楽しい、かっこいい、自分たちが行きたい場をつくる

カルチャースクール亀吉、かめキッチン入り口

生活クラブ生協インクルーシブ事業連合では、市民版地域福祉計画の策定支援やその計画を具体化する居場所づくりの支援を行っています。事業連合主催で視察した居場所や地域づくりを行う、藤沢市のNPO 法人シニアライフセラピー研究所が運営するさまざまな「亀吉」を紹介します。

○赤ちゃんから高齢者まで集う地域の居場所として
・カルチャースクール亀吉:カルチャースクール式デイサービス
・クラッセ亀吉:地域の人が講師になり、受講生になる学び合い、語り合う場の提供
・亀吉子ども会:家庭と家庭を結ぶ、地域が地域の子どもを育てる場
・子どもお手伝い食堂:子どもたちが一緒に作って一緒に食べる場
・亀吉音楽堂:夜、お酒を楽しみながらみんなが気軽に行ける、生の音楽がある場

○地域の人の活動の場として
・かめキッチン:デイサービスの機能訓練・障がい者の就労移行支援として料理をつくる場
・パン遊房亀吉:障がい者の就労継続支援B 型事業所としての働く場
・コミュニティカフェ亀吉:障がい者の就労移行支援・就労継続支援B 型事業所としての働く場
・ボランティアステーション亀吉:お互いさまの関係、仲間づくり、会社や学校にない学び・経験の場

○視察の概要
法人が展開しているたくさんの事業の中から、街道沿いにあるカルチャースクール亀吉、かめキッチン、パン遊房亀吉、コミュニティカフェ亀吉を視察。
カルチャースクール亀吉、かめキッチンは入り口からは端まで見渡せる、大きな倉庫のような建物にありました。入り口前には日よけが張られ、パン、地場野菜、リユースの服が 売られていました。

★カルチャースクール亀吉
高齢女性10 名くらいが講師の動きを見ながら体操をしていました。ヨガ、太極拳、麻雀、書道、パソコン・スマホ教室などあるそうです。

かめキッチン

★かめキッチン
カルチャースクール亀吉の隣には、食事や作業のできる丸や長いテーブルと椅子が20 客ほどのスペースがあり、その反対側にかめキッチンはありました。そこでは、高齢の方5 、6 名と20~30代くらいの方5 、6 名が楽しそうに料理の盛り付けなどをしていました。エプロンが違うと説明を受けて、法人職員もいることがわかりましたが、みんな混じり合って作業をしているのが印象的でした。テーブルスペースの奥にはステージがあり、ドラムやアンプが置かれていました。

★パン遊房亀吉
カルチャースクール亀吉とかめキッチンの隣の建物にありました。オーブンは危険なため専門の職員が扱うとのことでしたが、それ以外は就労継続支援B 型の利用者20~3 0代の方10 名ほどが粉を混ぜる作業や、生地を丸める作業を黙々としていました。

★コミュニティカフェ亀吉
カルチャースクール亀吉などから車で5分くらいの場所にありました。ここも工房内が見渡せるようになっており、ケーキやお菓子用の粉をふるいにかけたり、ボールに入れて 混ぜたり、お弁当を詰めたり、就労継続支援B 型の利用者20~30 代の方20 名くらいが賑やかな雰囲気でとても楽しそうに作業していました。
工房と透明なガラスで仕切られた手前には、ケーキやお弁当と一緒に、自閉症の方が制作したカラフルで個性的なバッグやアート作品も展示、販売されていました。

○運営面の工夫
・神奈川県の指定NPO 法人の認証取得
・パン遊房亀吉のパンを藤沢市ふるさと納税返礼品として登録
・利用者が主体的に仕事をできるようにすることで職員配置も少なくできる
・ひとり一人の得意なことを職員が見極め、得意なことを仕事にする
・参加者や利用者のやりたいことを、すぐにチラシ配布し、必ず実行するなど広報部門の強化
・福祉の専門職より異分野で働いていた人を積極的に採用
・必要となった新たな事業(居住支援のための不動産業など)のための専門性や資格を職員が取得
・地域福祉の発展のための社会的課題の研究
・クラッセ亀吉として、地域の人がさまざまな講座を開催できるスペースを貸し出し。参加費無料の講座であれば使用料も無料で、有料ならその1 割くらいを徴収。毎月50 回くらい利用あり

これまでの常識がなんだったのかと思うほど、「目からうろこ」の連続だった。別々に生活するのがあたりまえになっている人たちが、混じり合って、だれもが生き生きとしている姿が印象的だった。
「今後は制約の多い介護保険制度の事業をやめ、さらに利用者がやりたいことをできる体制を整える」というお話もあり、制度にはめるのではなく、“楽しい、やってみたい”に人が集まり、支えることで続いていき、利用者本位の居場所と役割と出番をさらに広げていくことで、地域の中にますます根付いていくのだろう。まさに自治を実現している地域、場所といえるのではないだろうか。