子ども・若者の立ち直りと家族支援

子どもたちが好きな漫画や本、おもちゃが用意された居場所

少年法は事件や罪を犯した子どもたちの立直りを図ることを目的としており、子どもをとりまく社会的な環境要因を調整するものです。5 月の少年法の改正では、罪を犯した 18 歳・19 歳について、成人と同じ刑事手続きをとる対象犯罪が拡大され厳罰化が進みました。
NPO 法人非行克服支援センターは、事件や罪を犯した子どもたちの立直りや、悩む親をサポートしてきました。団体で活動されている、家庭裁判所調査官をされていた伊藤由紀夫さんと、親の会でも活動されている春野すみれさんのお話を紹介します。

 

 

●非行・不登校・ひきこもりから見た“今どき”の子ども・若者
・かつて「非行少年」と言われた子どもたちは、集団での暴力事件など、仲間との関わりがあった→共犯を持たない非行が増加:対人関係への苦手意識
・少年非行は増加も凶悪化もしていないが、不登校、ひきこもり、被虐待、いじめによる自殺などの問題は増加
・リアルな居場所の喪失(深夜のコンビニ駐車場やカラオケボックスに監視カメラ)
・スマホなどによるゲームや SNS への依存
・日常と非日常の境界の曖昧化(自傷行為で血を見ることで自分の存在感を確認)

●子どもにとって何が必要か
・失敗しても挫折しても大丈夫という安心感:子どもは小さな大人ではなく、つまずき失敗しつつ、成長変化する存在
・個々に適した居場所の確保
・立ち直れる、やり直せる教育機会の確保
・「壊れたものとしての人間」の悲しさ、苦しさを知りつつ、「命に関わること」「違法にかかわること」をせず、「生き延びること」を学ぶ
・人は人によって傷つけられるが、人によって生かされることを体験する

●センターへの相談の状況(2019 年度)
・相談者:母 7 割、電話68%・面談32%、相談対象:息子52%、娘48%
・対象年齢16歳~19歳が多いが、20代後半、30代も多い
・相談内容:1 人がいくつもの問題を抱えている
男性:詐欺事件へのかかわり、性にまつわる問題、女性:性風俗、さまざまな依存症

●子どもたちの傾向
学校でのいじめ被害や否定された体験を持つ子、スポーツなどで期待され、強い暴力的な指導下にいた経験を持つ子、親の期待と自分とのギャップを感じた子

●最近の相談から感じること:居場所の大切さ
・子育て・親の孤立:地域の関係が希薄、家族が問題を抱えている
・「失敗したらおしまい」という思いの強さ

●子どもの立ち直りと親・家族の課題
・親の会では、聞き合い、語り合い、支え合い、学び合い、つながる
・我が子が荒れてしまった→苦しい、自分がだめだから、恥ずかしい、誰にも言えないという思い→子どもを信じられない、限りない不安→体や心の病気、子どもへの不適切な対応、自殺未遂、自殺

●支援者として大切にしていること
技術や資格ではなく、人間としての共感力、他人事にしない力、失敗しても諦めない、理解させるのではなく、理解しようとする力

かつて「非行」といわれたことも、今のひきこもりなども根は同じで、行動として表に出るか出ないかの違いだけというお話が特に印象的でした。
また、子どもだけでなく親も孤立しており、失敗は許されないと思い込まされていること、少年法では再犯防止が強調され厳罰化が進み、非行少年たちは自己責任が問われるだけで、社会から排除される存在となっている。
コロナ禍で浮き彫りになった私たちの社会の不寛容は、さらに子ども・若者を追い詰めているのではないでしょうか。