こどもにやさしいまちづくり「地方自治と子ども施策」~全国自治体シンポジウム~その3

多くの生活者ネットワークのメンバーが参加

子どもにやさしいまちづくりのための子ども計画

2日目の分科会の子ども計画では、子どもにやさしい“まちづくり”の観点から子ども計画を具体化していく方策が議論された。子どもの計画が各地で作られ20年が経った今、その評価は成長した子ども自体として表れているはずだ。

 

「こどもがここで育ちたいと思うまち」を実現するために~千葉県千葉市~

千葉市は、2015年度、子育て支援とともに「こどもがここで育ちたいと思うまち」を実現することを理念とした子どもプランを策定。2011年に策定した「こどもの参画ガイドライン」に基づき、こどもの参画の庁内連携体制をとり、「こども参画チェックリスト」やこども参加企画を庁内に展開する事例集を作成している。こども企画によるイベント、子ども議会、こどものまちづくりワークショップ、高校生が政策策定と投票による選定をし、その政策を実現するためのワークショップによりまちづくりへの参画を実体験できる企画も実施されている。2016年度はこども・若者日本サミットを開催し、千葉市のこどもの参画の取り組みを世界に発信していく予定だ。

 

「子どもにやさしいまち」と「子育てしやすいまち」をめざす~東京都八王子市~

八王子市の子ども育成計画には、「子どもにやさしいまち」と「子育てしやすいまち」を両輪で推進していくことが明示されている。その実現に向け、市民の一員としての子どもの参画をさらに進める取り組みを行っている。例えば、各児童館で募集した、小学生から高校生までの子ども企画委員が案をつくり、その後、子ども・子育て支援審議会とも調整し、市に提案、施策に反映するということを行っている。この際の市民向けのまちづくりアンケートも子ども企画委員が作成、回収している。

八王子市はこの計画について、「これまでの子育て支援の根底に児童福祉の理念である『子どもの最善の利益』を位置付け、子どもの貧困対策や困難を抱える若者への支援を推進し、すべての子ども・若者が必要な支援を享受しながら困難を乗り越え、夢と希望に満ちたくらしができることを社会全体で支えていく必要がある。そのためには、地域における地域福祉や社会的包摂のしくみの構築と実践を合わせて、分野別・個別的な施策推進ではなく、切れ目のない包括的横断的な支援体制の充実を進めていく必要がある。」とまとめている。

 

ネウボラにより妊娠期からの丁寧なケアで支える~埼玉県飯能市~

日本創生会議の提言で「消滅可能性都市」とされた飯能市は、“ピンチをチャンスに変える”べく、フィンランドのネウボラをベースに「かかりつけ保健師」や「マイ保育所」という地域包括ケアにより妊娠期から支える取り組みを実施。

妊娠期の乳幼児とのふれあい体験や敷居の低い地域子育て支援拠点での相談やイベントなど、きめ細やかな切れ目のない支援を行っている。

 

行政にしかできない困難家庭への支援をめざす~兵庫県明石市~

明石市は、行政にしか把握できない困難家庭を早期に見つけ支援することをめざす。子ども養育支援ネットワークにより、離婚や別居による養育支援を行っている。

法テラスや養育相談を専門に行う団体、臨床心理士、家庭裁判所などの専門家や組織も参加した会議により支援の在り方を検討。訪問も含めた臨床心理士等による相談、弁護士による法律相談、子ども養育専門相談、庁内に法テラス窓口の設置など、専門家による相談体制を充実。2割の父親しか支払っていない現状である養育費の取り決めを促す「子どもの養育に関する合意書」を相談時や離婚届受付時に配布し、公正証書の作成による養育費の確保を支援している。また、「子どもと親の交流ノート」や「親の離婚と子どもの気持ち」のパンフレットの配布、親子交流サポート事業としての面会交流の場の提供、子ども同士で触れ合う機会としてのキャンプ、離婚前講座なども実施している。

さらに、要保護家庭への県事業である里親の啓発も、自治体として出前講座を開催し、県との合同開催につなげている。また、まずショートステイにより、子どもを受け入れてもらう体験をしてもらい、継続的な里親につなげる取り組みも行っている。

 

当事者参加・意見表明など子どもの権利施策は計画策定の段階では進んできたものの、実施段階においてはまだ“主体”となっていない。当事者自身が情報をキャッチし、どう参加し、まちづくりの主体となっていくか。子ども参加の中で発言する機会を増やしていくこと、SNS・インターネットなどを含め、どのように子どもに情報を届けるかも今日的課題となる。さらに、子どもの次の世代としての若者には、ひきこもりへのアプローチや望まない妊娠を避けることも含めた親になる支援、文化的に活躍する場が不足している。

また、虐待や貧困は減っておらず、子ども自身が大切にされ、支えられていると感じられる、地域も含めた大人社会が関われるしくみづくりが必要だ。子どもにとっては“今”が大切であり、子どもがどう育っているのかという評価を子どもの権利の視点からとらえ、スピード感のある計画遂行が求められるところだ。

会場からは、子どもの権利条例を前提に計画を策定し、施策を展開し、評価を行わなければ、首長が変わると違う方向に行ってしまうこともあるうえに、予算が取れなくなることで具体化できないことにつながるという指摘があった。また、子育て支援が男女共同参画の視点がないまま、子どもを増やすことに主眼が置かれていることは、女性の活躍とは矛盾することと感じるとの意見も出された。