子どもにやさしいまちを目指して

市内のピッコロのおうち・たんぽぽ(たんぽぽHPより)

2022年6月、国連子どもの権利条約を反映したこども基本法が成立しました。東京都にもこども基本条例があり、清瀬市でもこども計画策定に向け取り組みを進めています。

長年このテーマに取り組んでこられた東洋大学名誉教授森田明美さんの講演を紹介します。

 

◇国連子どもの権利条約 4つの一般原則

・生命、生存及び発達に対する権利(命を守られ成長できること)

すべての子どもの命が守られ、もって生まれた能力を十分に伸ばして成長できるよう、医療、教育、生活への支援などを受けることが保障される

・子どもの最善の利益(子どもにとって最もよいこと)

子どもに関することが行われる時は、「その子どもにとって最もよいこと」を第一に考える

・子どもの意見の尊重(意見を表明し参加できること)

子どもは自分に関係のある事柄について自由に意見を表すことができ、おとなはその意見を子どもの発達に応じて十分に考慮する

・差別の禁止(差別のないこと)

すべての子どもは、子ども自身や親の人種、性別、意見、障がい、経済状況などどんな理由でも差別されず、条約の定めるすべての権利が保障される

◇「子どもの権利」は大人や子ども支援者(教師、福祉関係者など)に拒否されがち。なぜ?

<肯定派>権利基盤型支援 <拒否派>ニーズ対応型支援
現代社会問題の解決への起爆(特に少子化)と一緒に新しい時代を作る国際社会への対応 時間や手間がかかり、これまでのかかわり方や方法の見直しを迫られることへの恐怖?
子どもの主体的な選択を保障(待つ) 子どもは発達途上であり、保護、保育、教育におけるしつけ指導の対象
おとなは伴走者、パートナー おとなは指導的な位置
見守りや話を聴く役割が中心

子どもの権利基盤としての環境の整備

子どものニーズは身近な大人に聞けば十分である

◇子ども支援の現状

コロナ禍でみんな苦しかった時代を経て、これからの10年はどうであろうか

・貧困・格差の拡大(ひきこもり)、意欲の喪失、若者世代の孤立

⇒乳幼児・子ども・若者期からおとな・親の循環型継続支援が不足

⇔次の家族形成ができない、想像しにくい、世代分断が激しくなっている、結婚・子育てを希望しない人が急増

 

◇権利主体としての子ども・若者支援の考え方への移行

・子ども期から若者期は連続し、課題は重なっている。保護的な支援のみならず、政策決定への参加・発言のみならず、若者世代の自立活動のための多様なしくみが必要

事例: デンマーク、フィンランド、スウェーデンなどの若者支援の取り組み

 

◇意思決定への子ども参加とは何か

・日常的状況や戦略的発展(政策、プログラム、サービス、立法、調査研究などを含む)に関して行われる、自分に影響を与える決定についての発言権

・子どもには主体性を発揮する力と権利があると考える

・子どもには独自の視点があり、それは大人の視点と同じぐらい重要かつ貴重であることを知る

・子どもは社会の未来であるだけでなく、いまを生きる存在であることを理解する

・公共政策は、生産的な大人としての子どもの未来と同じくらい、子どもの現在の生活にも焦点を当てればよりよいものになる

・子どもの声に耳を傾けることは、子どもの現在の生活を理解することの鍵である

 

◇不適切な支援の中での子どもの暮らし

  • 自分がこの社会(地域)に歓迎され、自分の人生を生きる、生きている、生きていていいという実感が持てない
  • 貧困や問題を乗り越えることの自分にとっての意味・価値をとらえることができない

当事者の話を丁寧に聴き、一緒に考え、寄り添い続ける意味ある他者の存在と場を地域に作り出す価値の共有、とりわけ子どもに直接かかわる支援者たちの認識の変化と価値の共有が重要

 

◇まとめ

・子どもの権利条約の4つの一般原則の具体化を子ども支援の基本にする

・基礎自治体の重要性と覚悟

・市民、専門家が子どもや保護者と一緒に、子どもの権利基盤型(ニーズ対応型からの脱却)の地域をつくる

・子どもの権利文化の形成は子どもの貧困と貧困の連鎖、少子化からの脱却のキーワード

              子どもにやさしいまち

子どもの幸せのためにもおとなの幸せのためにもおとなが変わらなければ!!