意思決定の支援とは

高次脳機能障害の居場所利用の方々の作品

先日、清瀬市自立支援協議会主催で行われた、知的障害や発達障害の支援に詳しい、障害者差別解消法アドバイザーの又村あおいさんの講演を紹介します。
私たちは、日々の生活の中で意思決定を繰り返しています。その意思決定の積み重ねが個性であり、人生ともいえます。だからこそ誰にとっても重要なことはいうまでもありません。さらに意思決定に支援を要するのは知的、発達障害の人だけでなく認知症、子どもも含まれると気づくと、その支援のあり方を考えることは誰にとっても必要なことと感じます。

●意思決定とは
意思:その人の思いや考えのこと、意思のない人はいない(⇔意志:何かを成し遂げようとする心持ち)
意思決定:決定するための十分な体験や決定自体をする経験があり、決定に必要な情報の入手・理解・保持・比較・活用がされ、決定した意思を表出し、実行する(例:路線図を入手し、いくつかの乗り換えを記憶し比べ、乗る路線を決め実際に乗ってみる)。 特に情報処理が困難

●意思決定支援=他者の意思決定に関与するということ
・意思決定支援:「意思」を「決定」するための流れの1つ1つを支援すること
・「意思決定に支援が必要=自分で決められない」ではない
・決められないと決めつけるのではなく、決める手助けをする必要がある
・支援者の成育歴や価値観が混入する(混入することを前提にする)→1対1の関係性で意思決定支援をすることは避けた方がよい(ただし、親子関係は例外)
・あくまで自己決定が基本であることを踏まえて行われる支援

●意思決定支援ガイドライン(障害者総合支援法)
○意思決定支援の基本原則:自己決定の尊重に基づき行う
・支援者の価値観において不合理と思われる決定でも、他者への権利を侵害しないのであればその選択を尊重するよう努める(例:自分の好きなことにお金を使い果たす、酔っ払って公園で一晩明かす)。
・本人の自己決定や意思確認がどうしても困難な場合は、関係者が協議し本人にとっての最善の利益を判断せざるを得ない場合がある。

○最善の利益の判断とは
本人をよく知る関係者が集まって、本人の日常生活の場面やサービス提供場面における表情や感情、行動に関する記録などの情報に加え、これまでの生活史、人間関係など様々な情報を把握し、根拠を明確にしながら本人の意思及び選好を推定する。その際には本人と支援者(家族など)の意思を区別する必要がある。最善の利益の判断は最後の手段であり、以下のことに注意が必要。
・メリット・デメリットの検討:複数の選択肢から可能な限り挙げ、比較検討して本人の最善の利益を導く。
・相反する選択肢の両立:二者択一の場合においても相反する選択肢を両立させることを考え、本人の最善の利益を追求する(例:食事制限が必要な人でも運動や食材の工夫で本人の好みの食事をしつつ、健康上のリスクの少ない生活を送ることができないか考える)。
・自由の制限の最小化:住まいの選択をする場合や、本人の生命・身体の安全を守るために、行動の自由を制限せざるを得ない場合でも他に方法がないか慎重に検討する。

●まとめ
障害の有無にかかわらず、だれでも試行錯誤しながら、時に失敗しながら意思決定を重ねていくものであり、うまくいく感触もだめな感触も味わって自分なりの落ち着きどころを探していくものではないか。支援者はそのための段取りを何度も調整して寄り添うことが大事なのではないか。

 

失敗させないようにと先回りしたり、「子どものことを一番わかっているのは自分」と、子ども自身の意思決定の機会を奪ったりしていた自分に気づく機会ともなりました。