~持続可能な地域社会をめざして~ ワーカーズ法成立

ワーカーズ・コレクティブ視察 2016年

生活クラブの運動グループとして、ともに活動してきた東京ワーカーズ・コレクティブ協同組合は、自分たちの働き方に合う法人格を規定する「ワーカーズ・コレクティブ法」の制定を30年近く求めてきました。欧米では1990年代に成立しています。

昨年秋の臨時国会で、これまで求めてきたものに最も近い「労働者協同組合法(ワーカーズ法)」が成立、2022年12月までには施行される予定です。ワーカーズ・コレクティブネットワークジャパン小柳智恵さんの学習会を紹介します。

 

  • ワーカーズ・コレクティブとは

・地域のいろいろな「あったらいいな」をそこに暮らす人が主体的、自発的に起業

・同じ目的を持ち、ひとり一人がお金を出し合い、対等な立場で議論し、働く

・労働の対価としての報酬は受けるが、利益の追求はしない非営利の市民事業

・性別、年齢、ライフスタイル、障がいや働きにくさなどお互いの違いを認め合い、自分らしく働く

 

  • 似通った組織との法的な違い
労働者協同組合 NPO法人 企業組合
目的 出資・意見反映・従事を基本とした組織による持続可能な社会づくり ボランティア活動をはじめ市民が行う自由な社会貢献活動による公益の増進 事業者・勤労者の経済的地位の向上
出資 できる(配当は不可) できない(財政基盤の確立という点では弱い) できる(年2割を限度に配当可能)
非営利性 非営利を明記 非営利 非営利に限らない
事業 労働者派遣事業以外制限なし 法律で規定された20の非営利活動に限定 制限なし
参加者の資格、議決権 個人(4/5が事業従事者) 一人1票 多様な会員制度(事業従事者に限らず正会員は議決権を持つ) 個人、法人、任意団体(事業従事者比率1/3以上)
設立 準則主義(*) 都道府県(または政令市)の認証 都道府県の認可
設立要件 3人以上 10人以上 4人以上

*準則主義:基準を満たし、申請さえすれば設立可能(認可制度は時間がかかる)

 

  • 法制化の必要性と効果

・法人格がないことで公的信用がないために、契約や融資を受ける際に個人保証をしなければならなかった→出資の範囲内で責任を負えばよいことに

・法の目的でもあるワークライフバランスやディーセントワークの実現に近づくことが期待される

 

  • まだ解決されていない課題

・労働契約を結ぶこと

ただし、誰かが誰かを雇うのではなく、事業に参加したメンバーが自分たちの労働条件とメンバーの「代表」という役割を決め、その代表と労働契約を結ぶ形をとる

 

  • 今後望まれる改定

・労働法制(社会保障関連)の改革:(代表者の立場になる人にも社会保障を)

・公益事業に対する税制優遇

 

団体として税金は納めてきたのに、コロナ禍で持続化給付金申請をしようと思ったら、「法人格のない団体は対象外」ということで申請できなかったそうです。なんたる矛盾。

現在、約90団体が活動しています。決定権が参加メンバーにあることは、「働くことを自治する」ことにつながります。暮らしやすいまちづくりに向け、地域のさまざまな“あったらいいな”を事業として起業する。この法がワーカーズ・コレクティブの組織を支えることで、それぞれの生活を尊重したやりがいのある働き方があたりまえになっていくことを期待します。