ヤングケアラーの相談の場
最近「ヤングケアラー」が注目されています。自覚がない場合が多く、相談につながることが難しいと言われています。ヤングケアラーの「相談」のありかたについて日本ケアラー連盟の森田久美子さんの学習会を紹介します。
- ヤングケアラーとは
家族にケアが必要な人がいる場合に、大人が担うようなケア責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなど行っている18歳未満
- ヤングケアラーが直面する課題
教育や何かを達成する機会を逃す、疲労やストレスを抱える、孤立や孤独に悩む
ふだんの学校生活では、遅刻や早退、欠席が多い
- ヤングケアラー支援がめざすもの
子どもの権利の回復、保障:ヤングケアラーがライフチャンスを平等に持ち、潜在能力を最大限開花できること
- ヤングケアラーとの相談が意味すること
子どもとして、ケアラーとして、あるいは両方の立場にある一人の人としての自己決定と選択の権利がある
目的:ヤングケアラーの身体的・精神的・社会的に良好な状態の促進
抱えている課題や必要なものをケアラーである子ども自身と一緒に確認し、一緒に考え解決していく
ケアラーである子どもと家族がどのような支援を利用できるかについて把握し、どのような支援を利用するかを決め、表明できる
- ヤングケアラーが自ら相談することの難しさ
世話について相談した経験があるのは、中学2年生で21.6%、高校2年生で23.5%
相談したことのない理由は相談するほどの悩みではない、相談しても状況が変わると思えない
- ヤングケアラーが相談しやすい環境とは
・気にかけ、つらいことはないかと尋ねてくれる
・尊重され安心できる場であること
・身近な相談と解決に向けた相談との連動があること
・相談する力を高める機会があること
- ヤングケアラーとの相談に求められること
・子どもの周りに子どもの声を聴く人やしくみを増やしていく
・安心して相談できる環境を確保する:ヤングケアラーについて大人の理解の促進、プライバシーの保護、個人としての尊重、個別化(ひとり一人違う)、(だれも)罰せられることはない
・ヤングケアラーの必要に応じて身近な相談から解決に向けた相談の場へとつなげていけるよう、多様な相談の場が有機的に連携していく
・子どもの相談力を育む(ヤングケアラーを支援、ケアを停止する権利について知らせる、ヤングケアラーであることを認定する)
また、具体的な取り組みとしてすでに開始している神戸市の取り組みの紹介もありました。市には「子ども・若者ケアラー相談・支援窓口」が設置され、学校と福祉の関係者が連携して家族全体を支援することにつながっていることや、民間が運営する「ふぅのひろば」という交流と情報交換の場が毎月1回開かれ、当事者同士が話しやすく、つながりやすいことがその後の相談につながっているということでした。市の担当者の「つながった糸が切れないように寄り添った対応をしていくことが大事」というお話が印象に残りました。
今年度は国、都でも支援のための予算が組み込まれました。福祉・介護・医療・教育の連携で対応を進めることとなっています。ヤングケアラーのいる家庭への家事支援や育児支援、実態調査や関係機関の職員研修、ヤングケアラー・コーディネーター、相談支援体制、オンラインサロンの運営、全国規模のイベントやシンポジウムなど、各自治体でも少しずつ進んで行くことになっています。清瀬市でも教職員への研修など行われる予定です。
ヤングケアラーが家族としてケアをすることを尊重しつつ、子どもとして自分らしく日々が過ごせるような支援が進むことを望みます。