地域共生社会と生活困窮者支援

地域の人の集う場 藤里町のこみっと(秋田県藤里町社会福祉協議会HPより)
長寿社会開発センターの研究セミナーで行われた、地域共生社会における在り方検討会議の座長を務める中央大学教授 宮本太郎さんの講演を紹介します。
◇少子高齢化の中の困窮・孤独・孤立の広がり
・現役世代と高齢世代の比率が1:1に近づく肩車は可能か⇒困窮・孤独・孤立の拡大で支えられる側はより重く、支える側は非力に
・単身高齢者4人に1人は「人との会話がほとんど無い」/「孤独感が常にある」30代が最多
・困窮と孤独・孤立は強く相関、冷蔵庫はカラなのにスマホの通信費は払い続けざるをえない
・社会保障支出(GDP比)は世界トップクラスなのになぜ困窮と孤立の広がりや少子化に対応できないのか
◇なぜ制度が対応しきれず、現役世代の不信が広がるのか
▼安定雇用と皆保険・皆年金という強みが活かせなくなり、むしろ裏目に出ている
・男性稼ぎ主の家族扶養を成り立たせるために社会保険重視の制度となっている(社会保険の財源に多額の税を投入⇒その分、税のみで運用される生活保護や保育などの財源は制約、社会保険間の財政調整などで負担と給付の関係が見えにくい)
・社会保険中心のため、高所得層の方が社会保障給付を受ける割合が高い
▼労働条件の低下に伴い、制度が対応できない新たな生活困難層(低所得不安定就労、ひとり親世帯の孤立・困窮、「軽度の」知的障がい、低年金・孤立など)が増大
・人々の間で制度不信と相互不信の傾向も:税の流れが見えないことや制度間の財政調整への不信、正規・非正規の処遇格差への不信、生活保護制度への不信(逆転現象など)
・「老後」や「子育て」を「いつか行く道」と感じられない若い世代も(年金もらえるのは働く人のおかげでしょ、子持ち様)
▼三層のセーフティネット構想と現実のギャップ
・安定就労と社会保険:第1のセーフティネット
生活困窮者自立支援制度や求職者支援制度:第2のセーフティネット
生活保護等:第3のセーフティネット
安定就労への参入は困難、生保は受給しにくい⇒新たな生活困難層
▼コロナ禍が浮き彫りにした新たな生活困難層:女性、自営業(フリーランス)、20 代・30 代
▼刑務所など矯正施設が受け皿になることも
・新規入所者の2 割が知的障がい、70 歳以上の受刑者は20 年間で4.8 倍に
▼疑似セーフティネットとしての8050 問題
・高齢世代は年金で暮らすという構図が崩れ、雇用以外の支援がない現役世代が年金に依存
⇒制度が対応できない新たな生活困難層を救う3 つのセーフティネットをつなぐセーフティネットワークの必要性
◇生活困窮者自立支援制度から地域共生社会へ
▼新しい支援と地域共生社会の考え方を先取りした生活困窮者自立支援制度
・新たな生活困難層を対象とし、孤立を支援の課題とした初めての制度
・やみくもに就労を求めず、元気になってもらうことが大事という広義で柔軟な「自立」観
・縦割りを超え、さらに住宅、雇用、教育と連携した支援を求めた制度
・寄り添うプロセスそのものに価値があることを打ち出す
・創造的支援の理念で自治体固有の取り組みを尊重
⇒この考え方を高齢者、子ども、障がいなどの分野に広げていくのが地域共生社会のビジョン
▼地域共生社会とは
・誰もが取り残されることなく、縦割りを超えた支援が広がるなかで支える側にも支えられる側にもなり、地域に出番があって元気になれる社会
・認知症でも、がんでもうつでも普通に暮らす、働く/軽度障がい、発達障がいは誰にとってもありうること/65 歳がゴールではなくターニングポイントに/労働時間や働き方があえば就労可能
・人とつながり、認め認められ、自己肯定感を高めるなかで元気になれる:つながる、つなぐ、「場」をつくる
▼就労支援、現金給付、包括的支援体制を組み合わせ、その都度、当事者の事情に応じて連携して元気にするセーフティネットワークを
◇つながる・つなぐ・「場」をつくる 困窮・孤独・孤立へ新たな支援の動き
▼つながる:多様な接点と相談支援
・生活圏域でつながる機会を多様で無限大に
・イギリスのかかりつけ医は医薬品だけでなく、元気になる場の処方箋を義務づけられる
・AI も活用するオンライン相談の可能性:つらさを抱え傷つきやすい共に生きるロボット
▼つなぐ:支援をつなぎ「場」につなぐ
・つながるために必要な支援を縦割りを超えてつなぐ:社会福祉法人やNPO の連携も
・多様な「場」につなげる:その人の関心は自明ではなく、つながってみて本人も自覚する
・「場」は元気になる条件であると同時に人間関係や向き不向きなどから元気を奪うきっかけになることもある⇒選べること、つなぎ直せることが大事
▼「場」をつくる:多様な居場所から就労機会まで(困難の見える化が「場」に/子ども、定年
退職者、Z 世代がつながると何かが起きる/間口の広い多様なオーダーメイドの働き方)
みんなが元気になれる居場所や就労の場づくりを清瀬でも進めていけたらと思います。
