電力小売り自由化でどうなる?

4月からいよいよ家庭用の電力も自由化される。それに先立ち、生活クラブエナジー(株)の赤坂氏に講演いただいた。

赤坂氏による清瀬での学習会

赤坂氏による清瀬での学習会

 

生活クラブエナジー(株)は、 生活クラブ生協の子会社でエネルギー事業に取り組んでいる。今後、生活クラブの配送センターなどの太陽光発電をはじめ、秋田県にかほ市の生活クラブ風車『夢風』の風力発電の電気などを販売する予定だ。

 

2000年から家庭用以外の電力が自由化されてきた中で、家庭用は電力会社の売上高の40%程度にすぎないにも関わらず、利益は90%を占めるという状況が続いている。これは、産業用は使えば使うほど安くなる一方で、家庭用は総括原価方式により、電力会社が一定の利益を確保したうえで料金を設定できるという、不合理なしくみによる。さらにこれは、家庭での節電は進んできているものの、産業界での節電がなかなか進まないことにもつながっている。

 

4月の自由化に向け、8兆円市場に160ともいわれている電力の小売り会社が群がり、宣伝合戦が行われている。それも、もともとの事業とのセット販売で割安感を強調しているだけの宣伝がほとんどだ。価格での比較は比較サイトで見ることができるが、どんな電気を買うことができるのかは、電源構成についての表示が義務化されていないこともあり、それぞれの会社のHPを見てもわからない場合もあり、選択基準の情報として不十分だ。

 

自然エネルギー先進国が多い欧州各国では、その割合はすでに20%を超え、現在も拡大を続けている。それに比べ、日本における自然エネルギーの割合は、現在でも大規模水力を含み12.6%という低水準であり、2000年当時とあまり変わらない。

 

さらに、2030年における国のエネルギー需給の見通しについては、多くの課題を含んでいる。再生可能エネルギー22~24%(水力8.8%、太陽光7.0%、バイオマス3.7~4.6%、風力1.7%、地熱1%)を目標としており、多くの先進国が40%以上としている中、かなり低い目標となっている。原発は20~22%としており、40年廃炉を徹底するなら15%程度にしかならないため、老朽化原発の延長が前提とされている。また、火力56%(石炭26%、LNG27%、石油3%)は、地球温暖化の問題からCO2を多く出す石炭火力発電を減らしている国が多い中、石炭回帰が明らかで、COP21における日本のCO2削減目標は、これを前提とした低い目標値となっている。

 

生活クラブでは2013年に総合エネルギー政策をつくり、「食」や「たすけあい」だけでなく、エネルギーについても自給による自治をすすめることを決めた。脱原発、エネルギー自給、CO2削減を基本とし、自然と共生する社会をめざし、「再生可能エネルギーをつくる、グリーン電力を使う、省エネをおこなう」を具体的な計画にすることを目指す。中でも省エネ=節電は、建設コストや時間がかからず、発電より効果が高い。

組合員は生活クラブエナジー(株)を通して6月から電気を共同購入できるが、自然エネルギーが足りないため、当初は30%~60%の比率を目標とし、不足分はサミットエナジー(株)やミツウロコグリーンエネルギー(株)など、再生可能エネルギーを扱っている他の電力会社から調達する予定だ。生活クラブの共同購入では、電源構成を毎月の請求書に記載する予定だ。6月にまず首都圏4単協で取り組みを開始し、東京では500世帯を予定している。10月には他の単協においても取り組み、翌年度の目標を組合員の10%としている。

 

今後の課題は、自然エネルギーの調達だ。生活クラブの関係で所有する発電所だけでは足りないため、将来の自然エネルギー100%の供給を目指すためにも食の生産地での発電や、市民発電所を増やしていくことが必要だ。お米の産地である遊佐やにかほ市での風車の増設、各地の市民電力との提携を進めていく。

 

エネルギー事業の取り組みは他の生協にも広がっているが、もともと国内の自然エネルギーが少ない中、ほしい量が調達できるようになるまでにはまだまだ時間がかかりそうだ。ただ、わたしたちがほしい、素性のわかる、自然と共生できる電気をつくり、使い続けていくことは、今後の国内全体のエネルギー供給のあり方や、ひいては国のエネルギー政策にも一石を投じることができるのではないかと、希望をもっている。

家庭向け電気が全面自由化されるのは2020年で、それまでは現在の東京電力との契約も据え置かれるということである。焦らずにじっくりと欲しい電気を選んでも遅くないようだ。