~ケアラー支援は次世代への先行投資~
ヤングケアラーやダブルケアなど、ケアやケアラーという言葉を耳にすることが増えてきたのではないでしょうか。ケアラーとは、介護、看病、療育、世話、気づかいなど、支援が必要な家族や近親者、友人、知人などを無償でケアする人です。
こうした人への支援を進めていく必要があることはいうまでもないことですが、これまでのケアをする役割を果たすための支援から、ケアラーの人生の支援へと転換していく必要があります。
社会福祉協議会が中心となりケアラー支援に取り組み、現在条例化に向け動いている人口1万1千人、高齢化率39.4%の北海道栗山町。日本ケアラー連盟総会記念シンポジウムにおけるケアラー支援条例策定委員の吉田義人さんの講演を紹介します。
●これまでの栗山町の取り組み
・2010年 ケアラー実態調査(全世帯対象) うち、50世帯にインタビュー調査
ケアラーの6割が心や体に疾病があることが判明
・2015年 全世帯調査
ケアラーでない人の6割が将来ケアラーになることに不安
すでにケアラーの場合、4人に3人が不安を抱えている
(ケアラーの叫び)
社会からの孤立、経済面、買い物・通院ができない、友達に会えない、自分が倒れるかもしれない、地域の行事に参加できない、介護の状況を夫や兄弟が理解してくれない、自分が亡くなった後の残された子の生活が不安
(ケアラーのやりたいこと)
のんびりしたい、ゆっくり買い物がしたい、旅行、ボランティア、趣味を楽しみたい、仕事を続けたい
↓
行政任せではなく、民間の自主的組織である社会福祉協議会の事業として取り組むことに
●ケアラー支援という新たな切り口
・ケアラーへの支援は被介護者への介護支援と違い、多くの町民が支援者として参加、在宅サポ―ターなどの新しいマンパワーが生まれた
・ケアラーズカフェでの交流が介護に関する情報発信の場になる
・ケアラー支援は生涯教育
●8年間の取り組みから見えてきたこと・課題
・ケアラー支援の視点は全世代が該当
・崩壊寸前の地域コミュニティの再生につながる(震災時の地域の大切さ)
・将来の住民負担の軽減につながる
・在宅介護となる次代への先行投資となる
・介護保険では対応できない課題がでてきている
・住民福祉の根幹に関わる問題
・企業や事業所の役割の明確化
●なぜケアラー支援条例が必要なのか
・ケアラーへの支援の必要性が顕著になってきた
・行政サービス(介護保険など)ではすべてを担えない
・ケアラー支援には地域の歴史や風土、人など重要であることから、介護保険制度にケアラー
支援条例で「地域の価値観」を上乗せする
・行政のケアラー支援の取り組みやその継続性を担保するため
・長寿時代の地域構造の変化に対応するため
・地域コミュニティや住民の役割を明確にするため(NPOやボランティアの思いを具現化)
●条例に盛り込みたいこと
・住民に意識の啓発を謳う条例にするか、実際にケアラー支援サービスなどについて、住民や行政の役割を謳うかが問題である。
(盛り込みたい内容)
住民の役割:町内会、団体、個人
行政の役割:全庁を横断したサービスチームの設置
企業・事業所の役割:社会貢献、従業員教育、介護専門職の採用
ケアラーシグナルの設置(ヘルプマークなど)
ケアラーズカフェの設置(行政センターと兼ねる)
新しいマンパワー:在宅サポーター、ケアラーサポーター
ケアラー手帳:自分のことを考えるために
ケアラーアセスメントの実施体制:ケアラーの状況を可視化
ケアラーカードの発行:介護用品やタクシーの割引
高齢者の義務教育
民生・児童委員の役割
●栗山町の現在の動き
・条例制定が町長の公約
・栗山町ケアラー支援推進協議会の設置:条文を草稿中
・発議は住民の声で行ない、検討するプロセスが重要
ケアラー支援の必要性を訴え、住民と行政の行動を条例という「約束」に明記する
私たち市民も行政も長寿社会に向けた意識改革が必要です。ケアラー支援はまちづくりにつながる全世代型福祉です。