すぐ隣にある、見えない貧困や孤立

コロナ禍で行政の困窮者支援の拡大が図られたところですが、だれもがいつ困窮してもおかしくない今、必要とする人に届いているのか、必要とされるものになっているのか気になります。

府中市でフードバンク事業を行い、実情に詳しいNPO法人シェア・マインド代表理事の松本靖子さんの学習会を紹介します。

内閣府HPより

◆なぜ生きづらいのか 困窮者の社会的背景

長時間労働と低賃金

心身のストレスと不安 (休みの日も休養をとることで精一杯)

地域に目を向けられない

他人への想像力の欠如  ← お金も余裕もある人

↓            ↓

地縁崩壊     暮らしている地域も違っていたりして交わらない

↓            ↓

格差の拡大   格差の拡大を止めなければいけないという意識も持ちにくい

 

◆地縁崩壊の経済的背景

・高度経済成長前:お金を持っていないから近所と助け合わないと暮らせない(風呂、電話、食べ物の貸し借りなど)

・高度経済成長期:お金や物と引き換えに関わりを失い続けた

・高度経済成長期後:お金がなく、関わりは希薄になったまま再生できていない

互助を取り戻すことは簡単ではない 寄る辺のない社会の中で適切な公助やまちづくりが必要

 

◆地縁健在の頃

・子どもを取り巻く様々な職種や様々な生き方の人、様々な世代がいた

・心の余裕があり、家庭が機能しない子にも様々な出会いの可能性があった

 

◆重圧の中で生きる子ども:親・教師・友人・メディアの影響「失敗したらおしまいだ」

・困っていることを知られたくない→相談できない しかも、困ったときの制度は穴だらけ

・地縁のない社会で家庭に居場所のない子はどこで癒やされる?

・経済的困窮を抱えている家庭環境の影響がそのまま子どもへ

・居場所がなく人の縁に恵まれない子どもは、様々な経験不足で主体性の欠如から生きづらく、悪い大人に利用されやすい→小児期のトラウマが大人になってからも尾を引く

 

◆重圧の中での子育て:失敗できない社会「子の苦しみの背景には親の苦難が」

・ワンオペ育児 共働き 低賃金 家庭内ハラスメント キャリアの壁

・人類の歴史の中で子育ては常にコミュニティ単位で行われた:一つの家庭内のみでの子育てはとても大変(ここ30年の日本での子育ては無茶→家庭も子も壊れやすい)

・支援が薄い割に求められる子育ての水準が高い(地域で育てようとすれば放置子と言われる)

 

◆複合的排除

・これまで共同で維持してきた財やサービスを、市場を通して獲得するようになった

・市場でのサービスの入手が難しい人は、セーフティネットで代替する

・かくして人と人とをつないできた生活面での要請は薄れていき、つながりは選択制を増す

・自由度を増した人々のつながりには、「有用性を基軸とした選択」という市場原理が導入され、関係の選択化は、しがらみから脱するきっかけをもたらす一方、関係を維持しうる資源をもたない人を排除していく

 

◆穴だらけの制度の中で人が飢えている

・制度にはまらないと支援を受けられず、相談先もない

・問題が長期化して深くなっていく

 

困窮による子どもへの影響をなくすためにも、低賃金・長時間労働をやめなければなりません。

松本さんは「経済難で全てを失った人を目の当たりにし活動を始めたものの、行政とは話が通じず、支援制度はあっても使いにくく、寄付も集まらない状況を経験し、困っていてもどうにもならない社会であることが身に染みてわかった」と実感を込めて話されました。

フードバンク事業は倉庫や車が必要でお金がかかるにもかかわらず、小さなフードバンクにはなかなか寄付が集まらないようです。松本さんは食品ロスの問題にも関心があり、規格外食品の加工と販売で支援物資を作りつつ、支援を受ける人と対等な関係を保つために就労の場とすることを考えているとのことでした。