~学校教育はいま~ 試される自治体の良識と力量 (その2)
その1に続き、教育改革国民会議委員や中央教育審議会委員を歴任された共栄大学教授で社会教育学が専門の藤田英典さんの講演について、紹介します。
◇安倍政権の教育改革の危険性
●良識欠如の危険な教育政策
・教育委員会制度の改革:首長・教育長の権限強化
・学校教育制度の改革:小中一貫教育の制度化→教育機会の制度的差別化・格差化
・学力政策・入試改革→全国学力テスト学校別結果公表の解禁、大学入試改革新テストの導入→テスト漬けと学力の矮小化
・人格・思想の統制→道徳の教科化、教科書検定基準の改定、国立大への国旗・国歌要請、国立大文系学部の縮小・再編方針→政治教育の課題と行方
●道徳の教科化における問題点
・「よい子の道徳」の危険性→疎外感・反発心・ストレス・相互監視
・検定教科書使用の問題→押しつけ道徳、道徳の矮小化
・道徳を評価することの問題
・教師・学校に対する生徒・保護者の不信感を招く危険性→序列化、子どもはどう見られているかに敏感
●道徳教育とは
・学校生活全体が道徳教育の機能を果たしている
・社会的な判断をするうえで重要な、日常生活での判断基準をつくるための理知的に考える学習
・モラル・ジレンマのオープンエンド型(結論が決まっていない)学習
・他者と社会(矛盾・問題・不条理)についての理解、自省・配慮、寛容の精神を学ぶ
●教科書検定基準の改定における問題点
・政府見解の押しつけによる教科書のゆがみと質の低下
・これまでの政治や政策(為政者の行為)の正当化
・教科書採択への政治権力介入(横浜市等)
◇包摂的な共生社会と学校づくり・地域づくりへ
●東日本大震災により改めて確認されたこと
・当たり前の平穏な日常の重要性
・故郷・絆・つながりの大切さ
・笑顔と夢・誇りを育み保持できることの重要性
●日本社会・生活基盤の構造変容→学校教育の難しさの増大
・地域生活圏への無関心の拡大と家族・個人の孤立化
・価値観や生活スタイルの多様化と巨大な学校外情報空間(インターネット等)・学習空間の拡大→秩序基盤の揺らぎ、学校教育の独占性の低下
・学校教育に対する私的関心の拡大と学力競争・進学競争の新たな展開
・社会的排除(貧困、家庭崩壊、虐待)の拡大→適切なケアを欠く子どもの増加
◇これからの学校づくり
●学校の基本的な役割
・能力形成・学力形成→学校でしか勉強できない・しない子どもへの適切かつ十分な配慮
・人間形成の支援→個人の尊厳とニーズに対応した多様な活動・経験の豊かな場・機会の提供
・生活空間、安心・安全な居場所の提供
●地域に根ざした学校づくり
・誇りに思える学校・地域→のどかでおおらかな子ども時代、元気に過ごした学び舎
・みんなでつくる学校と地域社会→保護者・地域住民の参加・協力、協働と信頼
・認め合い・学び合い・高め合う「学びの共同体」づくり
◇まとめ
教育は未完のプロジェクトであり、お金も人手も時間もかけずに良くなることはない
子ども・教職員の夢と誇りを大切にしない教育は失敗する
支え続けるのは教職員と地域の信頼・支援・協力
さまざまな危険な改革が進められようとしているが、実行するかどうか選び取るのは自治体であり、その良識が試されているともいえる。
また、わたしたち保護者や地域住民は、子どもの育ちを支えるために、批判ではなく、現場を信頼し、豊かな学校づくりのための支援と協働を進めていきたい。