あきらめないで介護の未来を考える~その1

講師の日本ケアマネジメント学会 服部万里子さん

講師の日本ケアマネジメント学会 服部万里子さん

2000年、介護の社会化のために介護保険制度が導入され、3年ごとの改定が行われてきた。しかし、75歳以上高齢者がピークを迎えることによるいわゆる2025年問題を前に、2015年の改定では、要支援の予防給付の訪問介護・通所介護が保険制度から外され、自治体ごとに実施する地域支援事業に移行することとなった。清瀬市においては、全国で完全実施となる2017年4月からの移行としている。

さらに、現在2018年に向け、要介護1・2も地域支援事業に移行することが検討されている。

このような状況の中、NPO法人ACT・人とまちづくり主催の学習会に参加した。日本ケアマネジメント学会副理事長の服部万里子さんを講師に、利用者、介護家族、事業者、行政からの報告もあった。

 

2000年の介護保険制度の導入は、医療費を減らすという目的もあった。入院は重度の人のみで、それ以外の人は地域で支えるというのが基本的な考え方だ。

 

★医療・介護統括による地域包括ケアシステム

①医療 退院すれば在宅医療・看護の体制:急変から看取りまで、医療と介護の連携を自治体が作る

②介護 定期巡回随時対応型訪問介護看護、小規模多機能、複合型サービスが重要

③予防 生活環境調査と機能訓練のため、リハ職の活用

④生活支援 生活支援コーディネーターによるNPO、ボランティア、企業、社福法人の支援と協同

⑤住まい 自宅、賃貸住宅、有料老人ホーム・サービス付き高齢者住宅の確保と指導監督、生活困窮者の住まい確保

⑥認知症 認知症ケアパス、初期集中支援チームを2018年までに全市町村に設置

⑦かかりつけ調剤薬局 担い手の1つに位置付け、ジェネリックや服用管理など

 

現在の介護保険サービス利用者の73%は居宅で利用し、その受給者の73%は、80歳以上と

なっている。

 

★利用者負担の増

その利用者の負担はこれまで1割だったが、2015年より74歳以下と、75歳以上でも一定所得以上の世帯は2割負担となっている。

また、施設利用者や施設利用時の家賃・食費も課税世帯や預貯金が一定額以上ある場合には減額されなくなった。

今後は入院時の生活療養費についても資産要件を設けることが検討されており、持ち家率80%であることから、リバースモーゲージ活用の死後精算も検討対象となっている。ただし、家族も一緒に住んでいる場合も多く、課題が多い。

 

★重度者にしぼったサービスに移行

2015年から、特別養護老人ホームの入所は、要介護3以上とされ、要支援利用者へのサービスの85%を占める訪問介護・通所介護は市町村事業に移行された。

 

★要介護1・2も保険対象外に!?

さらに今後は、保険制度のサービス利用者の61%を占める要支援から要介護2までは、大部分のサービスを介護保険から外すことが検討されている。

まず、介護保険制度利用の大前提であるケアプランについては、自己負担となると、費用負担が困難な人はケアマネジメントを利用できなくなり、重度化を招く可能性があると参加したケアマネージャーからも指摘された。

要介護1・2のうち、訪問介護利用者の直近の実態を見ると、生活支援のみが15%、生活支援を伴う身体介護が48%となっており、この部分をすべて保険給付から外すと、実に63%の人が全額自費負担となる。

また、福祉用具も、ベッドや車いすなど、単価が高いものほど介護度が高い人が利用している傾向があるが、要介護2までの人でも、ベッドで40%、車いすで34%の人が利用しており、これらに代わり、ヘルパーを使うことが想定され、人材不足と言われる中で、対応可能なのかが疑問だ。

さらに、要介護1・2の方の約2割が認知症であり、食べることができ、動くこともできる方がほとんどだ。適切な認知症ケアが保障されなければ、家族の負担はより重くなり、介護離職がさらに進むことが予想される。

 

★本来の介護保険のありかたへ

介護保険サービスを利用しながら、より長く在宅で暮らせば、全体の給付が下がることは、これまでの介護保険制度の利用状況から見えている。また、それは高齢者の7割以上が望んでいることである。家族の介護負担を軽減し、社会的介護で支える。本人の力を引き出し、地域資源を活かし、自宅で暮らし続けることが、ケアマネジメントの役割と価値である。

現在の介護保険利用者の6割が使えない制度になるということは、払い続けても利用できない介護保険になるということ。また、家族に介護負担を強いることにもなる。こんな制度にならないようにしなければならない。