子どもたちの育ちを支えるとりくみ ~学校教育に関わる制度の変化~

 

地域の子どもの居場所「そだちのシェアステーション・つぼみ」マンガもたくさんある本棚

清瀬市では小学生の不登校の増加が顕著になっています。いじめの認知件数も増加しており、学校への支援がますます重要な状況です。八王子市学校教育部教育指導課総括担当スクールソーシャルワーカーで社会福祉士・公認心理師の谷川由起子さんの講演を紹介します。

◇「学校」という社会資源の特徴
・所属するところ/名前の前につく「○○学校○年生~」
・義務教育中は「割り振られた所属」
・義務教育の学校は電車のようなもの(ここに住んでいる人はこのホームの電車へ/クラスは号 車/そこで人に会う、嫌な人もいる、避けたい人もいる/仲良くなれる人もいる)
・「集団のチカラ」「仲間のチカラ」を活かすことができる
・「人を嫌いにならない」で義務教育を終えてほしい

◇東京都のスクールソーシャルワーカー(SSW)活用状況
・区市町ではすべて(23区26市4町)で活用/約400人が勤務
・活用・配置形態・活用目的は様々(不登校対策に特化/いじめ対策チーム専従やいじめ調査専門員/保護者からの直接の相談にも対応/学校支援のみ/指 導主事が認めたケースのみに指導主事とペアで動く)

◇SSWの配置形態
・派遣型(学校からのケースごとの派遣依頼に対し派遣/都内では50%)
○SSWが拠点に固まっているため相互の情報共有やケース検討が容易、教育委員会がマネジメントしやすい
△学校との一体感が持ちにくい、相談しづらい
・拠点校型(中学校を拠点校にして近隣小学校を担当する場合が多い)
・巡回型(○曜日はSSWがいる、週に一度はSSWが来校する等)
○学校からはSSWの顔が見えやすい、相談しやすい
△多くのSSWが必要、SSW相互のやりとりがしにくい、教育委員会がマネジメントしにくい
・学校配置型(職員室にデスクがある、スクールカウンセラーに近いイメージ)

◇八王子市スクールソーシャルワーカー活用事業
・2010 年4 月から開始:2 名→教育センターから高尾山学園(市の不登校対応拠点)に移動→
徐々に増やし2023 年度15 名(参考:2025 年度市内小中学校数107 校)
・学校担当SSW(学校への窓口)+ケースごとの依頼派遣型
・学校だけでは対応困難なこと全般を担当
・個別ケースへの対応:直接的支援、後方支援/学校との継続的連携:情報共有、校内委員会の
出席、研修/児童精神科・療育機関との連携:治療方針の共有、退院支援/緊急支援)

◇不登校の子どもの気持ちとその対応
・頭と心と身体がバラバラ→正論・説得・叱咤激励による効果は限定的→まず安全な場所に
頭(学校に行かなければ)/心(学校に行くのがつらい)/身体(思い通りに動かない)
・混乱期:保護者や周囲が登校を強制したり、受診や治療に躍起にならないようにする
低迷期:エネルギーを蓄えさせる、口出しは最小限
回復期:足がかりとなる情報や場所を与える、自立を促す、欠席と休息を保障する

◇いじめとは「影響を与える行為」で「心身の苦痛を与える」もの
・「行為」だけを見ていてもわからない、「傷付き」は関係性の影響を受ける
・被害者のストレス耐性が低い、被害的に捉える傾向がある場合、わずかな行為でもいじめ

◇子どもの自殺の状況
・定時制・通信制高校の生徒の自殺死亡率が高い(スクーリングがほとんどない通信制も)
・自殺予防:よく話を聞く、ねぎらう、認める(学校でもできる)
・自殺を選んだ不登校経験者の75%が再登校していた、周囲に合わせようとすることで心身が
限界をこえてしまう「過剰適応」に
・自傷行為では死なないが、自傷行為をする人が失敗して死に至ることはある
・自傷行為の動機:安定剤として/生きるため・自殺しないため/他者を意識したアピールには
「自傷という方法でしか表現できない」理由がある
・過量服薬は自傷行為よりも自殺を意図する気持ちが多く含まれている

◇学校における「死にたい」「消えたい」への対応のヒント
・話してくれてありがとう、勇気があるね/死にたくなっちゃうほどつらいんだね/味方だよ/先
生にできることある?/次はいつ話そうか/付け足すことない?/あなたを守るために保護者に
伝える必要がある/あなたは私にとって大切な児童(生徒)、失いたくない

   清瀬市では派遣型で2 名のSSW が学校からの依頼を受け対応しています。
   いじめの判定は関係性の影響を考慮することが大事ということは、理解されていないと感じます。
   公立の学校は社会の縮図だと思いますが、長い人生の始まりである義務教育の期間に人を嫌いにならないでほしい、と切に願います。