JK産業と少女たち~女性性の危機はなぜ繰り返されるのか~
すべての少女に衣食住と関係性を 困っている少女から搾取しない社会へ
仁藤夢乃さんは、自身の経験からColaboを立ち上げ、夜間巡回(アウトリーチ)による相談と同行支援、食事提供支援、自助グループの運営、大人たちに現状を知ってもらう啓発活動などを行っている。困っている少女が夜間駆け込める場所も用意した。以下、仁藤さんの講演会について報告する。
★衣食住と関係性をなくした子どもたち
孤立し、不登校、中退、自殺、貧困、妊娠・中絶、近親者からの性被害など、複数の問題を抱えている中学生や高校生がいる。ここでいう「衣」は、身を守る術であり、「食」は、今日食べる物、食べていくための職、食卓を囲む機会や一緒に囲む人、「住」は、安心して過ごし眠れる家、帰りたい家、「関係性」とは、自分のホームとなるかかわり、つながりのことを意味している。
★支援をする中で見えてきたこと
行政の支援は、大人が理解できるように話せなければ話すら聞いてもらえない。
○児童相談所では
開所時間はほとんど17時までだ。Colaboに相談に来る人たちの困りごとが起こるのは、18時から28時。土日は対応してもらえない。
売春や家出などの問題行動がある場合には保護してもらえないことが多い。自殺未遂など精神的に不安定なら病院へ、非行は警察へと言われることもある。また、家庭での虐待を抱えているケースでは、児童相談所を動かさないとどうにもならない。
しかも、通告するだけでは様子見や保護に至らない処理になることがあり、理解者や専門家が伴走する必要がある。さらに、一時保護所でも体罰のようなことが行われるケースもあるうえ、学校に通えないということも起こる。
○警察では
近親者からの性的虐待があっても、まず児童相談所にと言われる。夜間に相談に行っても子どもの保護や宿泊はさせられないため、帰るところがなくても帰される。または、虐待の加害者が保護者であっても保護者に引き渡される。さらに児童本人が被害を詳細に訴えなければならない。
○医療機関では
お金・保険証が必要だ。精神科でも虚言やポーズとしての自殺未遂、暴れる場合などは入院を断られる。路上売春しながら精神科に通う少女もいる。入院していても外泊許可で帰宅するたびに性病にかかるなど発見しても、児童相談所に通報されないケースもある。
○学校では
行政の教育相談室やスクールカウンセラーが、相談内容を家庭に伝えるケースが多発し、本人からの信頼を失っている。
「いのちの電話」で電話代が月5万円のケースもある。匿名性の良さはあるものの、具体的な解決につながっていない。相談窓口の紹介だけでは見捨てられたと感じることもあり、同行し相談窓口へ行き、教員も一人で抱え込まないことが大切だ。
★JKビジネスに少女はなぜ取り込まれるのか
2013年時点で200店舗、推定5000人の女子高生が取り込まれている。
家に居場所がない、食事をするお金がないなど、困っている中高生に街やネットで声をかけるのは、助けてくれようとする大人と、搾取しようとする大人の2種類だ。
違法な店に学生証や保険証を出させ、何かあったら脅されるのではないかと不安にさせる。売春や危険な風俗のスカウト、JKビジネスといわれるマッサージや散歩から危険な道にいつのまにか入っていることもある。しかし、寮があり、初めて自分が必要とされていると感じられるなど、そこから抜け出せない環境も整えている。
買いたい大人と売りたい大人間の需要と供給。未熟な子ども・弱い立場の少女を商品化し成立するビジネス。衣食住と関係性をすぐに提供できる組織化・マニュアル化されたビジネス。少女たちを担い手として、役割、やりがい、仕事をつくり育てる。
補導した少女の携帯に買春者とのやりとりがあっても捜査すらされない。少年同様、家族・職場に連絡の上、注意指導が必要だ。性犯罪は証拠の残らない犯罪。知的障がい、発達障がい、貧困家庭の子を狙った組織も存在する。少年たちも居場所がなく、振り込め詐欺や売春の斡旋、原発作業員や建築工事の現場作業員などに取り込まれる。
◇何が必要なのか
本人だけでアクセスし、支援につながることは難しい。専門機関が虐待や性暴力に対する正しい知識を持つとともに、解決へとつなげるためのアウトリーチによる相談と伴走支援が必要だ。子どもたちにとって必要なのは、特別な支援ではなく、ご飯を食べて、お風呂に入って、安心して眠れる当たり前の日常なのだ。
教えるのではなく、共に考える。ただ、勧めるのではなく、共に体験する。完璧な人間であろうとしない、ありのままの自分を見せてくれる大人をこどもたちは求めている。