東近江三方よし基金
近江(現在の琵琶湖の東)商人は「売り手よし、買い手よし、世間よし」の「三方よし」を理念に四百年もの昔から全国で商売をしながら、近江の技術を伝え、各地域に特産品を作ってきたそうです。岩手の南部鉄器もその一つだそうです。
そんな近江地方の公益財団法人東近江三方よし基金の常務理事山口美知子さんのお話を紹介します。
○東近江市の行政計画の特徴
・市民協働推進計画で市民ファンドを位置づけ
・環境基本計画で地域資源として、自然資本、文化資本、社会関係資本(人と人のつながりなど)を位置づけ
・取り組みの評価指標を住民目線で実感できるものとして市民参加の会議で策定
・実現のために志のある資金を活用した資金循環のしくみをつくる
○東近江三方よし基金の役割
・地域からの資金流出を減らす→地域で預かったお金を地域の中で回す
・外から調達:寄付、出資、休眠預金*、公的資金
・地域で回す:タンス預金の循環
・流出を止める:商店の魅力向上、地元消費の喚起、遺贈寄付の普及
・活用例:公益活動への補助、事業指定寄附、金融機関との協調融資、
コミュニティ融資*、ソーシャルインパクトボンド*、地域通貨
*休眠預金:2009年1月1日以降の取引から10年以上、その後の取引のない預金等(休眠預金等)を社会課題の解決や民間公益活動の促進のために活用する制度
*コミュニティ融資:市民自らが出資したお金を、応援したい地域の事業者などに融資
*ソーシャルインパクトボンド:社会的課題解決のために行政の補助金を成果に応じて委託した民間事業者に支払う
○東近江三方よし基金の社会的役割
・環境、経済、社会の評価軸
・成果目標達成のための伴走支援
・寄付募集の働きかけ
・地域課題から新たな支援策を検討
○成果目標の設定のポイント
・質的変化に注目した成果目標を設定
・つながりの変化、実施団体の変化、地域の変化を見える化することにチャレンジ
・成果の見える化は実施団体のモチベーションを上げることに貢献する
○成果目標の例 テーマ:子どもの居場所づくり
◆支援対象者にとってのつながりの増加
事業実施前より知り合いや友人が増えている、子どもに信頼できる大人ができた
◆実施団体の状態の変化
相談できる人が回りに増えている
◆地域の状態の変化
子どもに関する課題を知っている人が増えている
子どもの居場所が提供されていることを知っている人が増えている
○東近江三方よし基金の実績から見える社会的インパクトの意義
①活動を中心につながりが増加→社会的関係資本の強化
②共感が生む意識変化→社会変革へ
量の変化と質の変化に注目
→環境・経済・社会を客観的データで把握し、住民意識の変化を見える化することで社会的インパクトを発信する基金へ→社会的投資、ESG投資*の獲得へ
*ESG投資:環境、社会、企業統治の観点から企業の将来性や持続性などを分析・評価した上で、投資先(企業等)を選別する方法
生活クラブ生協の関係でも草の根市民基金やインクルファンド、東京コミュニティパワーバンクがあります。成果目標について、「質的評価をしなければならないのに、量的評価に逃げているのではないか」という言葉が心に残りました。