自然エネルギー&市民電力 ドイツ・デンマーク視察 (ドイツ編その3)
エネルギーの丘、ハンブルグ・エネルギー
エネルギーの丘
ハンブルグ市街から車で30分ほどのところの小高い丘。
第2次大戦後、戦災がれきが捨てられ、1979年までは、精銅工場などの化学工場の廃棄物も積み上げられていた。
その後、公園整備計画が持ち上がるも、化学廃棄物の発酵ガスが発生し、その処理を行わざるを得なかった。水たまりからダイオキシンが検出され、閉鎖し、化学物質が雨で外に出ないように2mの厚さのコンクリートで覆った。
2004年、環境省が風車を3基建てた。
2006年7月、国際建設博覧会が開催されたことをきっかけに、風車をどう使うかが検討された。
2011年 情報センターを建設、公開し、エネルギーセンターとして活用することとなった。
負の遺産を価値あるものに変えたという点からも、世界的に注目されている。
ハンブルグ・エネルギー
2009年5月、ハンブルグ州の直営の民間会社としてハンブルグ・エネルギー社を設立。当時、ハンブルグ州に電力供給をしていたバッテンファール社が石炭発電所を建設しようとしていた。みどりの党がこれを止めることを公約にしていたが、許可が下りてしまった。そこで、州のエネルギー政策を変えようとし、エネルギー政策会社として州が直接関与できるこの会社を設立した。
2009年9月から、石炭、原発以外のエネルギーを市場で買い、市内外の企業、個人に販売。利益を再投資し、風力や太陽光により発電量の半分を地域内で賄うことを目標にしている。これにともない地域内の雇用が創出され、当初30名の職員だったが、風車の製造や風車設置のコンクリートの基礎工事、環境調査などの関連企業を含め、180名の雇用に結びつき、地域の経済が活性化している。
2009年12月、ハンブルグエネルギーソーラー社を設立、エネルギーの丘に太陽光パネルを設置し、太陽光発電を始める。市民が出資し、年6%の配当と10年での出資金の返還を予定している。現在の顧客は10万人、供給量125kwh(1.5億メガワット)(供給可能量3億メガワット)で、州の施設や企業にも供給している。
2010年 州の浄化センターに建設した風車による発電も開始。
2011年 太陽光が10メガワットの発電量(3300~3900世帯分)となり、ハンブルグ州の排水浄化設備で発生するガスの販売も開始。
2011年11月 エネルギーの丘の風車を更新し、高さ140mの風車を建設。750万kw(約1700世帯分)の発電量がある。
エネルギーの丘の風車の設置は、地下が廃棄物のため、メタンガスなどの発生の可能性があり、基礎の深さが問題だった。そのため、風車の重みに耐えられるようにガラスペレットを入れ、基礎を作った。
他の地域の電力会社とはさまざまな協力関係にある。他の州に風車を建てる時の土地取得時には、風力発電に投資したい企業が組んで出資したり、技術協力を行ったりしている。
供給量は2011年4月(フクシマのすぐ後)最大となった。州内の企業への供給が1番多いが、州の企業のため、州に親しみのある市民が多く顧客となっている。
発電量の半分を州内で賄うという計画が未達成であるため、現在の風力、太陽光に加え、木質バイオマス、地熱に加え、港の風車にも期待している。木質バイオマスは、国内の林業を持続可能にしていくうえでも有効だ。さらに、供給の平準化のためにコジェネレーションやバイオマス、供給と個々の需要管理により料金設定を変更するためのスマートパワー、スマートメーターを活用する。これからも基本的に、自立して利益が出るプロジェクトにしか手を出さない。さらに利益を地域内で再投資していく。