ヤングケアラーへの支援体制
一般社団法人日本ケアラー連盟の理事も務める社会福祉士、介護福祉士で一般社団法人ケアラーワークスの代表理事田中悠美子氏のお話を紹介します。ケアラーワークスでは、東京都ヤングケアラー相談支援等補助事業を活用し公式LINEアカウント「けあバナ」を開設しています。
◇ケアラーとは
心や体に不調のある人へ「介護」「看護」「養育」「世話」「気づかい」など、ケアを必要とする 家族や近親者・友人・知人などを無償でケアする人たちのこと
◇だれもがケアをする時代に
介護をしている人は628万8千人(15歳~29 歳は20万5千人)
介護や看護のために仕事を辞める人は年間10万6千人(総務省:令和4年就業構造基本調査)
◇ケアラーを支援する法制度はない
ケアが必要な人のための法制度はあり、個別制度ごとに家族支援が位置づけられるようになってはいるが、横断的かつ包括的な対応が必要
◇ヤングケアラーとは
「家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者」
「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律」(2024年6月施行)において国・地方公共団体 等が各種支援に努めるべき対象として明記
中学2年生では17人に1人、1日のケア時間7時間以上のケースも
◇「過度に」とは
子どもにおいては子どもとしての健やかな成長・発達に必要な時間(遊び・勉強等)を、若者においては自立に向けた移行期として必要な時間(勉強・就職準備等)を奪われた り、ケアに伴う身体的・精神的負荷がかかることによって負担が重い状態になっているか、を客観的な状況と主観的な受け止め等を踏まえながら、その最善の利益の観点から個別に判断
◇ケアの実情
ケアの対象者:母親、父親、きょうだい、祖父母
ケアの対象者の状態像:認知症・若年認知症、精神疾患、高次脳機能障害、がん、難病身体障害、知的障害など
ケアの内容:家事全般、自宅での身体介護(食事・口腔ケア・入浴・清拭・排泄・移動のケア・介助等)、感情面・心理的ケア、傾聴、コミュニケーションの介助・通訳、通院介 助・同行/入院時の対応、訪問介護・訪問診療の対応、服薬管理、医療的ケア(経管栄養・たん吸引)、支払い手続き、制度の申請、デイサービス・ショートステイ送り出し等
→「家族の世話を優先するため、自分の時間が取れない」
◇ケアをしている子ども・若者は相談できる人がいない、悩みを一人で抱えている
・家族のことは家族でしないといけないと思っている、自分の役割だと思っている
・生活習慣(当たり前)となっており、子ども自身がケア負担に気づきにくい
・障害や病気の家族のことを隠している(恥ずかしい、家族のことを悪く言われるのが嫌だ)
・相談できることを知らない
・大人ケアラーの影に隠れて見えない
・支援者も子どもを大人ケアラーと同等とみなしていることで子どもの権利を意識できない
◇ケアラーの人生への支援を
18歳~30歳台のケアラーを「若者ケアラー」として位置づけ、子ども期から青年期、社会人としての大人に至るまで、各時期に固有な支援ニーズに配慮しつつ切れ目のない包括的な支援が必要
◇国の地域への支援体制
・実態調査、職員研修、コーディネーター配置、相談・訪問支援のための支援者の養成
・「子ども・若者支援地域協議会」「子ども・若者総合相談センター」の設置
◇「気になることや悩んでいることへの支援」が重要
・子どもが悩みを抱え、孤立してしまうことを見過ごさない視点、「子どもの権利」を守っていく ためには、子どもの状況や思いに気づき、理解し、どのような思いか声に耳を傾けること
・子どもへの具体的な支援の展開と家族全体を支える視点を持つこと
・その子自身が「わかってくれる人がいる」「話をしてみようかな」と感じられる頼れる大人を増やしていく、子どもとの信頼関係を築く
・支援者同士の信頼関係を築き、適切なサポートにつながるように、日頃から多様な団体・組織が連携しやすい支援体制づくりを推進すること
清瀬市でもNPO法人ウイズアイが東京都の補助事業を活用し相談支援や生活支援、レスパイトケアなど取り組んでいます。市には、子ども・若者総合相談センターの設置を求めていきます。