公教育と政治の「今」を問う~子どもたちはなぜ「学校」に行けないのか~

四街道市「駅の図書館」
生活クラブ社会的連帯経済コネクト機構・東京政策検討プロジェクト主催のピアふぇすたにおける元文部科学事務次官で現代教育行政研究会代表 前川喜平さんの講演を紹介します。
◇日本の子どもは幸せではない
・子どもの精神的幸福度:2020年37位/ OECD 38ヶ国中、2022年32位/ OECD 36ヶ国中
・高校生以下の自殺者:2010年までは最大288人、2015年349人、2020年499人、2025年539人と10年間で急増/主な原因は学校問題、健康問題/15歳~34歳の死因の1位が自殺
◇学校からのエクソダス(大量脱出)という現象=長期欠席50万7千人(2024年度)
・不登校児童生徒:35万4千人(2012年度の3倍)/小学生43人に1人、中学生15人に1人
・不登校以外の長期欠席児童生徒:「病気」10万9千人(2012年度の2.8倍)/「その他(確信犯的登校拒否も含む)」4万4千人(2012年度の1.8倍)
・「ゆとり教育」の時期に減少した不登校(2001年度13万9千人→2012年度11万3千人)が「脱ゆとり教育後」に急増したのはなぜか?
◇教師も幸せではない
・精神疾患による休職者:1980年代1,000人程度→2000年度に2,000人超→2008年度5,000 人超→2023年度7,000人超
◇誤解された「ゆとり教育」
・2001年度~2011年度が最も学習内容、授業時間が少なかった時期:小学校6年生の年間授業時数945時間→現在1015時間
・政治家が考えた「ゆとり教育」と教育者が考えた「ゆとり教育」:「知育偏重*批判」と「詰め込み教育批判」の区別*知育偏重:教育の3要素である知育・徳育・体育のうち、知育のみ重んじる*詰め込み教育:暗記による知識量の増大に重点を置く教育
・公式や都道府県名の暗記などの知識詰め込み教育は本当の学力につながらない
・「ゆとり教育」で学力は低下したのか?=PISA(OECD生徒の学習到達度調査)2012 数学的リテラシー2位、科学的リテラシー1位、読解力1位
・「総合的な学習の時間は要らない」と大臣に訴えた中学校教師たち
◇臨時教育審議会(1984 年~1987 年)のインパクトとパラドックス
・国家主義の方向へ教育基本法を変えようとした中曽根首相
・臨教審が打ち出した教育改革の視点:個性重視の原則(個人の尊厳、個性の尊重、自由・自律、自己責任の原則)/生涯学習体系への移行/国際化・情報化等の変化への対応→学習者主体
の教育=憲法・教育基本法の理念を再確認
◇学習者主体の教育とは?
・生涯学習社会における学校教育の役割=学ぶ力(生涯を通じて学び続ける力)の育成
・学習指導要領が使ってきた言葉:「自ら学び自ら考える力」「主体的、対話的で深い学び」
・「何だろう」「なぜだろう」「どうすればいいだろう」の疑問が大事
・主体性のある生徒を育てるためには教師が主体性を持たなければならない:主体性とは安易に人を信じないこと、違和感にこだわること、懐疑心を持つこと
・学校での学習と実社会との乖離:「実社会の問題の中から数学的な側面を見つけることに自信がある」OECD 平均51.2%、日本22.7%
・自律学習を行う自信が低い:「学校が休校になった場合に自律学習を行う自信がある」34 位/OECD 37 ヶ国中=「受動的な学び」「強いられた学び」→剥落する学力
◇公教育は国が支配する教育なのか
・公教育の「公」=公共性:「すべての人に開かれている」という意味であり、国家が支配するという意味ではない
・学問の自由(憲法23 条)はすべての人の人権。学ぶことは自由な人間になること、そして社会と国家をつくる担い手になること、国家に従属する人間になることではない
◇教育と教育行政の関係:行政は政治の支配を受けるが、教育は受けない、教育行政は?
・2006 年教育基本法改正:「法律に根拠のある介入は正当な支配」という解釈が政府見解に
・学習指導要領、教科書検定などを通じた教育内容の無制限な国家統制を正当化する考え方
・2014 年地方教育行政法改正:首長の発言力の増大、教科書採択への干渉
◇どのような政治支配が行われてきたか
・公共を破壊する新自由主義の教育政策=子どもも教師も競争させられている:全国学力テスト、教員評価制度(目標管理シートによる人事評価)
・自由を破壊する国家主義の教育政策:道徳の教科化(正解の押しつけ)、愛国心教育、学校規律の強調(スタンダードという子どもと教師の画一化)、「日の丸・君が代」で教師を支配
学校は、学ぶことに喜びを感じられる場であってほしい。この講演に続く「多様な学びの場での実践」をテーマにしたパネルディスカッションでは、清瀬でフリースクールを運営している島田さんからの報告もありました。各地域に様々な学びの場が増えることを期待します。
