「学齢期から思春期」へ~各発達期でのつまづきを理解した上で未来の希望につなげるために

清瀬市子どもの発達支援・交流センター とことこ(市HPより)

清瀬市子どもの発達支援・交流センター“とことこ”は開設11年目を迎え、幼稚園や保育園への訪問相談・助言に加え、ペアレントプログラムも始めています。先日、センター主催の公開講座に参加しました。センターの医療相談を受けてくださっている多摩あおば病院の児童精神科医木村一優氏の講演を紹介します。

少々、専門的な内容となりますが、改めて発達とは何かを考え、特に自閉症については一人ひとりが正しい理解をすることで、誰にとっての生きづらさも解消できる可能性を感じる機会となりました。

★発達についてのさまざまな考え方

○分離―個体化モデル(マーラー):運動発達から心理発達へのアプローチ

・分化期(5~9ヶ月):母親からの身体的密着状態からの離脱

・練習期(9~14ヶ月):はいはい、自立歩行

・再接近期(14~36ヶ月):よちよち歩き、母親からの分離意識と分離不安、再接近期の危機を解決して心理的距離を見いだす

・個体化の確立と情緒的対象恒常性(36ヶ月~):母親の不在に耐えられるようになり、再接近期のような母親へのまといつき行動は影を潜める

 

○ピアジェによる発達段階の考え方

・感覚-運動期(~2歳)

自分の周りにあるものが自分とは関係なく存在する

これらのものは自分が知覚しないときでも存在し続けることを悟る

・具体的操作期(5歳から11歳)

演繹的推論でものを測定し、量の不変性を把握することができる

物質量、重さ、体積の基本的な規則を理解できるようになる

・形式的操作期(11歳~)

自分に起こったことや今起こっていることしか説明できなかったが、何が起こりうるかを推測

し、仮説―演繹的に実験を行うことができる

 

○対象の使用(ウィニコット)

・赤ん坊は世界(対象)が自分の万能的コントロール下にあると思っている

・赤ん坊は対象が自分の万能的コントロール下にないと気づく

・赤ん坊は対象を破壊(攻撃)しようとする

・対象が赤ん坊からの破壊に生き残ると赤ん坊は万能的コントロール下にない対象は、自分とは独立したものなのだと気づき、対象と現実的かつ創造的な関係を作ろうとする

 

○ひとりでいられる能力(ウィニコット)

信頼できる他者がいることにより、逆説的に一人でいられる

 

★発達段階と自閉症

○自閉症における分離

・自己と他者、主観と客観→養育者との関係を通して確立されていく

・自閉症の場合→養育者との交流がスムーズにいかない(受けとめられている実感が持てない)→自己と他者の混乱、主観と客観の混乱

・取り入れることと、投影することの深み・厚みがない(人との関わりが表面的に)→不安が消えない→分離の困難さ-青年期以降へ課題の先送りに(不安が多くなるとそれを隠すためにひきこもり状態や攻撃的になることも)

 

○児童期から青年期に:体の変化、対人交流の変化

 

○思春期の集団

・幼なじみから親友へ=興味関心の共有

自閉症の場合:そもそも他者に関心がないケース→共有自体困難

自身の興味は他の人も同じと思うケース→相手の態度に困惑→なぜ興味がないのかしつこく追及→つきまとい

対人恐怖のケース→相手のことを勘ぐりすぎてどうしたらよいかわからなくなる

 

○対人交流のつまづき:思春期の集団に入れない、ひきこもり、逸脱行為(非行)

自閉症の場合:相互交流がスムーズにいかない→不安を受け取ってもらえない→不安に耐えられない→不安を和らげることをしてくれない→迫害されていると感じる→ひきこもる→こだわり、空想による情緒の落ち着き→対人交流をしない

 

○ひきこもり

・いじめや対人関係のトラブルから回避した状態

・社会との接点が卒業などの環境の変化をきっかけに変化したことから陥る困惑状態

・敏感状態→無理に引っ張り出そうとすると不安定な状態に

 

○こだわり:同じことをすることにより落ち着く→不安が強いときはこだわりも強い

・不安からの防衛:相互交流を通して不安が和らげられない

・不安:迫害不安、自分が崩壊する不安へ

・敏感状態からの防衛

・やめさせようとする人は、自分自身を不安定にさせようとする人

 

◆可能性を信じて

・不安に触れ(原因をきいて)、ネガティブなものを見つめ、創造的なものに変えていく

 

思い込まず、決めつけず、一人ひとりきいてみることが人と関わる基本ということでしょうか。