あまみず社会 ~グリーンインフラのまちづくり~

杉並区の「善福寺川を里川にカエル会」会長、九州大学の島谷幸弘先生の講演会について紹介します。

あまみず社会研究会HPより

★あまみず(雨水、天水)社会とは

雨水は貯留や浸透で、一挙に地下や川に入れない分散型の水管理、水と緑による有機的な社会 文化やライフスタイルとして取り扱いながら、分かち合うことが大切

 

◆都市の水問題

・水の非自立、水害、渇水、震災時の水不足、環境の劣化、ヒートアイランド

・社会的な課題 うるおいがない、水のコミュニティ消失、生き物と触れ合えない、遊べない

・社会的根本原因

①不可視⇒あまみずは地下に潜る⇒水の循環を意識しない生活

②縦割り管理・学問:森林、ため池、河川、上水、下水、公園、道路⇒しかもそれぞれの分野では前提となる考え方が異なる⇒河川の安全度は上がっても下水から氾濫

③これまでの取り組みの限界:従来手法は大きな整ったシステムであり、不確実性への対応、規模拡大は困難 人口減少の中、維持管理コストを維持できるか、総合治  水は新規開発地のみ、既成市街地での成功例はない 単目的で広がらない

 

◆都市の雨水社会

・治水は浸透が基本⇒良好な緑を増やす(落葉樹林が最も浸透) 地域を守るコミュニティ治水

・日常水として雨水活用 災害用水にもなる

・あらゆる場所で浸透、貯留穴あき雨水タンク 樋からの雨水一定量は貯留、それ以外は浸透させる(ゲリラ豪雨で河川氾濫の被害を受けた町田市では、市民が自宅の樋を切る活動を地域で実施 1本切ると10%程度の流出抑制)

 

★グリーンインフラ

・雨水管理のアプローチとしてアメリカで1990年代の半ばに提唱2000年代ヨーロッパでも

・生態を活用した災害リスク軽減策が世界的に注目され始める(Eco-DRR)

脱温暖化 CO2削減、ヒートアイランド減少
洪水対策 雨水貯留による洪水抑制
環境対策 生活の質向上、健康増進、大気・水質浄化、生物多様性の保全
食料の安定供給 生態系の安定性
経済的価値 不動産価格上昇、安価
  • これまでのしくみをインフラとして考えていく

森、林地、里山、多自然川づくり、魚道、湿地再生、有機農業、緑の屋根、緑の壁、レインガーデン、再生可能エネルギー、野生草園、雨水浸透施設、雨水植栽ます、生垣、緑の回廊、生物多様性豊かな公園、蜂の巣箱、干潟再生、ヨシ原維持、動物のためのオーバーパス

◆グリーンインフラとグレーインフラ

グリーンインフラ グレーインフラ
自然豊かな景観 自然の乏しい景観
多機能 単機能
参加型の取り組みが必要 必ずしも必要としない
標準化困難 標準化可能
効果発揮に時間がかかる すぐ効果を発揮する
大きな敷地 小さな敷地
気候変動などの影響 経済的影響、故障
環境負荷小さい 環境負荷大きい
維持管理コスト安い 維持管理コスト高い
規模拡大コスト小 規模拡大コスト大(全体作り替え)
持続可能 減価償却

ただし、グリーンインフラとグレーインフラは連続的であり、ハイブリッド化が課題

  • ヨーロッパ

○2013年からEU政策でグリーンインフラ戦略、EU全体の生態系サービス28~40兆円/年

○気候変動による豪雨、生物多様性の危機⇒食料の安定供給、きれいな水、安定した気候、洪水の抑制

○自然資本をこれ以上劣化させない⇒CO2の固定化、蒸発散によるヒートアイランドの防止、大気汚染の抑制、健康増進、不動産価値の増加

 

  • アメリカ

○都市の雨水管理システムをグリーンインフラに変え、湿地帯の復元

○道路排水を川の手前の緑地にいったん浸透させ、浄化してから川に流す

○ニューヨークでは地域団体に助成し、地域で30ミリを貯める

○商業用駐車場はグリーンインフラに、道路を舗装禁止にし、グリーンルーフ減税導入

 

日本でも、校庭の人工芝の下での貯留や、都心のビルを建て替える際のグリーンインフラ、あまみず科学センターや、あめにわ憩いセンターの設置により、あまみず社会の普及と実践・実験が始まっています。清瀬でも保全を進めている雑木林を“グリーンインフラ”として活用し始めています。自宅や地域でも、自然の恵みである“あまみず”を貯め、活かす取り組みを広げていけたらと思います。