜそこまでするのか疑問を持たざるを得ない。
また、子宮頸がんの中でも腺がんについては、検診で発見しにくいとの指摘もあるようだが、これは医療者側の問題だ。これをもって検診の有効性が不十分であるから、ワクチン接種をというのは問題のすり替えといわざるを得ない。
とにかく、すでにこのワクチンの薬害を受けている彼女たちを救う手立ての確立と、これ以上被害者を出さないための取り組みを早急に進めることが、専門家としての使命ではないのか。