選挙に勝つ「力」-なぜ沖縄県民は希望を失わないか
7月末、沖縄県議会議員仲村未央さんから、沖縄の現状を伺った。
民主党政権時代、公約としていた普天間基地の県外移設を反故にされたときから、沖縄県民は一致団結した。2014年12月の衆院選、2016年7月10日の参院選でも現職の自民党議員を落選させた。
そんな沖縄への報復とでもいうことなのか。翌11日には、オスプレイが離着陸訓練を行うヘリパットの建設予定地の高江という小さな集落に、全国から500名の機動隊員が配備された。ヤンバルクイナなど希少種がすむヤンバルの森がある自然豊かな静かな地域だ。機動隊は県道を封鎖し、検問を行い、県民が使っている監視小屋を破壊した。国民のための警察組織であるはずの機動隊が、米軍のために動く。すでに実質的な緊急事態条項が発令されている。
県内には6つのヘリパットの建設が予定されており、すでに2つ稼働している。オスプレイは機体の大きさに比べ、羽が小さいため、特に降りてくるとき、暴風、爆音、低周波があるだけでなく、摩擦熱で草が焼ける。また、夜11時まで飛ぶことが許され睡眠障害を訴える住民もでている。
- 米国への体裁
・「辺野古新基地建設」が目的化、「普天間基地の返還」は二の次になっている。
・「緊急事態条項」の先取り=地方自治の圧殺、政治の機能不全
・辺野古⇒承認取り消しで法的権限を失う中、陸上工事に踏み切る。埋立工事との関連は否定。米軍属による女性暴行殺害事件時に設置された防衛省の防犯パトロール70名はすべて高江の警備に投入されている。
- 県民の目に映る基地問題
・戦後71年間、収用され続ける郷土。返還はどれも県内移設条件付き。使い勝手の良い最新鋭施設へとリニューアルされ、固定化される。
・焼かれた山。撃ち込まれたまま回収されない砲弾。米軍に原状回復義務なし。復帰後43年間の原野火災574件、焼失面積3,680㎡。
・ロープを張られた海。日米合同委員会で一夜にして臨時制限区域に。海上保安庁に締め出され、日米地位協定による刑事特別法の対象に。ジュゴンが食べる草やサンゴは巨大コンクリートブロックの下敷きに。
・米軍構成員の犯罪。復帰後の検挙数は5,862件。殺害97人(うち、強姦殺人22人)、強姦321人、交通事故死者202人。裁判権もなく泣き寝入り。
・日米地位協定。県民の人権より米軍人の特権・保護優先。身柄は起訴まで米側が保有。排他的管理権の下、環境汚染も把握できず。免税特権、入国管理の免除。改定要求すら掲げない日本国。
・地元に徹し、真実に迫る報道を怠らない地元メディア⇔ほとんど取り上げない本土の大新聞
- 硬直しない県民の闘い
・民主主義をいかに機能させ発展させられるか。求める価値の普遍性(人権、環境、自治、平和=日本国憲法)→希望につながる営み
・闘いの中で大事なこと
県民主体/硬軟(難しい議論ばかりでなく、楽しめる集会も)/議場内外における政治の実践/慌てない/屈しない
- これまでの実践の一端
・埋立承認に対し⇒県議会における仲井眞知事不信任の決議、辞職要求。説明するための臨時議会や百条委員会を設置。
・県知事選⇒承認撤回、辺野古新基地建設阻止を掲げる翁長新知事の誕生。
・現場での抵抗⇒県民あげての現地闘争、分担を組織的に行い県内外からの支援を呼び込む。
・抗議集会⇒定例、突発いずれも継続は力。
・県議会への陳情⇒市民運動、環境団体が強みを発揮。審議過程で行政と共通認識を持つ。
・意見書・決議⇒陳情審査を通じ県の対応を促す。県議会の意思表明。オスプレイ配備に反対する意見書も沖縄県議会、県内の全市議会から提出。
・県民大会⇒県議会実行委員会が主催。県民主体の意思表明。連帯。教科書問題など。
・条例制定⇒議員条例の制定(埋立土砂持ち込み規制)。辺野古の埋め立ては8割が持ち込み。外来生物の持ち込み禁止を使い、世論をつくり、参考人招致で語ってもらい、県民に報道。
・裁判闘争⇒県知事、県庁、専門家による論理構築、主張の展開。
・選挙⇒争点の明確化、論戦、運動としての政治の集大成と位置づけ。
「沖縄県民は本土に住む人と同じように、日本国憲法の基本的人権を守ってほしいだけ」という仲村さんのことばに、「他人事」と思っている私たちの心の内を見透かされたように感じたのは私だけではないはずだ。なぜ、沖縄だけこんなに犠牲になり続けなければならないのか。沖縄のこと、福島のこと、日本国憲法のことを自分のこととしてとらえ、活かしていくことをしなければ。