~特別の教科 道徳~
今年度より小学校で道徳が教科化された。“教科化”により何が変わったのか。現職の小学校教員の方からお話を伺った。
★特別の教科の意味
各教科の学習指導要領において、各教科に道徳的な学びを取り入れることになった
★非科学的な筆頭教科と科学的な各教科
各教科は科学的な学問に基づいているが、各教科は科学的な学問ではない教科に付随するものという位置づけという矛盾
★非科学的な教科であるにもかかわらず、教科書があり、使わなければならないもの
・子どもにとって、教科書は絶対正しいもの
・非科学的な教科にもかかわらず、教科書検定に合格した教科書には正しいとする考え方が記載されている。自己採点欄があるものも
⇒その考え方と異なる児童には指導を行う
★特別の教科道徳の指導方法・評価(道徳教育に係る評価等の在り方に関する専門家会議報告)
〇指導方法:学校や児童生徒の実態に応じて問題解決的な学習など質の高い多様な指導方法を展開する。
⇒本来、指導要領で指導方法は大枠のみ示されており、教員が決定する。しかし道徳の指導要領では、アクティブラーニングに限定
〇評価の基本的な考え方
児童生徒の側から見れば、自らの成長を実感し、意欲の向上につなげていくものであり、教師側から見れば、教師が目標や計画、指導方法の改善・充実に取り組むための資料
〇評価にあたって求められること
・数値ではなく、記述式とすること
・個々の項目でなく、大くくりなまとまりを踏まえた評価とすること
・比較ではなく、児童生徒の成長を励ます個人内評価として行うこと
・多面的・多角的な見方へと発展しているか、道徳的な価値の理解を自分自身とのかかわりの中で深めているかを重視すること
・道徳科の学習活動における児童生徒の具体的な取組状況を一定のまとまりの中で見取ること
〇評価の方向性
・児童生徒の学習状況や道徳性に係る成長の様子について、一面的な見方から多面的・多角的な見方へと発展しているか、道徳的な価値の理解を自身との関わりの中で深めているかという点に注目し、特に顕著と認められる具体的な状況を記述
・児童生徒が一年間書きためた感想文をファイルしたり、年間35時間の授業という長い期間で見取ったりするなどの工夫が必要
・各教科の評定や出欠の記録等とは性格が異なるものであり、調査書には記載せず、入学者選抜の合否判定に活用することのないようにする必要
★教材会社の提供する評価しやすい定型フォーム
・フォームに従って一人ひとりの傾向を選択していくと、簡単に効率よく評価結果ができあがる。特に若い教員は導入に抵抗がないケースが多いらしい。費用は教材費として集金
★多摩地域の状況
・多摩地域では多摩教育事務所という教育長のシンクタンクの役割を持つ機関があり、その指導(所報たまじむ)が大きな影響力を持つ
・評価については専門家会議報告が「大くくりなまとまりを踏まえ」としているのに対し、「関連のある内容項目のまとまりを評価の枠組みとして」と項目ごとの評価に近い考えを示している⇒例えば敬愛という大項目について感謝、礼儀、家族愛を枠組みとして評価するなど、〇か×かという評価になりがち
教科書をみてほしい。中学校で平成31年度から使用する教科書見本が各自治体の図書館などで展示されているはずだ。何れの教科書も、小学校ほどではないが、“答えを導くような”作りになっているはずだ。
道徳教育は、“社会にはいろいろな考え方の人がいる”ことを理解するためのもののはず。今回始まった道徳教育により、寛容さが今以上に社会から失われることになることは想像に難くない。元文科省事務次官の前川さんが、なんとかこの“大くくりな評価”にとどまるように動いてくれたようだ。しかし、多摩地域の学校ではそうはいかなそうだ。
まずは、多様な意見が保障されているか、地域の学校の道徳の公開授業に参加し、授業アンケートに意見を記載すること、保護者であればこれに加え、年1回実施される学校アンケートに意見を記載することに取り組もう。
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