スウェーデンに学ぶ若者参加のまちづくり

”チノチノ”の作って食べられるキッチンスペース

若者の参加先進国スウェーデン。地元で通っていたCHOKOランドチノチノ(長野県茅野市)が研究のきっかけと語る日本福祉大学社会学部講師、国立青少年教育振興機構青少年研究センター客員研究員、静岡県立大学国際関係学研究科客員研究員 両角達平さんの講演を紹介します。

◆スウェーデンとは

・自分たちが社会に影響を与えられると感じている若者の割合が65%(日本は24%)

・若者の投票率が85%(投票は義務ではない、日本は30%)

◆スウェーデンの政治参加の意識

・政党に関わっている若者9.6%(日本1.4%)、署名をしたことある若者73.7%(日本27.4%)

・選挙権・被選挙権ともに18歳(日本は選挙権18歳、被選挙権25歳または30歳)

・国会議員18歳~24歳2.3%、25歳~29歳8.3%、女性国会議員比率46%

◆日本との政治の違い

・一院制、選挙は地方・国政とも4年に1回、国会議員の給料60万~80万/月

◆スウェーデンの教育法

・児童・生徒が教育に対して影響力が発揮できるようにしなければならない

・児童・生徒は教育の改善のために積極的な参画が促進され、自身にかかわるあらゆる事柄について常に情報が与えられなければならない

・児童・生徒への情報提供と影響力の発揮のあり方は、年齢と発達に応じたものとする

・児童・生徒は、教育に対しての影響力の発揮において、生徒に関わる事柄を主導できなければならない

・児童・生徒の権利に関わる組織活動も同様に促進されなければならない

◆学校に影響力を発揮できる場

・給食協議会:学期ごとに2~3回、クラス代表、学校執行部、教員、調理員、保健室の先生が参加、献立に限らず食堂の環境やルール、名称の決定や改善のための提言、意見箱の設置

・クラス会議:代表を学期の始まりに選挙で決める、自分たちの好きなこと、変えたいと思うことについて話し合う、カリキュラムを変えてもらったこともある

・生徒会:クラス代表者は2週間に1度開かれる生徒会に参加、生徒自身にかかわる課題や問題について意見交換、総意を校長に伝え学校の方針に影響を与える(学校活動のテーマ、学  校・教室に必要な物品の購入・補修の依頼、学校への持ち物や規則、修学旅行の資金集め)

◆スウェーデンの学校での政治の教え方

・資料批判教育、中立の徹底、政党ロールプレイ

・学校選挙:4年に1度の国政・地方選挙に合わせ実施、18歳未満を対象にした模擬選挙、生徒会が自主的に実施、実際の選挙で使われる投票用紙、投票箱を使い結果も公表、政治家・政党青年部を招いた政党ディベート大会も学校で開催

◆社会に影響力を発揮するスウェーデンの若者団体

・生徒組合、若者協議会、学生自治会、趣味でつながる全国組織、政党青年部

・若者協議会:議論の内容を決めるのは若者、理事会はネット選挙で、政治家・行政へ提言

◆スウェーデンのユースセンター

・交流と出会いの場、13歳から25歳が対象、290の自治体に1500施設、全国で3700人の職員

・開放性(会員証の撤廃、無料)、自由(プロジェクト活動、集団より個人、施設運営に参画)

◆ユースワークとは

・居場所と参画(若者が自分の生活や人生に関するあらゆることを意思決定できるように支援し、権利を保障する活動。活動や機会が若者のためで、若者と共にあること)

・余暇である:義務的な時間からの解放=主体的、無目的=成長、教育、学び、自立は副次的

・民主的である:若者の影響力の発揮につながる、若者団体やサークル活動が結果的に盛んに

◆スウェーデンの若者政策の特徴

・人権保障、人生の前半期でかかる費用を限りなくゼロへ、若者の社会参画の結果としての影響力を目標に、若者は社会の問題でなく資源、若者団体への助成金が目玉政策(金は出しても口は出さず)、若者団体と若者政策を作る

◆スウェーデンの若者の社会参画の考え方

・あらゆる人が参画できる社会の実現、影響力の発揮できない社会参画ではあまり意味がない、生活に根付いた民主主義、学校・仕事と同等に尊重される余暇の時間・空間、移行期を手厚く支える若者政策と市民社会への投資

学校選挙は実際の候補者を対象に投票するそうで、18歳未満の投票結果が示されることには驚きました。さすが「デモクラシー」が日常のことばで、世界で最も若者が幸せな国。