女性支援法制定の意義

超党派による議員立法で制定され、2024年4月に施行された女性支援法について、お茶の水女子大学名誉教授 戒能民江さんの講演を紹介します。

◇「女性の人権」日本の課題
・国内人権機関の未設置(120ヶ国設置済み):人権侵害の調査・救済・政策提言・人権教育
・包括的差別禁止法の未制定
・女性差別撤廃条約 選択議定書(個人通報制度)の未批准(115ヶ国批准)

◇困難な問題を抱える女性への支援に関する法律(女性支援法)制定
・超党派の議員立法
・女性支援の基本的な考え方・基本理念を初めて定めた(一人ひとりの女性の意思の尊重/行政と民間団体との協働による女性支援/人権と男女平等社会をめざす)

◇放置されてきた「困難な問題を抱える女性」の人権
・困難に直面する女性を周辺化し、女性の人権問題として政治課題に挙げてこなかった
・社会の無関心・女性の人権軽視
・政治を動かした支援現場の切実な声:旧婦人相談員や旧婦人保護施設
・ただし、2001年に成立したDV防止法の時と違い女性運動の広がりまでいかなかった
・ネットでの誹謗中傷→自治体の萎縮効果をもたらす

◇なぜ女性支援法が必要か
・従来の女性支援事業である婦人保護事業(売春防止法が根拠)から切り離す→集団主義的指導から個人中心の対応へ=個人の人権の尊重
・新しい「女性支援事業」のしくみの構築

◇女性の人権を実現するための支援の重要性
・困難に直面した女性が支援にアプローチできること、女性の意思を尊重した「支援」をめざすとともに、女性の困難の背景にある社会構造的視点に立つ

◇女性支援法の規定
・女性が日常生活・社会生活で女性であることにより様々な困難に直面する
・日本の社会では、女性の人権尊重と安心して自立した生活実現のためには「女性支援」が必要
・女性は、性暴力、性的虐待、性的搾取などの性被害に、より遭遇しやすい状況におかれている
・予期せぬ妊娠・中絶・出産など女性特有の問題がある
・女性は、不安定な就労状況や経済的困窮、孤立などの社会的経済的困難に陥るおそれが大きい

◇支援のハードルの高さ
・相談しない人が多い、相談窓口が周知されていない
・若年女性:もっとも支援が届きにくい、日本社会の自己責任論を内面化/最近まで行政は取り組んでこなかった→民間支援団体が支援
・多様で複合的な困難を抱える女性たち:中高年の女性、障がいのある女性、外国人の女性
・縦割り行政のため支援も縦割りに

◇女性支援法のポイント
・困難な問題を抱える女性とはだれか→すべての女性が対象=DV 被害者にとどまらない
・対象者は広がるが、行政に協働連携体制による支援のコーディネーターが必要→ケース検討会議(当事者も参加)、支援調整会議(何が問題かのカギは当事者の話の中にある)
・支援の公的責務:市区町村にも(旧婦人保護事業では都道府県)
・当事者の意思を尊重した支援:実際の支援では・・・意思決定が難しい、信頼関係が無いと本音を言わない、中長期的な継続支援には専門性と人と時間が必要
・民間団体と行政との協働による支援

◇民間団体と行政との協働による支援とは
・双方の特徴を生かし、補完しあいながら対等な立場で支援=従来見落としていた「女性の困難」に気づく(若年、中高年、性的搾取など)/徹底した当事者中心の民間の支援を行政が学
ぶ/行政と民間の関係性を問い直す(行政の丸投げなど)
・しかし、民間女性支援団体の偏在、民間支援団体が地域にないという現状、民間団体活動の持続可能性(財政難、人員不足など)

清瀬市では、アミュービル4 階の男女共同参画センター(アイレック)でDV 相談に限らず、女性相談を実施しています。こんなこと・・・と思わず連絡してみてください(連絡先042-495-7002)。東京都のLINE 相談「女性はーとふるLINE@東京」もあります。
民間支援団体との協働は、特に重要と考えます。女性に対する暴力は個人の問題ではなく社会の問題であり、その暴力を生み出し、再生産する社会構造を変えなければなりません。