性的同意って何?~刑事司法をジェンダー視点から考える
欧州評議会の条約では「いかなる性的行為も同意の上でなければ罰せられる」という拒否モデルが原則です。さらにスウェーデンでは「確認の義務を怠ると処罰される」とされています。一方、「被害者にも落ち度がある」という強姦神話がいまだにある日本。ジェンダーに関する刑法の専門家で、国の男女共同参画計画にもかかわってこられた千葉大学大学院社会科学研究院教授の後藤弘子さんの学習会を紹介します。
★同意のない性的行為は性暴力(=性犯罪:しかし実際はほんの一部)
○権力についての無理解:自分がその場を支配できる権力を持っていることを自覚していない(女性であれば社会におけるジェンダー構造や伝統的な性別役割をお互い内面化しているため、その場を簡単に支配されてしまう)
=Noと言いにくい、「空気を読む」ことをよしとするのは権力者に有利なコミュニケーション
○相手を尊重するコミュニケーションの欠如:性的行為はコミュニケーション
相手は自分と同じ考えや感じ方をすることはあり得ないので、一つ一つ丁寧 に確認していくことが必要、相手を対等な人間として尊重していれば、一方的な思い込みを押しつけることはない→性教育の前に人権教育や自分の思ったことを言ってもいい教育が必要
★すべての性暴力は性犯罪(痴漢や盗撮も性暴力)
○性暴力被害者=性犯罪被害者(=支援を受けることができる)
★性犯罪被害者となるための超えなければならないハードル
○被害に遭ったことの認識、証拠の保全、被害届の提出、被疑者の特定・逮捕、被害についての詳細な説明、公開の法廷での証言→ハードルを越えたとしても加害者に対する教育的介入が不十分
★性暴力について考えるための基本的視点
○同意がなければ性暴力(同意は対等な関係を前提としている)
○性暴力は権力犯罪(暴力は相手を支配するための道具)
○性暴力や女性に対する暴力はジェンダー差別
★男性化された刑事司法(=女性の生が法に反映されていない)
○女性の少なさ(犯罪者、司法関係者、立法者)
○女性被害者・加害者に対する正しい理解の欠如
「被害者への一番の支援は、その人のできることを増やしていくこと」、また、「小さいときから、日常的に自分で選択する習慣を身につけることが、自分の意見を言えることにつながる」というお話が印象的でした。「沈黙は金」は権力者の都合です。ありとあらゆる分野にジェンダー差別があるという認識が必要です。