子どもの貧困 現状からみる課題

子どもの権利条例の学習会にて報告者の皆さん(2017年)

「子どもの貧困」が問題になり、すでに10年以上経過しています。2014年には「子どもの貧困対策推進法」も策定されましたが、具体的なことはあまり進んでいないのが現状です。

相対的貧困は、毎日の衣食住に事欠く「絶対的貧困」とは異なりますが、経済的困窮を背景に教育や体験の機会に乏しく、地域や社会から孤立し、様々な面で不利な状況に置かれてしまう傾向にあります。東京都立大学教授で子ども・若者貧困研究センター長の阿部彩さんの学習会を紹介します。

 

☆子どもの相対的貧困率(*)

・2015年(13.9%)から2018年(13.5%)は好景気だったにも関わらず、低下せず

・20歳~24歳も17%

*相対的貧困:国民を可処分所得の順に並べ、その真ん中の人の半分以下しか所得がない状態

 

☆コロナ禍における最初のインパクト

・コロナ禍による月収の変化は低所得層で大きい

・ひとり親世帯では4割近くが離職・転職・労働時間の減少

・夫婦と子の世帯でも3割近くが就業状況に何らかの影響

・子どもの勉強時間が臨時休校1ヶ月目で、非貧困世帯では10時間減少に対し、貧困世帯では14時間減少

 

☆平時からの「子どもの貧困」の現状

・過去1年間に料金(電気・ガス・水道・電話・家賃・住民税など)の未払い・滞納があった子育て世帯の割合:ひとり親(三世代)平均17%、ひとり親(二世代)平均13%、二親(三世代)4%

・都道府県別では沖縄県、北海道が高い

 

☆二親世帯であっても1割強が「二人とも非正規」

・困窮層の3割が家計は赤字で借金をして生活している

・過去1年間で必要な食料が買えなかった経験:ひとり親(三世代)では35%、二親でも15%あり

 

☆子どもの「食」

・困窮層においては、食料さえもままならない世帯が7割、高校生ではほぼ毎日2食が12.5%、ほぼ1食も0.7%

・困窮層においては、ほぼ毎日摂取が野菜で55%、肉か魚で6割、果物で3割といずれも一般層より低い

 

☆子育て世帯の家計の状況

・食費19%、教育11%、光熱水費8.2%、交通費8.1%、通信費6.8%

・経済的な理由による行動:食費を切り詰める4割

 

☆学力と教育

・中学2年生の困窮層:5割近くが学校の授業がわからない、勉強机がない27%、自宅に宿題ができる場所がない17%、インターネットにつながるパソコンがない41%、オンライン授業を落ち着いて受けられる環境がない41%

 

☆遊び、友だち、孤立

・困窮層の放課後ひとりで過ごす割合:小学5年・中学2年10%、高校2年19%

・困窮層のいじめられた経験:よくあった・時々あった26.2%

 

☆貧困の連鎖の経路

・栄養不足、低学力、劣悪住居、いじめ、親の長時間労働、親の精神状況、自己肯定感の低下、孤立、ケアの不足

 

☆コロナ禍を「子どもの貧困対策」推進要因に

・給食の提供、子どもの生活保障、生活保護の運営の改善など

 

コロナ禍によって、平時からのひずみが拡大し、見える化されている今こそ、子どもが育つための環境を保障することに全力で取り組むべきです。