移動&外出支援サービスの現状と課題

NPO法人全国移動サービスネットワークの河崎民子さん

NPO法人全国移動サービスネットワークの河崎民子さん

清瀬市内でも交通に不便な地域や買い物が困難な地域が見えてきており、また障がいや高齢に伴う外出支援のあり方が課題となっている。こうした課題に取り組んでこられたNPO法人全国移動サービスネットワーク(2008年創設)の河崎民子さんからお話を伺った。

 

★日常生活に必要な移動&外出が困難な住民の増加

・駅やバス停まで歩けない、坂道が登れない、助けてくれる人がいない高齢者の増加

・地域の商店街の衰退による買い物難民の増加

・路線バスなどの公共交通の衰退〉

 

★外出意欲の低下理由

・経済状況が悪い、親しい友人がいない、歩行が困難

 

★外出しにくいと

・とじこもり

・会話をしない(家族と住んでいても日中独居)

・買い物に行きにくいことによる低栄養

→健康な心身の維持に外出、外出のモチベーションを高める居場所づくりも必要(特に男性高齢者向け)

 

★法の整備状況

・2013.12交通政策基本法→2015.2交通政策基本計画

利用者本位をはじめて明記、自治体に「住民の生活の足」確保を義務付け

・2014.11地域公共交通活性化再生法の改正

地域公共交通網形成計画の策定、面としての整備を求める

タクシー自家用有償旅客運送の位置づけを可能に

・2015.4道路運送法改正

有償旅客運送の運用ルールの緩和、登録の事務・権限を市町村に移管

しかし、自治体の動きは鈍い

 

★移動サービスの歴史(1)

1970年代 車いす使用者の外出のためのスロープ付き車両が開発される

24時間テレビが福祉車両の寄贈、ボランティア団体による送迎活動開始

80年代 全国で社会福祉協議会がリフト付き車両で送迎サービスを開始

88年  道路運送法に「患者等輸送限定」タクシー導入

93年  日本財団が福祉車両の寄贈開始 全国で2500団体が活動

運輸省は白ナンバーによる有償運送は違法行為としながら黙認

99年   介護タクシーが各地に登場

★ 移動サービスの歴史(2)

2000年  介護保険制度開始

02年 道路運送法で自家用有償旅客運送が構造改革特区メニューに

03年 4自治体が特区認定、介護保険に乗降介助を新設

04年 自家用有償旅客運送ガイドラインの全国化、セダン型(乗降装置なし)特区の新設

06年 NPO等による自家用有償旅客運送を法的に例外として位置づけ

15年 事務・登録権限を市町村に

 

★自家用有償旅客運送の道路運送法での位置づけ

・福祉有償運送・・限定した利用者 全国で2575団体(うち市町村117団体)

・公共交通空白地有償運送・・誰でも、ただし事前登録 532団体(うち市町村433団体)

・営利目的では実施できない(タクシーの上限運賃の約1/2を目安)

・自治体の長や事業者で構成する運営協議会の合意のうえ、国に登録

 

★道路運送法における登録や許可を要しない運送

・ボランティア活動における送迎行為等を念頭に置くとしながらも、登録が必要かどうかは個別に国交省が判断(特に謝礼が有償とみなされるかどうか)

 

★新たな地域支援事業における移動支援の充実

・住民主体による訪問型サービス(買い物や通院、外出時の付き添い)も移動手段が必要

・運転ボランティア研修による人材育成、特養の送迎車や公用車など車両の確保

 

自治体に義務付けられた交通政策基本法における「住民の生活の足」の確保を実現するためには、それを具体化する道路運送法やその運用を再整備することが必要だ。

今後、移動支援の重要性や必要性は増してくる一方だ。地域で元気に暮らし続けるためにも、利用者本位の地域公共交通網の整備を急がなければならない。もちろん私たち市民が主体として。