福祉でまちづくり ~「藤里方式」が止まらない~

地域の人の集う場 藤里町のこみっと(秋田県藤里町社会福祉協議会HPより)
ひきこもりや福祉をどう捉えればいいのか。秋田県藤里町(人口2,736人(2025年1月現在))の社会福祉協議会会長菊池まゆみさんの著書「『藤里方式』が止まらない」を紹介します。
◇社会福祉協議会
・地域が必要とする社会福祉を目的とする事業を行う
◇ひきこもり支援の困難さ
・匿名性のない小さな町でタブー視されているひきこもり問題
・やらない・やろうとしない慣例がまかり通る小さな組織で顔が見えすぎる人を相手にした意識改革・組織改革⇒資質・能力向上のためパート職員を含め、働きながらの資格取得を支援
◇ひきこもりは普通の人
・対象者がわからないひきこもり支援に関する情報提供を全戸に実施(相談援助はしない)
・弱者支援の限界:根底にある侮蔑や軽視が支援される側を傷つける
・治療や指導ではないひきこもり支援:福祉職は原因探しには関わらず、地域でよりよく暮らすための社会資源探しを実施
◇福祉の拠点「こみっと」(ひきこもり者及び長期不就労者及び在宅障害者等支援事業)
・働く意欲も能力もあるのに就職に結びつかない若者がこみっと登録生として配食や食事のサービスをするお食事処:役割があって居場所になり、役割がなければお客さま
・登録した地域の様々な団体が利用できる共同事務所:仕事の現場を身近で見られる
・サークル活動などで利用できる会議室やサークル室:地域の人と顔見知りになる
・相談室
◇こみっとバンク
・地域からの仕事の依頼を受ける
・こみっと登録生が当日になってのキャンセルもありうるため、一人でできる仕事も職員を含めたチームで請け負い、依頼主が個人を指名するようになったら雇いあげをお願いする
◇求職者支援事業と伴走型支援の効果
・さまざまな手続きやハローワークへの同行、一歩踏み出すことを電話や迎えでサポート
・遠慮の無い年長の受講生仲間とのやりとりで自分自身をさらけ出し、自信を取り戻す
◇秋田県の「小地域ネットワーク活動事業」
・一人の不幸も見逃さない運動
・ひとり暮らし高齢者は不幸な人ではなく、一人で暮らせる人
⇒一人で暮らすことの不便さや支援が必要な部分に焦点を当てる
◇「ネットワーク活動事業」から「地域福祉トータルケア推進事業」への転換
・「福祉のまちづくり」から「福祉でまちづくり」へ:弱者に対し支援することを地域に求めた
まちづくりから、その人の弱い部分を補い、力を活かすまちづくりへの転換
◇「福祉でまちづくり」を地域福祉トータルケア推進事業の合い言葉に
・総合相談・生活支援システムの構築:担当業務の異なる職員間の情報共有と情報提供者への
フィードバックによる情報提供の推進
・福祉を支える人づくり:担当業務以外にも気づいた地域の福祉ニーズを報告することを業務
にし、アンテナをはることを日常化
・介護予防のための健康づくり・生きがいづくり:今日は参加者、明日はスタッフの居場所づ
くり
・福祉による地域活性化⇒福祉でまちづくり:商店街のすべてのお店が椅子とお茶の提供
・次世代の担い手づくり:高齢化の進んだ過疎の町で若者支援は必要
◇シルバー人材センター事業(高齢者の生きがいづくり・職業斡旋)からシルバーバンク事業
(地域貢献・地域ボランティアの担い手)への転換
・介護保険制度でのヘルパーの業務に含まれないちょっとした仕事を対象に
・定額料金で:頼む方も頼まれる方も有料を選ぶ
・こみっとバンクと協働
・生涯現役を目指すシルバーバンクへ
◇地域福祉の対象者は地域に住む人すべて
・地域福祉が対象とするのは特定の弱者ではなく、福祉ニーズを持つ方であり、その時その状
況による地域福祉課題に対してであり、地域に住む人全員が対象であるとともに、支援する
側も地域に住む人全員
生活者ネットワークも「だれにも居場所と出番と役割がある地域」を目指してきました。藤里町での取り組みの考え方が清瀬でも活かすことができればと思います。書き切れないことがたくさんあるので、ぜひ「藤里方式」が止まらない(菊池まゆみ著、萌書房)をご一読ください。