こどもにやさしいまちづくり「地方自治と子ども施策」~全国自治体シンポジウム~その2
子どもも大人も包摂する市民と行政の協働~大阪府豊中市~
豊中市といえば、生活困窮者自立支援事業の就労支援に丁寧に取り組んでいることで全国的にも有名だ。企業等との連携により定着支援や体験実習等を組み込んだ丁寧なマッチングを行うとともに、受け皿となる中小企業の支援も行っている。そんな豊中市は庁内の横断的な組織である子ども未来部を持ち、子育ち支援も進んでいる自治体だ。
丁寧な市民参加での条例づくり
2013年に施行された「豊中市子ども健やか育み条例」は、子どもの人権尊重、子どもの最善の利益、子供の意見表明の機会、子育てと子育ちの支援を柱としている。
その策定過程において、保護者や支援団体へのヒアリングはもちろんのこと、当事者である子どもへのヒアリング(子どもワークショップ、高校生・はたちの集い委員・外国にルーツのある学生・ひとり親家庭の学生へのヒアリング)が丁寧に実施された。
2015年にはこの条例を実行するための5年間を計画期間とする「こどもすこやか育みプラン・とよなか」を策定。
市民に「行政がこんなことに困っている」という情報を持っていき、多くの市民がプロセスに参加したことが、様々な意見を市民同士が戦わせ調整し、新たな子育て支援の事業が生まれるという効果もあった。
価値観の違う人との交流=共生の始まり=自治の政府
豊中市協働事業市民提案制度を活用し、外国人親子を支援する国際交流ボランティアグループが提案しスタートした協働事業は、市立図書館の除籍本をリサイクル販売し、その収益で常設のリサイクル本販売コーナー兼コミュニティカフェを運営。その後、市立図書館、公民館、保健センター、コミュニティー政策室、環境政策室、減量推進課、国際交流協会、地域の商店街やNPOなど18団体の協働事業に発展。図書館が障がい者、外国人、主婦、失業者などにとって貴重な「社会との接点の場」となっている。社協の配色サービス団体とも交流し、一人暮らし高齢者の配食サービスにエスニック料理が出るようになったなど、価値観の違う人との交流が共生の始まり、ひいては自治の政府につながるのではないかとの可能性を感じる。
子育て支援を強化すると孤立化が進む
子育て支援機能の強化だけでは、当事者以外は無関心となり、子育ての孤立化は防げない。社会全体で子どもを育む環境づくりが必要。
これまでの「公」「民」役割分担から自治のしくみづくりへ
他者との調整を「公」に丸投げするお任せ民主主義の浸透により、市民は不満・不信を募らせることが繰り返されてきた。地域社会を構成するあらゆる主体がどのようにかかわり合っていくのかを共に考え、合意形成する、「公」と「民」と「私」の連携による自治の仕組みづくりが必要。
求められる共生の地域づくり
地域社会全体で子どもを育むしくみを構築するためには、家庭や社会環境が変容している中、行政の対策的発想のみでは対応不可能。支え合いの大切さを共有し、ともに暮らす地域づくりが必要。
市民が持つ3つの顔、サービスへの意見を表明する権利者、サービスの在り様を決定する責任者、連携・協働する同伴者を組み合わせることが必要。
多世代、多様な関係と役割が循環する「共生の地域社会」が求められる。
これからの自治体のありかた
公共サービスを提供する主体であること+多様な公共の担い手をコーディネートする役割
そのためには、情報公開・共有のもとに、市民が合意形成・進行管理・評価・改善というトータルコーディネート機能をもつことが重要
これからの課題解決のキーワードが、多様性、多世代、共生ということに同感だ。これらは子育てなどの限られた分野や日本という国だけでなく、すべての分野や国において共通するとともに、急速になくなりつつあり、今もっとも必要とされているのではないだろうか。