「豊かさとは何か」

清瀬市内のひまわり畑

「豊かさ」といえば経済的豊かさなのでしょうか。1989年に発行された著書ですが、今も変わっていない、むしろその傾向は強くなっていると感じます。生活経済学者の埼玉大学名誉教授 暉峻淑子さんの著書を紹介します。

◇豊かさとは・・・

・創造的で自由な生き方ができること

・それを最大限可能にする政治、社会

◇西ドイツの例

・どの老人ホームも個室、隣に病院があり、個室は寝室、居間、風呂、台所、玄関がついている、マンションのかたち。そこには食堂、図書室、体育室、音楽室など市民センターのようなものが併設され、一般の人と共用。半数の人は、公的な費用援助を受けている、後半分は年金で払っている

・国民にとって住居は人生の基本であり、人間と人間の関係を作り出すところ、4割が公営住宅

・環境負荷を抑えるために夜遅くまで公共交通が動く

 

◇日本の「豊かさ」への疑問

・資本主義国では、分配の仕方に変更を加えることを好まないため、国民の物質的幸福を増やすには純生産物の総額を増加させなければならない

・福祉国家では、国民の幸福を大きくするには、純生産物をどう分配すべきかを考えるため、純生産物が増加しなくても、分配の仕方を改良して幸福を増進させることができる

 

◇70カ国以上の子どもたちの文章や絵がまとめられた「美しい地球をよごさないで」

・子どもたちが語っているのは、国が違っても命あるものを大切にし、慈しみ、この美しい地球を、みんなで共有できる世界にしようという思い

・そこで語っている豊かさや幸せの意味は、開発による環境破壊や戦争や核による恐怖をなくして、動物や植物とともに命を大切にして生きること、つまり地球の豊かさ。それは最大限に多くのものが大切にされ生きていくことを意味している

 

◇豊かなのか貧しいのか

・エンゲル係数で有名なエンゲル:各国の経済力は物質生産量などで比較するのは無意味で経済力を表す真の指標はそれぞれの国民の生活水準、福祉の測定としての生計費である

・しわよせは生活と自然破壊に

・ガルブレイスの「ゆたかな社会」:豊かな社会とは生産の効率至上主義から脱却できた時、その強制から解放され自由になったときにはじめて人々が考えることができるもの

 

◇ゆとりをいけにえにした豊かさ

・人間が全体として生きていくことを否定し、人間と人間との連帯が企業営利に奉仕するためだけの連帯となり、家族や地域社会から排除され、自然と対立するというのは本当の豊かさとはおよそ違ったもの

・8時間労働の真の意味:働く時間、睡眠、食事など生理的に必要な時間、文化的社会的時間

 

◇貧しい労働の果実

・生活にとって必要な住宅と住環境がその高価格とは正反対に生活の質を貧しくしている

・生活の質に大きな影響を及ぼす社会保障の欠如が社会的公正と人権の保障を妨げ、国民の安心感を失わせている

・住宅のレベルの低さ:カネの豊かさが住の豊かさを亡ぼしたことが住宅問題にあらわれている

・日本人にとって人と人とのかかわりは、商品なカネのやりとりでしかなく、人間全体がモノと金、経済の中に呑み込まれてしまっている

そこに人間の復権をもたらそうとするなら、共同体的な場を意識的に構築していかなければならない。なぜなら人間の自由は、孤立からでなく連帯する生活基盤があってはじめて可能だからである

・アイヌの人々は、富を貯めるとは各個人の蔵にモノをためることではなく、大地を豊穣に、自然を豊かにし、自然の中に富を貯めることだと言った

 

◇豊かさとは何か

・教育の基本的レベルが揃っていることで民主的合意や自由な言論、多様な発想も可能となった

・多くの種が共存していればいるほど豊かな生き方を保障されているのが、大自然の原理

・人間も相互に依存し合い、連帯しあいながら生きている

・生きるということは、食物、暖かさ、眠り、愛し愛されること、社会からはじき出されないこと、教育、信念、文化的活動、政治参加などのすべてに対する欲求を持つ者として生きること

・失敗が許されるゆとりのある技術を使う(原発のようなギリギリの技術を使うことは自然や人間にとって危険であるばかりでなく、労働そのものを非人間的にする)

・他者を傷つけない技術を高い技術と考える

 

2006年に施行された住生活基本法は、「施策の推進は、地域の自然、歴史、文化その他の特性に応じて、環境との調和に配慮しつつ、住民が誇りと愛着をもつことのできる良好な居住環境の形成が図られることを旨として、行われなければならない。」としていますが、住環境や住まいは人権という観点を規定し、施策を進める必要があると考えます。