都市計画から見た神宮外苑再開発問題

東京都都市整備局HPより

大量の樹木伐採など神宮外苑再開発が物議を醸しています。村上春樹さんなど著名人も反発し、ユネスコの諮問機関である国際NGOイコモスは、再開発の中止を求める警告文書を出しています。そのためか、都は事業者に樹木の保全に関する見直し案を提出し、今年9月以降に予定されていた743本の伐採時期は24年1月以降に延期されることになりました。樹木の保全の観点だけでなく、都市計画から見ても問題があると指摘する、東京大学・豊橋技術科学大学名誉教授大西隆氏の講演を紹介します。

○明治神宮外苑は公共物
・公共性の強い景観・空間を所有者である宗教法人明治神宮は守る責任がある
・宗教法人の所有物だが、国から宗教活動を行う境内地として半額で払い下げられたもの

○再開発計画の概要
・ラグビー場と野球場の場所の入れ替え
・超高層の事務所棟と複合棟(ホテルや商業施設)を建設

○再開発の手法
・風致地区や文教地区の容積率緩和
・公園計画地にオフィスビルを建てるために一部を都市計画公園から外す
・都市計画公園区域を縮小し、複合棟用地を捻出
・容積率移転(広場や銀杏並木など容積率の低い土地を含めて計算することで、容積率の高いものを建築可能にする)で超高層ビルを建設可能に

○外苑再開発の問題点
・高木の伐採(高さ3m以上の4割)、銀杏並木にも新球場の壁が迫り根への影響
・公園面積の縮小(3.3ha)
・容積移転(10ha強)に伴う資金の流れの不透明さ(宗教法人のため収支など非公開)
⇒東京都が特定の宗教法人に便益供与の可能性
・容積率の移転範囲の恣意的な拡大
・交通混雑、風害、圧迫感、景観阻害

○今後どうすべきか
・(宗)明治神宮は外苑を守ることができないのであれば、都などへ寄付することも選択肢
・東京都は外苑全体の公共性から見れば、樹木の伐採、並木の危機、高層ビル建設は大きなマイナスと捉えるべき

都市計画は、ハード面でのまちづくりを決定する制度です。規制を厳しくするか、緩めるかで住環境や景観に大きな影響を与えます。そのため、市民参加で決定していくことが求められます。
今回の開発にあたり、風致地区、文教地区にもかかわらず、高層ビルが建てられるように都市計画法に基づく規制を大幅に緩和しており、景観を損なうだけでなく便益供与とも考えられ、東京都の責任が重いこともわかりました。
都心の貴重な緑を失うということだけでなく、都市計画の観点からも再開発計画の見直しを求める必要があります。