~子どもの本音にむきあいたい~子どもの貧困問題とソーシャルアクション

内閣府HPより  当日は子どもの貧困対策センター公益財団法人「あすのば」で活動している方からの報告もありました

東京社会福祉士会主催公開講座、東洋大学社会学部森田明美教授の講演について紹介します。

 

〇なぜ子どもを貧困から救わなければならないか:子どもの貧困の放置は社会的なリスクになる

 

〇日本の子どもの貧困は相対的貧困:絶対的貧困ではない⇒自分が貧困であるという自覚がない

 

〇子どもの貧困を高くする要因

1)母子家庭の平均年収223万円(うち、就労収入181万円)⇔父子家庭の平均年収455万円

2)所得再分配機能がOECDで最低

3)別れた親からの養育費の取り決めが37.7%、実際の支払いは19.7%

 

〇子どもの貧困対策の制度設計

1)子どもの貧困対策の推進に関する法律(2013年)

2)子供の貧困対策大綱(2014年)⇒社会的認知により、子ども食堂や学習支援の急増

3)児童福祉法の改正(2016年)「児童の権利に関する条約の精神にのっとり」子育て世代包括支援センター、児童相談所特別区・中核市設置、里親委託促進、 卒所後22歳まで支援継続

 

〇子育て家庭の役割と親自身の自己実現のバランス

1)家計の確保に力がとられ、子どもの後見も不十分

2)親自身の自己実現が不安定で社会とのつながりが薄い

 

〇子どもを支える支援

親の養育と子どもの成長・発達する力で子どもは成長していくが、それを補足していくのが社会的支援

1)親・家族から主体的に生きる力を受けにくい⇒新たな居場所、交流の場での斜めの関係、意味ある大人の存在

2)世帯により”支えられ格差”が拡大⇒アウトリーチ、居場所、話を聴いてくれる人、地元で直接支える市民

 

〇子どもたちが抱える家庭との確執

1)虐待の増加

2)貧困化

3)地域環境の悪化

4)ひとり親家庭の増加など家庭の多様化

○家庭との確執を変えるために

1)子ども自身への支援と子育て支援の意識化の必要

2)地域における両立支援と福祉対応のバランス

3)多問題家族への総合的な支援体制

4)正しい実態の認識と対応ができる職員の育成

 

〇自己肯定感の形成不足の背景(=肯定的体験・肯定的関係の少なさ)

家庭:虐待、DV、崩壊

学校・地域:体罰、いじめ、痴漢・性犯罪→暴力容認、人権軽視社会→コミュニケーションの否定⇒孤立・ひきこもり

 

〇子どもの貧困問題はなぜ解決に向かわないか

1)子どもの声が届きにくい⇒共感し、聴き取る努力・方法の開発

子どもの話は聴いてもらえない、聴く場や聴く力のある人がいない、声を出す機会がない

2)貧困や家庭の問題はみえにくい⇒意味ある大人との出会いと伴走

周囲にわかりにくい、子どもや周囲に隠される、知らされない、貧困や家庭の問題の自己責任を追及されることを恐れ言わない

3)福祉問題を抱える人は支援につながりにくい⇒誰もが利用できる場、支援者の専門性と共感性

責任を問われることから逃げたい、連絡を取りたくない人に知られる危険、これまでのことを否定されることへの恐れ、支援してもらえるかわからない、制度  がわかりにくい

4)福祉施策は利用しにくい⇒誰もが利用できる施策からつなぐ人としくみ

支援対象なのか厳しく選別される、利用しやすい場所に施設がない、申請書類が難しい、必要な費用が用意できない

5)子ども施策の効果は見えにくい⇒評価のための調査、当事者参加の評価・検証

効果が出るまたは関係性ができるまでに時間がかかる、当事者の必要性に合わない、当事者の意識や必要な段階とずれた支援が行われる

 

〇子どもの貧困を断ち切るための支援に求められること

1)目的:「施しを受ける」からの転換=「主体的に生きる」意欲を支え暮らしを取戻し市民として生きる機会をつくる、誰もが利用できる場での発見する相談、支援臭のない専門的支援

2)内容:重層的・総合的・継続的支援⇒行政、普遍・固有的支援の連携、市民との協働

3)方法:意味ある大人との出会い⇒対話成立⇒自己肯定感向上⇒生きていていい⇒回復⇒市民力

 

〇今後の自治体施策に求められること

予防・回復支援により子育て世帯の地域での暮らしを支える

 

キーワードは「意味ある大人」「支援臭のない支援」「市民力」でしょうか。どんな子も利用でき、定期的に続ける、大人が楽しむこと、「いつでも話を聴く」と「あなたに寄り添う」メッセージが大事ということでした。