包括的性教育の視点から問い直す学校のあり方

出前プレーパークにて
学校における包括的性教育を進める必要があるけれど、そもそも学校における人権教育の基盤がないと本来の包括的性教育は難しいのではないか。
こうした問題提起をされている「生活と自治」のイケダンゴ先生でお馴染みの中央大学文学部教授で教育学専攻の池田賢市さんの講演を紹介します。
◇学校が想定する子ども観
・世界人権宣言26条 the right to education:本来の意味は「教育へ向かう権利」→「教育を受ける権利」と訳されているのは、子どもは受け身、施される存在という認識なのではないか
◇子どもの権利条約にみる子ども観
・子どもの権利条約 3条 the best interests of the child:interestsは興味や関心のあること→「子どもの最善の利益」と訳されているが、子どもの興味・関心に焦点をあてることが大事ではないか
・子どもの権利条約12条 views the right:考えていること、感じていることを示す権利 →「意見表明権」と訳されているが、生まれたばかりの子も泣いていることで感じていることを示しているのであり、それを受け止める(heard)ことが大人の義務のはず
◇性をめぐる教育における子ども観
・まだ早い、性の問題から遠ざけようとする
・性別によって支配しようとする文化
・ジェンダーバイアスを変えるのが包括的性教育
◇性教育のイメージ
・1992年にエイズが増加したことで性教育ブームが起きたが、純潔教育(女子のみ)へと向かう
◇ユネスコの包括的性教育
・生まれてから亡くなるまでの自らと他者を大切にできる行動を主体的に選択することができるための知識・態度・スキルを育むものであり、多様な人々の幸せな人間関係を築いていくための教育
- 人間関係、家族(多様な形)のあり方
- 価値観、人権、文化、セクシュアリティ
- ジェンダーの理解
- 暴力と安全確保
- 健康と幸福のためのスキル(ウェルビーイング)
- 人間のからだと発達
- セクシュアリティと性的行動
- 性と生殖に関する健康
・5歳~8歳、9歳~12歳、12歳~15歳、15歳~18歳以上の4段階で学ぶ
・外部専門家(医療関係者、カウンセラーなど)に性感染症、避妊法について科学的で正確な知識を学ぶ
◇だれにでもある差別に対する意識
・差別の温存:正しい理解がないまま、間違った情報に接すると鵜呑みにしてしまう
・考えすぎ論:差別というほどでないのでは?⇔当事者の苦しさと社会の問題を見えなくする
・被害者責任論:差別を受けた方に原因がある⇔社会に差別があることが問題のはず
◇マイクロアグレッション(小さな攻撃)
・無意識にちょっとした言葉、状況、特定の人や集団を標的とし、人権、ジェンダー、障がいなどに対し軽視または敵意ある否定的表現をする
・偏見、思い込み、ステレオタイプに満ちた世界観が反映されている
◇多様性の尊重:多様性が価値であることを認識する
・人や文化が多様であることの認識、そのためには歴史を学ぶことが必要
・意見が違うことがそのままでいいということではなく、さらに意見交換や意見調整をすることで意見が違うことの本質を知ることが大切
・マジョリティとは、何も考えなくてよい存在(自分は何者なのか意識することがない)
◇学校教育で行われている内容:どう生きるかを考えさせない教育なのでは?
・生命の安全教育:性暴力の加害者・被害者・傍観者にならないように(包括的性教育とはだいぶ違う)
・保健・理科:生殖が中心
講演では、学生さんたち若い世代は「生」のあり方、「どう生きるか」を求めていることや意見を出し合うことは上手だが、異なる意見があっても討議しない傾向があることも紹介されました。
