~エネルギー政策で持続可能な地域をつくる~

2018年8月30日 10時38分 | カテゴリー: エネルギー, まちづくり, 市民自治, 活動報告, 環境, 福祉・医療

サムソ島エネルギーアカデミーの低エネルギーハウス(デンマーク)

エネルギー政策の先進自治体である長野県で、職員として環境エネルギーを担当した経験を持つ一般社団法人地域デザインオフィス代表理事の田中信一郎さんの学習会の報告をします。

 

〇長野県建築物環境エネルギー性能・自然エネルギー導入検討制度

・エネルギー性能の評価(格付)と再エネ導入検討(義務)

・一定規模以上の建築物:結果(計画書)を行政に提出、行政による公表、建物に表示

⇒新築戸建住宅のH25年省エネ基準以上81.7%(参考:全国平均3~5割)、自然エネルギー設備導入率37.3%

 

〇長野県内のハウスメーカーの事例

・光熱費シミュレーションを建築前に示し、建築後に「気密測定」「熱損失係数計算」等実施

・環境性能コミットメント:24時間全館冷暖房を想定してシミュレーションした電気代をオーバーした場合、光熱費を3年間補償

・断熱木製サッシを製造・販売:設計事務所・信州大学との共同研究の成果を活用

 

〇建築物の断熱性能をあげる=省エネ

・交通事故死<溺死:冬に自宅のお風呂でヒートショック(温度差による急激な血圧の変化による心筋梗塞など)

・冬季死亡率:栃木県>愛媛県>鹿児島県>東京都>青森県>北海道⇒住宅の性能と関連

・75歳以上の疾病分類別の一人当たり医療費:心疾患など循環器系の疾患が圧倒的1位

・要介護になった原因:脳血管疾患が圧倒的1位

 

〇現在のエネルギーと地域経済の関係:域外からエネルギーを調達、お金も域外(特に海外)に

 

〇これからのあるべきエネルギーと地域経済の関係

・地域主導型自然エネルギー事業:地域の住民・団体・企業・市町村による事業

・地域:熱は熱で利用、電気は風力・太陽光・バイオマスで発電⇒域外に売電⇒収入で省エネ設備投資

・地域:自然エネルギーはたくさんできても需要は小⇔大都市:自然エネルギーはあまりできないが需要は大

 

〇世田谷区の取り組み

・全区立保育園で長野県が運営する小水力発電の電力を使用:世田谷区は料金+応援金を支払っても以前より500万円節約

 

〇持続可能な地域づくりの第一歩:公共施設の持続性の向上

・立地(長期的に見て利用しやすい場所にあるか)

・稼働率(床面積当たりの稼働率は高いか)

・寿命(共用予定の期間は何年か)

・トータルコスト(イニシャル+ランニング)

・パリ協定(今世紀後半に化石燃料は使えなくなる)

 

〇トータルコストの低いZEB(ゼロ・エネルギー・ビル):高断熱・高気密+少数の高効率設備

しかし、通常の断熱・気密+多数の高効率設備のビルがほとんどなのが現状

 

〇建物のエネルギー性能を高める優先原則

断熱>気密>日射コントロール>換気>通風>設備>再エネ熱>再エネ電気

 

〇学校施設の持続可能化のメリット

・子どもたちの教育環境の向上:適切な室温は学習効率を高める

・地域活動の拠点:多用途・多機能化で住民の利便性向上と公共施設総面積の圧縮を両立

・避難時の二次被害の抑制:断熱化・省エネ化で避難時の温熱環境を高め、二次被害を抑制

・トータルコストの抑制:ランニングコストの削減により、共用期間のトータルコストを抑制

・長期的なまちづくり:人口変動しても多機能化・ランニングコスト抑制で公共施設として維持可能

 

〇ドイツの公立小学校の事例

・建物高断熱、木製高断熱サッシ、外付け日射遮蔽用ルーバー、自然換気、熱交換換気、ペレットボイラー、太陽光発電:建設費は通常の10%増しだが、エネルギーコストは66%削減、50年後までのトータルコストで21.5%削減

 

数年前の冬に視察したドイツやデンマークでは、断熱は新築のみならず、リフォーム時にも行われていたことや、暖房も室内に這わせたパイプにお湯を流すもので、乾燥しにくく、じんわり温かい心地よいものだった。

異常気象といわれる今こそ、取り組まなければならない。