命とくらしのために決定の場にもっと女性を!
ジェンダー平等の視点をあらゆる政策・事業・活動に組み込んでいく「ジェンダー主流化」。長年取り組んでこられた東京大学名誉教授経済学博士 大沢真理さんの講演を紹介します。
◇制度政策が「昭和時代のまま」
・『令和4年版男女共同参画白書』:コロナ被害は女性で「甚大」(失職、収入減、自殺急増)
・家族のあり方が変わってしまったのに、雇用・処遇、意識、制度・政策が昭和時代のまま
「家族に社会保障を肩代わりさせている」⇒「世帯単位から個人単位での保障・保護」へ変えるべき。世帯単位とは、自助>共助>公助で、自助は「内助」を前提とする男性の話
◇全人口の相対的貧困率の推移
・日本では微減したが、2021年に最悪に
・年齢別では、日本の18-25歳の若年層の貧困率が、OECD(38カ国)で7番目に高い
・若者の貧困→未婚率上昇→少子化→人口減少
・日本と韓国のひとり親≒シングルマザーの相対的貧困率はOECDで最悪
◇G5および韓国の所得中央値
・日本の中間層・貧困層はG5および韓国のなかで最も所得が低く、低下気味
・賃金が伸びないことが主因(マクロでもミクロでも、所得/賃金が伸びない)
・実質月収は、対前年同月で連続して低下
◇国民負担の面は平成時代に様変わり
・日本では社会保険料負担が急増し、国民負担全体の累進度が低下⇒低所得層(≒女性)冷遇
・社会保険料負担は、低所得層と高所得層で右下がり(逆進的)
◇欧州福祉国家の動向=社会保障財源の「租税化」
•フランス:社会保険料負担の対象は狭く、企業の人件費負担は重い。社会保障目的税を導入。資産所得や投資益に大きく課税。世帯でなく個人単位。充当先は、家族手当、医療保険のサービス給付、所得制限付き無拠出年金。低賃金層の雇用主保険料を減免、保険料負担に累進性
•ドイツ:保険になじまない要素のために社会保険料を使うのは、誤った財源調達という考えが基本。子育て期間を年金給付に反映、財源には付加価値税や環境税、たばこ税を充当
•スウェーデン:社会保険料の比重を下げ、賃金税(企業負担)を引き上げ
日本では?社会保険料依存が進む。同時に社会保険給付の絞り込みが、介護保険制度で顕著。保険外サービスとして市場化を推進(社会保険が危ない)
◇高齢者の累積コロナ死者数、性別、人口比
・福島県と東京都をのぞくすべての県で、女性の数値が高い
・男性に加点する「入院優先度判断スコア」(神奈川県)の影響はどうだったのか、クラスター発生の4割は高齢者福祉施設。露骨な「姥捨て」が起こったのでは
◇年齢階級別自殺死亡率の推移
・女性では9歳未満を除くすべての年齢階級で上昇。とくに10-29歳
・男性では2020年に、20-29歳と80歳超を除くすべての年齢階級で低下
・2020-21年の10-49歳の女性の自殺数は6049人(コロナ死者の69倍)コロナ禍で大抵の国では自殺が減。増えたのは日本と韓国の比較的若い女性。姥捨て社会は若い女性に捨てられる?
◇岸田内閣の政策:防衛費に43兆円。少子化対策3.6兆円のうち1兆円は高齢女性から取得
• 2023年健康保険法改正で、後期高齢者医療の平均保険料月額は、2021年度の6300円から6575円、2024年度には7082円、2025年度に7192円の予定
• 2024年子ども・子育て支援法改正による子ども・子育て支援金(2028年度)で、医療保険料額大幅アップ。21年の医療保険料額にたいして、協会けんぽ4.29%、組合健保と共済で4.4%、国保(世帯当たり)で5.3%、後期高齢者医療で5.56%のアップ
• 介護保険では「史上最悪の改定」(利用者の自己負担率ひき上げ(1割から2-3割へ)、要介護1・2の通所・訪問介護を介護保険から自治体サービスに移管、ケアプランの有料化)を検討。2024年度から訪問介護の基本報酬減額、1-6月の介護事業所倒産件数は過去最多
• 社会保険のうち、年金は男性の保険、介護・後期高齢者医療は女性の保険
露骨な「姥捨て」→介護離職、女性の貧困化。それで出産が増えるか?
◇若年女性の人口が細り、出生率が上昇しても子どもは増えない
・少子化の加速は2019年から。コロナ禍でさらに加速。2023年は出生数72万人、合計特殊出生率1.20(ともに過去最低)。異次元の少子化対策で、少子化加速
◇誰一人取り残さないために
・年金額に最低保障を:日本の貧困者の4分の1が高齢女性。高齢者の貧困率が現役世代より低い国は、OECDで多数
・現役層および子どもの貧困に対して:同一価値労働同一賃金を求める
正規非正規を問わず労働者全員の担当する仕事を構成する「職務」を分析、職務の4つの面(知識・技能、責任、負担、労働環境)で点数をつけ、仕事の価値を割り出し、価値に見合う賃金を。日本では正社員が職能給で非正規は職務給といわれてきたが、そうでもない
・金融所得・相続への課税強化を。所得税制の所得控除を税額控除に転換し、給付付きとする
・住宅給付を導入し、児童手当・児童扶養手当を統合して拡充するなど
さらに言い続けないと、まだまだ変わらないようです。