再生可能エネルギーの現状と課題

洋上風力(デンマーク)
国の第7次エネルギー基本計画が今年2月に決定されました。その計画では原発回帰の方針が明確に打ち出される残念な内容となっている一方、再生可能エネルギーを2040年の電源構成の4割~5割を目指すとしています。学生時代は太陽電池の研究をされ、現在は研究のマネジメントや資金調達支援に務める国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(略称:NEDO)再生可能エネルギー部統括課 大庭宏介氏の講演を紹介します。
◇パリ協定での目標
・世界の平均気温の上昇を産業革命前と比較し1.5度以内に抑える
・21世紀後半には温室効果ガス排出量と森林などによる吸収量のバランスをとる(カーボンニュートラルの実現)
◇カーボンニュートラル宣言の状況
・2024年では146ヶ国が年限付きの目標を掲げている(日本は2050年を年限としている)
・排出削減と経済成長をともに実現するGX(グリーントランスフォーメーション)に向けた大規模な投資競争が激化
◇日本のカーボンニュートラルに向けた実績
・2022年度排出・吸収実績:▲22.9%(2013年度比)(目標の範囲内)
◇電力由来が排出の4割
・2023年実績:エネルギー自給率15.2% 電源構成割合:再生可能エネルギー23%、火力68%、原発8.5%⇒温室効果ガス削減効果23%
・2040年目標:エネルギー自給率3~4割 電源構成割合:再生可能エネルギー4~5割、火力3~4割、原発2割⇒温室効果ガス削減効果73%
◇各再生可能エネルギーの導入状況と目標
・太陽光:2023年実績73GW、2030年目標110GW
・風力:洋上2023年実績0.15GW、2030年目標5.7GW 陸上2023年実績5.5GW、2030年目標17.9GW
・地熱:2023年実績0.6GW、2030年目標1.5GW
・中小水力:2023年実績9.9GW、2030年目標10.4GW
・バイオマス:2023年実績7.4GW、2030年目標8.0GW
◇GX2040ビジョン
・排出量取引制度の本格稼働(2026年度~)を2025年国会に提出予定⇒直接排出10万トン以上の企業は参加義務、排出枠の割り当て、排出枠の上下限価格設定
・化石燃料賦課金の導入(2028年度~)
◇再生可能エネルギーの課題
・国民負担増(固定価格買い取り制度などによる再エネ賦課金):コスト低減と発電量の確保
・需給バランス(気象影響による出力変動、再エネ導入地と電力需要地の遠隔、現在火力発電で調整):地域間連系線整備、揚水・蓄電池の活用
・技術改良や量産体制の不足:原材料や設備の海外依存の低減
・規制・規格・LCA評価*による市場形成
・地域との共生:森林伐採、土砂崩れ、住民説明
*LCA評価:製品やサービスのライフサイクル(原材料の調達から生産、流通、消費、廃棄、リサイクル)の水やエネルギーの消費量、温室効果ガス排出量などの環境負荷を評価する手法
◇各再生可能エネルギーの課題と今後の方向性
・太陽光:太陽光パネルの適正な廃棄・リサイクル、設備の海外依存低減や太陽光パネル設置の適地不足に対応するペロブスカイト太陽電池(軽量、曲面にも設置可能)への移行
・風力:大型が効率的なため陸上で可能な場所は限定的、洋上浮体式への移行
・バイオマス発電:様々な気候区分や樹種に対応する技術の開発
・地熱:温泉が枯れる、国立公園内に多く開発が困難、掘削に多額の資金が必要、深部地熱探査手法の開発、超臨界地熱(古火山などの地下の超高温高圧水)の活用
NEDOは、経済産業省の機関で様々な技術をとりまとめるプロジェクトを立ち上げ、産業界・大学・公的研究機関に参加してもらい、事業として社会課題を解決することを目指しており、年間1800億円の予算で運営されているそうです。また、8兆円超のグリーンイノベーション基金などで、エネルギー・地球環境分野、産業技術、スタートアップへの支援を行っているとのことで、再生可能エネルギー事業には多額の投資がされていることがわかりました。自然破壊につながらない技術開発や投資を期待します。
また、電力の地産地消を進める、各地域の市民が出資し発電し利用する市民電力を増やせる政策の充実を図る必要もあると考えます。