自然エネルギー&市民電力 ドイツ・デンマーク視察(デンマーク編その1)
2月3日から10日にかけ参加した、生活クラブ生協首都圏4単協主催のスタディーツアー、ドイツを後にし、デンマークに向かいました。
デンマークは、半島と島からなる国ですが、半島にあるデンマーク最大の都市コペンハーゲンを離れると、ほどなく畑と牧草地帯の農村が続きます。マイナス10度を下回る寒さで、さすがに牛の姿は見えませんでしたが、都心を離れるほど風車が増えていきます。
そのデンマークの小さな島、人口4000人のサムソ島は、100%自然エネルギーによってエネルギー需要を賄う地域として世界的に知られています。1985年に原発の導入を廃止したデンマークは、風力発電を中心とした代替エネルギーへの移行を早くから模索してきました。1997年、政府は島における自然エネルギー導入計画を公募し、それに参加したサムソ島は、エネルギー100%自給を目指すモデル地域として取り組みを始め、10年かけてそれを実現させました。さらに、2030年までにフェリーや自動車・農業機械も含め化石燃料ゼロを目指しています。
デンマークでは日本の消費税に相当する付加価値税が25%とかなり高いため、消費にあたっては常に本当に必要かどうかを考えることが現地の人々の習慣になっているようです。エネルギーについてもその例外ではなく、自然エネルギーによる創出とともにエネルギー全体の節減と効率化を図っています。
以下、サムソ島での取り組みを紹介します。
<省エネ>
条例で家を新築する際は低エネルギーハウスとすることとなっている
・蓄熱効果を利用した壁
・すべて有機資材を使用
・雨水利用(水は船で運んでくるため貴重)
・100㎡のソーラーパネル、100㎡の温水パネル 等
<自然エネルギー発電>
陸上風力発電
・島内で1000kWの風力発電が11基稼働(総発電量は2500万kWh/年)し、これだけで 島内の全電力需要が賄われている。
洋上風力発電
・サムソ島の南部沖合3.5km、水深20mの海域に2300kWの風車が10基稼働し、7500万kWh/年の電力を供給(風車組合所有2基、会社共同所有3基、自治体所有5基)
・これは島内の運輸交通部門における需要エネルギー量の115%に匹敵する。(発電された電力は海底ケーブルで島外へ売電される)
太陽光発電
・売電収入の50%が税金となるため、売電するより自家消費したほうが効率的で、あまり大きく設備投資しても採算が取れない。
<エネルギー利用の効率化:地域熱供給プラント>(サムソ島内の4ヶ所で地域熱供給を実施し、熱需要の約75%を賄っている。)
藁ボイラーによる地域熱供給プラント
・約260世帯(=オーナー)へ温熱を供給(温熱は90℃で供給)
・藁は農家より購入され、農家にとってもメリットとなっている。
・藁は600kgのブロックで冬は17~20個/日(夏は7~8個/日)使われるが、自動運転のため作業員は冬1日2回、夏は1回の作業・点検のみで、灯油に比べコストは1/6程度で済む。
・熱効率は20~30%程度のロスが出るが、燃焼灰はリン・ミネラルを含み畑へ入れることで、肥料の10~15%を削減する事ができる。
木質チップ+太陽熱パネルによる地域熱供給プラント
・220世帯(=オーナー)へ温熱を供給
・木質チップは島内の雑木林の手入れの際に伐採した枝を加工
・夏は太陽熱パネル(250枚)だけで間に合っている。