~国民投票の前に「国民投票法」の改正を~

南部さんを囲んで

憲法改正にむけた動きを続けている現政権ですが、そのための手続として「国民投票」が必要です。そしてその具体的手続きを定めたものが「国民投票法」ですが、まだまだ改正しなければならない課題がたくさんあるようです。

シンクタンク「国民投票広報機構」代表で、2007年5月に制定された国民投票法の起草に関わった南部義典氏の学習会について報告します。

 

憲法改正の国民投票までの流れ

各党における改正項目の検討←現在、この段階
各党合同による改正項目の協議、憲法改正原案の起草、各党の了承
憲法改正原案の共同提出
衆議院本会議における趣旨説明、質疑
衆議院憲法審査会における審査、採決
衆議院本会議における審議、採決(ただし、衆議院の解散の場合廃案となる)
参議院本会議における趣旨説明、質疑
参議院憲法審査会における審査、採決
参議院本会議における審議、採決
10 憲法改正発議、国民投票期日の議決(議決の日から最短で60日後、最長で180日後)
11 国民投票広報協議会が国会に設置
12 憲法改正案の公示、国民投票期日の告示
13 国民投票運動(改正案に対し賛成または反対の投票の勧誘、未成年の運動も可)
14 国民投票の期日

国民投票広報協議会

・衆議院10名、参議院10名の20名(賛成派だけでなく、少なくとも反対派から1名は選出しなければならない:少数会派尊重ルール)

・国民投票公報の原稿作成、広報(放送、広告)の事務

・国民投票公報は投票日の10日前までに配布

・賛成意見と反対意見は平等に扱う

 

課題

①選挙と同レベルの投票環境の実現

②国民投票運動費用の規制のあり方

③国民投票法番組と政治的公平

④投票率と得票率

 

選挙と同レベルの投票環境の実現 選挙 国民投票
(1) 期日前投票期間中の共通投票所の設置 ×
(2) 期日前投票所の増設、開閉時間の弾力化 ×
(3) 選挙人に同伴する子どもが投票所を出入り可能であることの明確化 ×
(4) 期日前投票の理由の追加(天災や悪天候) ×

 

国民投票運動費用の規制のあり方

・選挙運動に相当する国民投票運動の費用に関する規制は何もない。

⇒投票買収という直接的なことだけでなく、資金力がテレビコマーシャル(CM)の量に直結することが予想される。

・上限を設けるとともに、一定の運動者に対して登録と投票後の収支報告を義務付けるべき

・現在の国民投票法では、投票日14日前から、賛成・反対投票の勧誘CMのみ禁止(意見表明については禁止されていない。そもそも、CMは全面禁止の国が多い。)

 

国民投票法番組と政治的公平(放送法4条の削除の問題)

・放送事業者は国民投票に関する放送については、放送法4条の1項の規定の趣旨に留意するものとする(国民投票法104条)。

・放送法4条(国内放送等の番組の編集等):政治的に公平であること、意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること

・昨今、政府内で放送法4条を削除すべきとの議論があり、政治的公平性が阻害される恐れ

 

投票率と得票率

・絶対得票率の導入により、投票率に関係なく、有権者の一定数以上の賛成があれば成立とすることが必要

・国民投票は国民主権を体現する機会でもあり、全体としての意思をどう反映させるかという観点が最も重要

 

憲法改正の中身もだが、その大前提となる国民投票法にこんなにも課題があるとは。850億円と試算されている費用を考えても、だれもが公平に考え、議論し、投票の機会が保障され、投票の結果が国民の意思といえるものになる国民投票法の改正が必要だ。