女性の権利を国際基準に!司法にジェンダー平等を!
1985年7月25日、日本で国連女性差別撤廃条約が発効しました。
日本では女性差別撤廃条約の批准に向けて、「国籍法改正」「高等学校の家庭科共修の実現」「男女雇用機会均等法の制定」の3つの改正が行われました。
国籍法が改正される前は、国際結婚で生まれた子どもが日本国籍を取得できるのは父親が日本国籍の場合に限られていました。1985年5月から母親が日本人の場合も日本国籍を取得できるようになりました。
家庭科が男女共通の必修科目になる前は、家庭科は女子生徒のみで男子生徒は技術科が必修科目になっていました。1994年4月から、「家庭一般」「生活一般」「生活技術」のなかから1科目を選択して学ぶスタイルに変更されました。
日本の労働基準法では、働く条件についての男女平等の規定がありませんでした。
そのため、男女雇用機会均等法が制定されるまでは、雇用や昇格その他あらゆる待遇の面で、男女差別があるケースが数多くありました。1985年5月に男女雇用機会均等法が制定され、1986年に施行されました。
7月25日を「女性の権利デー」とし、開催された女性差別撤廃条約実現アクションによるパネルディスカッションを紹介します。
○最近の夫婦別姓訴訟:弁護士 川尻恵理子氏
裁判における多数意見では夫婦別姓は違憲
・同姓にすることは婚姻の制約にはならず、国会で決めるべきことというのが多数意見の趣旨
・しかし、国際的には氏はアイデンティティの主要な要素であり、自己の氏を選択変更する権利を干渉されないことは当然の権利であることが明確になっている
○女性差別撤廃条約とは:国連女性差別撤廃委員会委員 秋月弘子氏
条約の中心理念:完全平等をめざし、固定化された男女役割分担意識の変革
- 法の上での平等+事実上の平等
- 個人、団体、企業による社会慣習・慣行の中での差別の修正、廃止をも求める
- 事実上の平等を促進することを目的とする
暫定的な特別措置*をとることは、この条約に定義する差別と解してはならない
*暫定的な特別措置:一定数の女性を割り当てるクォータ制など
○司法界のジェンダー平等がなぜ求められるのか:早稲田大学 石田京子氏
①法曹界の女性比率(2020年)裁判官27%、検察官25%、弁護士19%
②司法制度や法律への満足度:男女とも4割程度だが、女性<男性
司法のトップを含めた構成が、社会の構成を反映したものであれば、司法機関は正当なものと認識され、すべての人に平等な正義をもたらし、法の下の平等を守ることができるとみなされるはず。
学生の男女間のキャリア選択の違いは、性別による好みの違いだけでなく、司法の場における認識や誤解によっても引き起こされる可能性があるため、積極的な対策が必要。
多様性は質を向上させる。女性は法廷に異なる声と視点をもたらすことができる。司法制度におけるジェンダーの多様性を高めることは、多くの女性の司法へのアクセス障害を軽減する。
○日本弁護士連合会自由権規約個人通報制度等実現委員会:弁護士 中島広勝氏
・憲法98条2項は「国が批准した条約は誠実に守ることを必要とする」という趣旨であり、人権条約は裁判規範
・個人通報制度*がないのは先進国で日本とイスラエルのみで、政府は「導入に向け検討する」と言うのみとなっている
*個人通報制度:国内で裁判などの救済手続を尽くしてもなお権利が回復されない場合に、個人が直接国際機関に人権侵害の救済を求める制度
国政においてもそうだが、司法においても一般社会の感覚とずれていることの大きな原因として女性の少なさがあると感じる。
平等を促進するための暫定的な特別措置をとり、司法制度におけるジェンダーの多様性を高めることが、すべての人に平等な正義をもたらすということは女性にとってだけでなく、男性にとっても利益をもたらすということではないか。