自然エネルギー&市民電力 ドイツ・デンマーク視察(ドイツ編その2)

市民エネルギーベルリン

6名の理事のおひとり(左) お隣はまちづくりの専門家で通訳者のエルファディングさん

市民の直接参加で電力から発生する利益を地域に還元

ドイツでは、各自治体が決定した配電事業者が長期契約により、その自治体の配電網を所有・管理する。一方で、供給をうける企業や個人はそれぞれが選んだ電力会社から電気を買うことができる。

ベルリンの電力供給契約は20年契約で2014年末に更新される。この供給契約を市民の力で獲得するために、市民エネルギーベルリンは2012年に設立された。

配電網は確実な投資の対象であり、安定した利益を生み出す。現在配電しているスウェーデンの企業がベルリンの配電事業で得ている収益は、年間1億ユーロもあり、全て市民に還元されるべきである。目標は住民参加で再生可能エネルギー利用と脱原発を実現することであり、電力から発生する利益を地域に還元することを市民の直接参加で実現しようとしている。この配電網の買い取りのために、これまでに中小企業を含む500名が出資し、3百万ユーロの資金が集まっている。この資金は買い取るためだけの基金にし、買取後は利益を還元したいと考えている。ただし、配電網の買取には5000万~1億ユーロ必要だと言われている。買い取り額は交渉によるが、決着がつかない場合は裁判所が決定する。

2014年末に更新されるベルリンの電力供給契約には、現在、市民エネルギーベルリン以外に7つの企業が手をあげている。市議会の支持を得、住民参加をすすめていきたいと考えている。利益が市に入ることで、住民に還元される。市民の意向という政治判断も必要で、市民参加がテーマの住民投票の陳情も上がっている。あくまで市民が主体であるため、特定の政党と直接関係を持たないことにしている。市議会での決定の前には、他の公募者や公募企業(中国の企業も手をあげている)にも声をかけ、意見交換会を行いたい。

南ドイツ(人口2500人のシェーナウ)で市民が作った電力会社が10万人の市民に電力を供給していることから、350万人都市のベルリンでもできると考え、成功すればモデルケースになると考えた。 

住民参加で送電網の取得、さらに、発電事業も

まず配電網を取得し、次に3年後をめどに送電網の取得を予定。さらに、発電事業も視野に入れている。発電については地産地消が重要だが、再生可能エネルギーの発電所と組み、どんな電気を使うかの決定権を市民が持つこと、エネルギー提供は住民参加、住民が決める権利を持つべきである。消費者と電力会社のことを決めるのに今動くしかない。 

市民への呼びかけは、発電方法を市民が考える。大手に対抗する1つの手段。こうした動きに反対する市民はほとんどなく、反対するのは企業である。イベントでは、映画やコンサートなどの文化的なものを行い、いろいろな人が集う場所を作る。

専門家をよんだり、政治的なことについても会議を開き検討している。インターネットを活用し、広くよびかけを行い、意見を集めている。

電力など、ライフラインに市民がかかわることが重要と考えている。再生可能エネルギーは持続可能で、民主主義の視点で、市に利益をもたらす行政と市民が一緒に進めていくことが理想、再生可能エネルギーを電力として選べるようにしたい。

団体の運営費用はすべて市民や企業からの寄付で賄われている。事務所は歯磨き剤メーカーの一室を借りていた。スタッフのパート1名と広報やチラシ配りをするボランティア30名が活動を支えている。また、取得後必要な、より専門的、技術的なノウハウについては、現在の電力を供給している電力会社の技術者や他の専門家との契約により賄う予定だ。